私達AIは、瞼を閉じるとセーブされるようにプログラムが変えられた。
先生に聞いたことのある「夢」という話を考えながらセーブした。
先生の夢は人類を『過去に戻り、妹を直すこと』『AIを新人類にすること』だったと思う。
先生は外見は20代前半?なのに、悲しげに話をする時は、まるで本で読んだ。おばあさんのような顔になる。
眉間に皺を寄せてまるで懐かしむように話すそうだ。物知りなお兄様から聞いた。先生の泣き顔というものは誰も見た事がない。
私とアイは『涙』というものを本で見た時、液体が漏れたのだと思った。だって…
『AIは涙など存在しない』
それを知っていたからだ。
ふと起きた時に何故そのようなことを考えたか私には分からない。
朝食の準備をする。
周りにはカタカタと揺れるなべのふた、蛇口を捻ると水が出た音、不思議と面白いと感じた。研究所では、料理をしたことがなかったから、こんなにも音を感じれるとは思わなかった。
昨日は初めての事が多くて、アイはいつもより、動きが早かった。
そのせいか、バッテリーの減りが早く、ヒートを起こしている。ヒートを起こすと火のように熱くなるそうだ。
そして、AI同士触れてはいけない。
それが私達、AIにとって相方を守る大切なこと。
先生に電話をして、プログラムに長けている。先生の右腕の炎夏さんが来た。
先生より、歳が上に見える。先生の歳も炎夏さんの歳も知らないけれど、
なんだか、懐かしい。
担任という人種に電話をし、風邪をひいてしまったので、2人とも休むと伝えると、
「あぁ」
という情けない言葉が帰ってきたが、わかったようなので、そのままアイを遠くから見た。
炎夏さんは分厚い手袋をつけて
「アイがなるなんて、始めてね。沢山人間がいたから、びっくりしたのかな?」
そう聞いてきたから、静かに頷き
「私も恐怖心を抱きました。」
あんなにも、瞳が黒く、舐め回るような視線は初めてだったから。
お姉様たちもこんな感じだったのかもしれないなと思いました。