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「っ、は、は、」


ふと目が覚めた。

息が苦しい。

何か悪夢を見ていた気がする。

俺、なんの夢を、


ベッドから起き上がると、日が暮れたのか、部屋はすっかり薄暗くなっていた。


「…きょう、なんようびだっけ、」


会社から帰ってきてからの記憶がない。

晩ご飯は食べたんだっけ、

お風呂に入ったっけ、


頑張って思い出そうとするも、それを邪魔するかの様に頭がズキズキと痛む。


あれ俺、何の会社に行ってたんだっけ、

そもそも会社に行ってた?


何かを思い出そうとする度に、俺の記憶はどんどん抜け落ちていった。

このままだと自分が誰かも分からなくなりそうで、俺はこれ以上考えるのをやめることにした。


祐介はどうしてるかな、

ふとそう思った。


祐介

脳に強く刻まれた名前。

祐介が誰なのかなんて分からなかったけれどその人に会わなければいけない、と妙な使命感があった。

足が勝手にリビングへと向かう。

ドキドキと心臓が波打っていった。

ドアノブに手をかけ、静かに開く。


そして一気に血生臭い、何かが腐ったようなひどい匂いが広がってくる。


「…っ!!ぅ゛、お゛ぇ゛っ!」



その酷い匂いと恐ろしい光景に、喉から酸っぱいものが迫り上がってくるのを感じる。


リビングの真ん中には血溜まりの中に倒れている男がいた。



「ぇ、なに、…ゆ、祐介、?」



吐かないように口を押さえていた手がだらりと横に垂れた。



は、は、と自分の荒い息遣いだけが部屋に響く。震える足を奮い立たせ、俺は血だらけの男の元へと歩いた。



「…ぁ、ああああ、祐介!祐介、!!」



その男が祐介であることは考えずとも分かった。

恋人?兄弟?

そんなことも分からないのに、この人が倒れているのを見ると酷く心が震え、涙が止まらなくなった。

きっと大事な人だったのだろう、

混乱する頭とは裏腹に、やけに冷静にそう思った。


体を揺さぶってみても冷たく硬くなった体は動かない。



「…ぁ、あ、警察、110番しなきゃ、…きゅ、救急車も…、」



暗くなった部屋の中で携帯を探す。

ふと、ブー、ブーという音と共に軽快な音楽が響いた。

音の源を探すと、祐介のズボンポケットが震えていることに気づいた。


ポケットに手を入れ、探ってみると、それは携帯だった。



どうやら鳴ったのはアラームのようだった。

この時間に何かあるのだろうか、

そんなことを考えたが、そんなことより早く警察と救急を呼ばないと、と我に帰った。



「っ!もしもし、!祐介が、祐介が!」







警察に通報した。

警察は救急車と共にあと5分ぐらいで着くらしい。

俺は暗い部屋でずっと祐介にくっ付いて泣いていた。



「っ、ゆうすけ、ゆうすけ」



祐介の胸に顔を埋める。血の匂いとほのかにかおる祐介のにおい。



「…ぁ、あ、ゆうすけ、…おれ、おれ…、」



全身が震える、涙が止まらない。

なんで祐介は死んだの?

そもそも祐介は誰?

俺のなに?

俺は誰?



背中に冷たい何かが流れた気がした。

祐介が殺されたショックで忘れていたけれど、俺は俺のことを何も知らない。

俺は誰?家族は?仕事は?年齢は?


自分に問いかけてみるも、答えは一つも得られなかった。



冷たくなっていく指先をぎゅっと握る。

どうしよう、俺、


白く霞んだ視界で、視界の端にきらりと光るものを見つけた。



「っ、なに、?」



急いで駆け寄って手に取る。


それは血のついた包丁だった。



「……、これ、もしかして、」



これが祐介を、

祐介を殺した犯人がきっとどこかにいるはず。

許さない、一体誰が祐介を殺したの、絶対に許さない。

祐介を殺したこの包丁で俺が犯人を殺してやる。

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