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もともとボツにしてたやつなんですけど、 『チカナオ見たい!』って言ってくださった方がいたので、ちょっと手直しして書いてみました!
長くなっちゃいそうなので三部くらいに分けます。
(CHIKA視点)
「今日、ナオちゃんと現場一緒?」
MOMOKAからLINEが来たのは、お昼休憩のときだった。
「そだよー、どしたん?」と返すと、すぐに既読がつく。
「今日、コハルとナオちゃんの様子がおかしかったでしょ? どうも訳ありっぽくて……コハルが一方的に突き放してるみたいなんだよね」
あー、やっぱり。 朝から二人とも空気が死んでたのは、そのせいか。
「チカ、うまく聞き出してほしい🙏」
「了解〜」
二人の仲がいいのは知ってるし、放っておけるタチじゃない。
さて、どうしたもんか…
とりあえず、隣でずっとスマホを握りしめてソワソワしているNAOKOに声をかけてみた。
「ナオコー。今日の撮影、緊張しやん?」
「うん。そうだね……」
……あれま。右から左に受け流されてる。
これは相当、根が深い…
「……ナオコ。不安なことあるんなら、収録のあと飲みに行かん?」
「え?」
ナオコも二十歳になったばっかりだし、お酒の力でも借りないと、このガチガチの心は解けない気がする。
「朝からずっと様子がおかしかったけん。……なんか悩みよるやろ?」
そう言うとNAOKOは、
「なんで……わかったの?」と、
さも普段通りにしていたとでも言いたげな声で返してきた。
「いやあ、顔にでてんで?オーディションでも見たことないくらい不安そうな顔しとるから笑」
茶化して笑ってみるけど、NAOKOの視線はまだ揺らいでいる。
私は彼女のスマホをさっと伏せて、逃げらないようにグイッと顔を覗き込んだ。
不安で、悲しそうで、今にも泣き出しそうな瞳。
こんな顔されたら、放っておけるわけない。
「今は不安なこと考えんとき。チカが全部きいちゃる」
至近距離で、できるだけ優しく「ね?」と念を押す。
するとナオコは、少しだけ頬を赤くして
「……ありがとう」と小さく頷いた。
その素直な反応に一安心した私は、NAOKOの頭を軽く撫でてその場を離れた。
◯撮影後
前働いていた居酒屋の先輩が教えてくれたお店にNAOKOを連れて行った。
「何飲む?」
そう聞くと、NAOKOはメニューをじっと見つめて
「あんまりお酒わからんからなぁ…チカと同じのにする」
なんて言うので、私は生ビールと適当なおつまみを頼んだ。
するとNAOKOが「ビール? 大丈夫かなぁ……」とボソッと言うので、
「苦手だったら次は甘いお酒頼もう?それに仕事終わりのビールって、『大人のロマン』でなんかカッコよくない?」
なんて話していたら「お待たせしましたー、生二つです!」
威勢のいい声とともに、テーブルにグラスが置かれた。
「乾杯!」とグラスを合わせると、NAOKOは恐る恐る、グラスに口をつける。
最初こそ顔をしかめていたが、喉が渇いていたのか意外にも美味しそうに半分くらいを勢いよく煽った。
「……ぷはっ、苦いけど……染みるね」
「そうやろ?」
最初は、今日の撮影の話や、新曲のフレーズの話などたわいない話をする。
空き腹にアルコールが回っていく心地よさに、NAOKOの表情も少しずつ緩んでいく。
「……すみませーん、次はカシスオレンジ二つ!」
一杯目のビールを飲み干す頃には、口数も少し増えていた。
二杯目のカシスオレンジが届き、私は本題を切り出した。
「ほんで……今日、何があったん?」
しばらくの沈黙の後。
NAOKOは迷うようにグラスの縁を指でなぞっていたけど、お酒の力のおかげか、ぽつりぽつりとこぼし始めた。
「……わからないの。朝から、コハルに避けられてて……」
「理由を聞こうにも、もし拒絶されたらって思うと、怖くてできなくて……」
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……あー、やっぱり。 想像以上に深刻やったんやね。
「そっかそっか……辛かったね」
相槌を打ちながら、ふとNAOKOの方を見た。
まだ一杯しか飲み切っていないはずなのに、NAOKOの目はトロンと潤んで、耳まで真っ赤になっている。
(……え、嘘。ナオコ、こんなに弱かったん?)
白い首筋がほんのり桜色に染まっているのを見て、心臓がドクンと跳ねた。
(……)
不覚にも「えろい」と思ってしまった自分を必死に叱ろうとした、その時。
ナオコの大きな瞳から、ぽろぽろと涙が溢れ出した。
「うう……なんでぇ……ナオ、なんかしちゃったんかなぁ……っ」
「ちょ、ナオコ!?」
焦った私は自分のグラスをテーブルに叩きつけるように置くと、爆速でNAOKOの隣へと移動した。
「よしよし、大丈夫やけん。チカがおるから、泣かんとってぇ…」
そう言いながら彼女の丸まった背中に手を添えて、ゆっくりとさする。
「……うっ、ぐすっ……ちかぁ……」
私の方に体を預けて、甘えるように名前を呼んでくる。
「……っ」
心臓の音が、耳の奥でうるさく跳ねた。
普段あまり自分から甘えてこない、弱みを見せない彼女が、 子供みたいに無防備に寄りかかっている。
私の方も、少しだけ酔いが回ってきたせいかもしれない。
さっきまで「励まそう」とか「KOHARUのために」とか思っていた綺麗な感情が、
NAOKOの体温に触れた瞬間、音を立てて崩れ去った。
代わりに、自分でも驚くほど真っ黒で、どろどろした何かが胸の奥からせり上がってくる。
「甘いの飲んで落ち着こ?」
私は飲みかけのカシオレを手渡した。
NAOKOはそれを疑いもせず、一気に煽る。
カラン、と。 氷が虚しく鳴って、グラスが空になった。
「……だいぶ酔ってるし、もうやめとく?」
わざと、突き放すようなことを聞いてみる。
「……やだ、……のむ……っ」
NAOKOのその一言が、私の理性を完全に焼き切る合図だった。
「すみませーん、カシスオレンジ二つ、」
「一個は濃いめでお願いします。」
店員が去ったあと、私は隣でぐったりしているNAOKOの腰に手を回す。
さっきまで背中を摩っていた手を、逃がさないように、引き寄せるように。
運ばれてきた三杯目のグラス。
NAOKOはもう味なんて分からないみたいに、言われるがまま飲み干した。
……直後。
彼女の身体から、ふっと力が抜ける。
支えていないとそのまま崩れ落ちてしまいそうなくらい、
彼女の意識が遠のいていくのが分かった。
「……なんかぁ、……ふわふわ、する……っ」
焦点の合わない、潤んだ瞳。
熱を帯びて、微かに開いたままの唇。
先ほどまで泣きじゃくっていた名残で、赤くなった鼻先が幼くて、同時に残酷なほどに色っぽい。
「……ふわふわする?そっか、気持ちええやろ」
わざと耳元に唇を寄せて、甘く囁く。
私の吐息がかかるたび、ナオコの肩が小さく震える。
「……んぅ、……ちか、……あつい……っ」
「暑いなぁ。……じゃあ涼しいところ、行こっか?」
そう言って私は店員さんにお会計とタクシーを呼んでもらった。
続き出来次第すぐ投稿します。