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羽良野先生はいつの間にか、背筋をピンと伸ばしていた。
学校での優しい先生に戻って来た。
ぼくは未だに残る心のわだかまりを、地団駄を数分して抑える。
両頬を何度も叩いては、気合いを入れた。
病院の外は大雨になっていた。
暴風と呼べるほどの風の音。雷がどこかの山の木に落ちようだ。
稲光で目の前が真っ白になるくらい激しい。まるで、これから何が起きても後悔しないぞと奮い立つぼくの心を、激しく揺さぶっているかのようだ。
大急ぎで羽良野先生の車まで、広い駐車場を駆け抜ける。白線内からはみ出した軽自動車はよく見ると、傷だらけだった。
ぼくは怖くなったけど、これから不死の儀の村へと行くんだ。と、心の底で叫んだ。
看護婦さんは診療室の一室で休ませたから、きっと朝には目を覚ますはず。
あの白いスープはなんなのかは、わからないけど、とても大事な薬なのだろう。
土と草の臭いが充満した軽自動車の中では、ぼくは羽良野先生の顔が徐々に人間の顔に戻るのを見続けた。
駐車場から出る軽自動車の窓からは、辺りを包み込む暗黒が、この街全体を今にも押し潰そうとしていた。