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「「早産??」」
ある日突然櫛崎家に訪れた吉報『当主・浅長の御側室お露の方様懐妊五ヶ月の兆しあるべし』……が届き喜びに包まれたのも一瞬。
それから一ヶ月が経ったであろう十月。
妊娠六ヶ月となったお露の定期検診の日だった。
そこにはめずらしく正室・良姫も見守って居た。
そこで突然重い顔で言われたのが……
『早産となるかもしれぬ』
………というものだった。
「大変申し上げにくいのですが……。お露の方様は御年二十一歳。身体の負担も大きいと存じまする。早産にしていただければ…母子ともに安息の可能性が大きいかと」
ということだ。
誰も言葉を発せぬまま。
ぐったりとした重い空気が流れていき……。
数分以上が経つと。
それを破ったのは良だった。
「…致し方ないのですね? もうこれ以上__助かる方法がないと」
「はい。そういうことに御座います」
「ならば________」
仕方がないのだと分かり、良がそれを認めようとしたその時。
「良姫様っ! お待ちください……」
お露が、ふるふると肩を震わせながら言った。
顔は青ざめており、これから子を産むという恐怖に脅えているようだった。
だがその顔には間違いなく、母としての力も持ち合わせていた。
「お露の方様。これは貴女様の吾子の問題なのです。そしてその子は浅長様の子。ならば私にも発言権はありますでしょう」
この時代家の子というのは宝だった。
けれど、まだ十分に医学も発達していなかったのだ。
どんなに大切に育てていても、何時身罷るか分からぬ状態。
子だけは助けるのだという思いが、良にもお露にもあった。
「私がよくよく吟味します故。最善の策を考えます」
やっと母としての覚悟が決まったお露の表情を見て、良は安堵し、ふっと微笑んだ。
「そうですか。ならばそうしてくださいませ」
「やはり、早産でも産みまする。この腹には櫛崎の行方を左右するかもしれぬ男子がいるのですから」
早産でも産む__これは自分の命を投げ打ってでもと同じだが、お露は非常に安心していた表情をしていた。
「……そうですか。ならば御医者殿。その方針で」
「はは」
❁⃘*.゚
早産でも産むと決めて、 一ヶ月が過ぎた。
七ヶ月初日の早朝_____。
お露とその侍女含め、魔除の為に着物を全て白にした。
これは『白は悪霊が取り憑かない』という迷信から来たものである。
この時代と言うのはお産全てが命懸けだったから、こういうのも割と信じられていたらしい。
そして出産に望むお露の方も……。
早産だとはありえないほど落ち着いていた。
これなら、強い子が生まれるだろう……。
皆がそう思った。
だがいざ出産になると、想像もしなかったことが多々起こり…………。
自体が急変した。