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#ご本人様には関係ありません
あはそ
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撮影が終わり、その日は解散となった。
そして俺は、ついに南月の連絡先を手に入れた。
「っっっしや!!!!」
思わず拳を突き上げる。
「うるさ……」
呆れたような声が隣から聞こえた。
「ぁ、言っとくけど」
南月はスマホをしまいながら、俺を見る。
「プライベートでは会わないからね
仕事でしか話さないから」
「それだけでもう結構幸せなんで、大丈夫っす」
即答すると、南月は少しだけ目を細めた。
「あっそ……」
「じゃ、俺もう行くから」
「はい!」
南月がスタジオの外へ出ていく。
すると、目の前に、一台の黒いリムジンが静かに止まった。
「ぉ、……」
思わず声が漏れる。
南月は何事もなかったように車へ向かい、ドアの前で振り返った。
「じゃあな」
「あ、は、はい!」
軽く手を振る。 南月が車へ乗り込む。 ドアが閉まり、リムジンは静かに走り去っていった。
俺はその場に立ち尽くしたまま、遠ざかっていく車を見つめる。
家に帰ると、俺は靴を脱いで、そのままソファへ倒れ込んだ。
そこそこ仕事も増えてきた。
俳優として売れてきたおかげで、住む場所も少しずつ良くなっている。 でも、今の俺にはそんなことどうでもよかった。
「はぁぁぁぁ…」
天井を見上げる。
そして、今日一日の出来事を思い返す。
「……さいっこう」
思わず顔が緩む。
「あんな可愛い顔で見つめられたら、好きになるし…いや、 もう好きになっている とっくの昔から… 照れてる顔も可愛かったし」
今日まで画面の向こうにしかいなかった人が、今は連絡先まで知っている。
同じ作品に出演して、 同じ現場で演技をして、 直接話して、 怒られて、 笑って。
「テレビで映ってる時と全然違うけど」
俺はクッションを抱きしめる。
「全然可愛いんだよなぁ……」
むしろ、 知らなかった一面を知るたびに、どんどん惹かれていく。
天使みたいな笑顔だけじゃない。
厳しいところも、 負けず嫌いなところも、 作品に対して真剣なところも
照れると分かりやすく顔に出るところも。
「……これもまた、愛おしいというか……なんというか」
スマホを取り出す。
画面には、今日交換したばかりの連絡先。
まだ何も送っていない。
俺はしばらくその名前を眺めてから、そっとスマホを伏せた。
「……明日から、100点取らないとな」
その瞬間。
今日言われた言葉が頭に蘇る。
『俺の100点、甘く見ないで』
「……よし」
俺はソファから起き上がった。
「絶対取る」
「てか、他にも色んな役者さんいるけど、誰がいるんだろ」
渡されていたキャスト一覧を手に取る。
ペラ、 ペラ…
「桃乃 蘭…」
名前を目で追いながら、プロフィールを読む。
「あぁ、役者の頃からの大物俳優か」
何度もテレビで見たことがある名前だ。
次のページ。
「……あめてゃ? あぁ、男性アイドルグループのセンターだっけ?」
確か、今かなり人気があるグループのメンバーだったはず。 俺は出演者の名前を一人ずつ確認していく。
ペラ、 ペラ…
「原作者が、あの夏目 奏知さんだし……」
そこで一度、手が止まる。
「炎上したらファンに叩かれそ〜」
夏目奏知… 今回の作品の原作者。
業界でもかなり有名な作家で、作品へのこだわりが強いことでも知られている。
その作品の実写化、 しかも、あの監督。
正直、嫌な予感しかしない
「……」
もう一度、キャスト一覧へ目を落とす。
そして。
「この人、歌手か」
そこに書かれていた名前。
西園 尊。
俺はその名前をしばらく眺めた。
「西園 尊」
聞いたことがある。
けれど、どういう人なのかまでは、まだよく知らなかった。
「歌手がこの作品に…?」
首を傾げながら、プロフィール欄へ視線を落とす。
(思っていた以上に、いろんな分野から人が集められてんな…)
次の撮影会
俺がスタジオへ入ると、まだ撮影前だというのに、隅の方で二人の男性がそわそわしていた。
一人は、ふわっとした黄色い髪。
もう一人は、水色の髪。
(確か、歌手とアイドルの……)
キャスト表で見た名前が頭に浮かぶ。
俺が二人を眺めていると、水色の髪の男性がこちらに気づいた。
「あっ!」
その瞬間、黄色い髪の男性の手を引いて、こちらへ歩いてくる。
「あの、!」
「え、ぁ……そ、そうです……」
「叢雲入間さんですよね!?」
「あ、はい」
水色髪の男性は、ものすごい勢いで話し始めた。
「あめてゃって言うんですけど!俺、こういうの初めて演じるんですけど…いっぱい練習してきて、上手くいけるか心配で…!」
「そ、そうですか……」
声が大きい、 とにかく大きい。
俺は思わず、ほんの一歩だけ後ろへ下がった。
「す、すみません!声、大きかったですよね!」
「い、いや…大丈夫です」
すると、今度は隣にいた黄色い髪の男性が、おそるおそる口を開いた。
「あの……」
「はい?」
「俺、みこと…です」
少し震えた声。
「あの…なんでこうなってるのが自分でもよく分からんくて」
「え?」
「た、たたた助けてください」
「…………」
思わず目を瞬く。 緊張しているのか、言葉がうまく出てこないらしい。
(すげー、声がいい…)
どうやら、この二人も今回が本格的な演技は初めてらしい。
「俺でよければ、分かる範囲で一緒に確認しますよ」
「あ、ありがとうございます!」
あめてゃが勢いよく頭を下げた。
「助かります!!」
「ちょ、声…」
「す、すみません!」
その横で、みことも小さく頭を下げる。
「…ありがとうございます」
「てか、あめてゃって、本名なん?」
俺が何気なく聞くと、水色髪の彼は少しだけ目を泳がせた。
「ぁ、いや…アイドル名です」
「あぁ、なるほど」
「本当は、こさめって言うんです」
「こさめ…」
思わず名前を繰り返す。
「でも、マネージャーには『あめてゃにしとけ』って…」
「そう、なんすか……」
なんとも言えない顔になってしまう。
芸能界って大変なんだな。
そんなことを考えていると、隣にいたみことが突然そわそわし始めた。
「……あの」
「ん?」
「大物俳優のらんさんとか…天才俳優のなつさんとか、出てくるんですよねっ?」
「まぁ、そうですね」
「すごいなぁ」
目を輝かせながら、ぽつりと呟く。
「まさか、同じ空気を吸えるなんて…」
「……」
みことの視線の先には、まだ南月はいない。
けれど、その名前を口にしただけで、明らかに嬉しそうだった。
「俺、昔からなつさんの演技が大好きで…」
「……へぇ」
「子役の頃からずっと見てて」
その言葉に、俺はなんとなく耳を傾ける。
(……同志か?)
「今回、共演できるって聞いた時なんて…もう、どうしようかと思って」
みことは胸元を押さえながら、ふわっと笑った。
「本当にすごい人ですよね…」
「…………」
俺は無言でみことを見る。
そして心の中で、ひっそりと呟いた。
(分かる… めちゃくちゃ分かる、 俺も同じだからな)
ただし。
(……俺の場合、初恋だけど。)
そんなことは、もちろん口には出さなかった。
いるま」
その声に、俺は振り向いた。
「……なつ」
そこに立っていたのは南月。 そして、その隣にはやけに距離の近い男がいた。 南月の肩に、当たり前のように手を置いている。
「…………」
俺の視線が、その手に吸い寄せられる。
(……あ?)
ぴきっ。
胸の奥で、何かが切れたような気がした。
(なんで肩に手ぇ置いてんだよ)
あんなに可愛い顔してる南月に…
俺の初恋で、 俺の推しで、 俺が何年も
(……いや、落ち着け俺)
そう言い聞かせるものの、全然落ち着かない。
どうやら俺には、かなり厄介な同担拒否が発生しているらしい。
南月はそんな俺の内心など知る由もなく、隣の男を指差した。
「こいつが、お前と話したいんだってよ」
「こんにちは〜、らんでーす」
男…桃乃蘭は、にこにこと笑う。
「えっ、らんさん!?」
「ほ、本物!」
みこととこさめが一気に目を輝かせた。
「すご!」
「テレビで見るよりずっと……!」
二人が嬉しそうに騒いでいる。
俺も一応、挨拶をしようとした。
(早くその手退けろよ)
そんなことを考えていると、蘭が俺を見る。
「いるまだよね?」
「……はい」
「なっちゃんのオタクくんなんだっけ?」
「……オタクじゃなくて」
俺は蘭を見返す。
「憧れなんで」
「ふふっ」
蘭が楽しそうに笑った。
「嘘はよくないよ〜?」
「…………」
「ぁ、言っとくけど……」
蘭が一歩近づく… そして、俺にしか聞こえないほどの声で囁いた。
「俺は子役の頃から、なっちゃんと仲いいからさ」
一瞬、笑顔が消える。
「……身の程を考えてね?」
「…………」
「……」
俺も蘭を見つめ返す。
「……💢」
その時
「らん」
南月が不思議そうに蘭を見る。
「何こそこそ話してんの?」
「んー? なんでもないよ〜」
蘭は何事もなかったかのように笑う。
「な?」
「…………」
俺は無言で蘭を見る。 南月はそんな俺たちを交互に見て、首を傾げた。
「……?」
そして俺は悟った。
今日の撮影… 演技以前に、 俺には、越えなきゃいけない壁があるらしい。
コメント
3件
桃くんの牽制……良い!!
うわあああ面白かった!!第2話も最高でした🔥 連絡先ゲットしてからの入間くんの浮かれっぷり、めっちゃ分かるし可愛いすぎるw でもそこに現れた桃乃蘭…「身の程を考えてね?」ってあの圧、ちょっとヤバくないすか!? 「同担拒否」が炸裂してる入間くんの内心、めっちゃ笑ったし、次どうなるか気になりすぎる… 推しを守る戦い、ここから始まるんですね(震え)