テラーノベル
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火曜日。
「……ただいま」
「おかえり」
「おう、おかえり」
「…………」
玄関を開けた瞬間。
俺は固まった。
「……なんで恭也がいんの?」
「暇だったから」
「また?」
「また」
「……」
そして、ソファにはもう一人。
「……あ、おかえりなさい」
「…………」
「零雨さんまでいる」
「す、すみません……」
「いや、謝らなくていいですけど……」
俺は靴を脱ぐ。
「なんで二人ともいんの?」
恭也が答える。
「みどりに呼ばれた」
「俺も……」
「みどり?」
「うん」
みどりが頷く。
「二人とも暇そうだったから」
「お前、人を暇人扱いするのやめろ」
「でも、ヒマでしょ?」
「……まあ」
「俺も……」
「ほら」
「何の『ほら』だよ」
ふと、この部屋にいる面々を見回してみる。
俺。
みどり。
恭也。
零雨。
「…………」
俺はテーブルを見る。
「なんか……」
「ん?」
「人数、多くない?」
恭也が笑う。
「今さら?」
「いや、最初は俺とみどりだけだったんですよ」
「そうだったな」
「それがいつの間にか……」
みどりが指を折る。
「らだ男、オレ、レウ、きょーさん。」
「…………」
「四人」
「そうだな」
「なんか変な感じだな」
零雨が小さく笑った。
「でも……」
「ん?」
「少し、楽しいです」
「……そっか」
「じゃあゲームやるか」
恭也がコントローラーを持ち上げる。
「やる」
みどりが即答。
「零雨もやります?」
「えっ」
「ゲーム」
「僕、あまり……」
「大丈夫ですよ」
「でも……」
恭也がコントローラーを渡す。
「やってみ」
「…………」
零雨は恐る恐る受け取った。
「これ……どうするんですか?」
「ここで動く」
「はい」
「これで攻撃」
「はい」
「あと、これは――」
「……あの」
「ん?」
「覚えられません」
「早っ」
みどりが隣から覗き込む。
「こう」
みどりが操作する。
零雨が画面に見入る。
「すごい……」
「やってみる?」
「はい」
零雨がコントローラーを握る。
操作するキャラクターが動いた。
壁にぶつかる。
「……………。」
「……すみません」
「何で謝った!?」
恭也が吹き出す。
「ゲームで壁にぶつかったくらいで謝るなよ」
「癖で……」
「仕事の癖?」
「……はい」
「重いなぁ」
それからしばらく。
「……あ」
零雨のキャラクターが敵を倒した。
「できた!」
「おお!」
「やったじゃん」
「すごい」
みどりまで拍手している。
「……」
零雨は少し驚いた顔をして。
それから。
「……ふふ」
笑った。
「……楽しいです」
「だろ?」
恭也が笑う。
「ゲームはいいぞ」
「はい」
俺はその様子を見ていた。
零雨さんが笑っている。
コンタミで会ったときは、いつも疲れた顔をしていた。
今日は、少しだけ違う。
「…………」
なんとなく。
この部屋が、誰かにとって少しでも落ち着ける場所になっているなら。
それは悪くないことなのかもしれない。
夕方。
「そろそろ帰ります」
零雨が立ち上がった。
「もう?」
「はい。明日も仕事なので……」
「そっか」
「今日はありがとうございました」
「別に」
零雨は玄関で靴を履く。
そして。
「……また来てもいいですか?」
「もちろん」
俺が答える。
「いつでもどうぞ」
「…………」
零雨が少しだけ目を丸くした。
「ありがとうございます」
そして、笑った。
「また来ます」
「おう」
「またね」
「はい」
ドアが閉まる。
その夜。
俺はソファに座っていた。
「……静かになったな」
「うん」
みどりが隣に座る。
「寂しい?」
「別に」
「ほんと?」
「…………ちょっと」
「うん」
「……お前は?」
「寂しい」
「そっか」
二人で窓の外を見る。
「でも」
みどりが言った。
「また来るよ」
「……そうだな」
「だから大丈夫」
「うん」
静かな夜だった。
深夜にて。
らだ男の部屋。
冷蔵庫。
空っぽの牛肉パック。
——プルッ。
「…………」
牛肉パックが、ほんの少しだけ揺れる。
——プルッ。
もう一度。
誰にも気づかれないまま。
静かな夜は過ぎていった。
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コメント
1件
お疲れさまです、第13話読みました。 なんか…いいですね、この空気。零雨さんがゲームで壁にぶつかって「すみません」って謝るクセ、めっちゃ仕事の癖って感じがして笑っちゃいました。でも最後に「楽しいです」って笑った顔が見られて、らだ男さんの部屋がちゃんと彼の「居場所」になってるんだなって思えてじんわりしました。 ただ…最後の牛肉パックの揺れ、ちょっと気になりますね。穏やかな日常の裏で、何かが動き出してる予感がします。続きが楽しみです。