私
の名前は巴。この物語の主人公だ!いやまあ主人公といっても、別に勇者として魔王を倒して世界に平和をもたらすとかそういう話じゃなくて、僕が住んでるところが異世界だってこととか、そこに迷い込んでしまって帰る手段を探すために仕方なくいろいろやっているんだ。あとはあれかな、ちょっと人より変わった力があって、その力で困ってる人を手助けしたりしているから結果的に英雄扱いされちゃったりもしてるけど、基本的にはいたって普通の女の子なんだよ。ただね……なんとなくだけど……ここの世界の人たちはどこかみんな寂しげな顔をしていて、それがとても気にかかってしまう。そんな彼らを放っておけないっていうか……まあそんなところだよ。
そういえば、自己紹介がまだだったね。僕は巴という者だけれど、本当の名前はここでは秘密にしておいてくれないかい?さすがに本名をそのまま使うわけにはいかないしさ。一応これでも、ちゃんとした理由があるんだよ。だからそこは理解してほしいんだけど、ダメだろうか?もしそれでもいいよって言ってくれるんであれば嬉しいな。えっとそれで、どこまで説明していたかな。そうだ、この世界がどんなふうになっているのかっていうことだよね。それについてはおいおい説明するとして……。とりあえず簡単に今の状況を解説させてもらえるとありがたいんだけど、構わないかな?ありがとう。
まずはざっくりと今の状態を説明しようと思う。ここは、君の住む現代社会とはまるで異なる空間にある場所で、君たちはこの世界を【ヘルサ】と呼んでいるらしい。なんでもこの世界の人たちは昔からずっとこの場所に住んでいるみたいなんだけど、どうしてこんな場所にいるのかっていう詳しい理由はよくわかっていないみたいだね。まあそんなことはともかく、ここでは魔法や魔物なんかが存在するファンタジー要素満載の世界だから当然モンスターと呼ばれる危険な生き物も普通に生息してるんだ。そこで僕たち冒険者は、それらのモンスターを倒すために結成された戦闘ギルドのメンバーとして活動しているわけさ。ただ残念なことに、今のところその戦闘ギルドに所属する冒険者の数はあんまり多くないんだよ。というのも実は、最近になってようやく一部の地域でダンジョンが発見されたばかりでね、今はとにかく人員の確保が優先されている状況なんだよ。それもあってか、まだまだ新人扱いされる僕らに回ってくる仕事なんて本当に簡単な依頼ばかりだったりするし。それに、僕はまだ冒険者になってから間もないからまだ経験だって少ない方だし、先輩たちに迷惑をかけないように頑張らないと!…….という訳で僕は現在絶賛お留守番中である。いやぁ…….正直退屈すぎるよこれは……。暇つぶしに読もうと思って持ってきた本ももう全部読み終えちゃったし、このままじゃ何もすることがなく一日を終えてしまうかもしれないぞ。よし決めた、今日はこの家の中で探検してみることにしよう。そうと決まれば早速行動開始だ。僕は勢いよく椅子から立ち上がり、自分の荷物をまとめて家の中の探索を始めた。この家に来られたのはつい最近のことだからあまり詳しいわけじゃないけど、それでも結構広いはずだよね。まずは一階から見て回っていこうかな。
階段を上がって二階へ行ってみるとそこには扉がいくつかあることに気づいた。ここは何の部屋なんだろうか。気になったので開けてみるとそこはたくさんの本棚がありそこに本がぎっしりと詰まっていたり床や机の上にも大量に積み上げられていたりした。これまた大量の書物だったな。そういえば以前ここにきた時も書斎みたいな部屋があったっけ。ここは多分そこと同じくらいの広さがあってしかも本棚の数が尋常じゃないくらいにあるぞ
『うわー! 凄い量だねここ』
(まぁ確かにすごい量だよなこれは。一体どんなジャンルの本なのかすら分からないものまでたくさん置いてあるみたいだし)
この家はかなり大きい洋館なので当然部屋の数もかなり多いんだけどその中でもこんなに広くて本の数が多い場所を見つけることができたんだから僕は運が良い方だと思う
『そうだねぇ。さっきの部屋もそうだけどこの本の量を見るといかにお嬢様が勉強熱心かっていうことが伺えるよね。これだけの量の本を読める人ってそうはいないと思うよ』
(まあそれはそうなんだろけど僕にはそこまで沢山の知識を入れることができる脳を持ってないしそんな頭もないし、それにこの世界の全てを理解できたところで僕の世界は何も変わらないし何も生まれないからさ……でもそれでもいいじゃんか)
――僕は、この世界に生まれて良かったと思うぞ。
(そうかな?)
――そうだとも。お前が生まれてきてくれなかったらこんな風に笑うこともできなかったわけだしな! それにこうしてみんなで笑い合っていられる今が最高だ!! ほれ見てみろよ。あの子なんかずっと笑っとるやんけ。なんでだと思う? そりゃあお前がいるからだろ。お兄ちゃんだからだろ。弟や妹を守ってあげなくちゃいけないからだよ。
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