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カーテンの内側で、楓は少しだけ身体を起こしながら、ほのかの問に向き合っていた。
ベッドのシーツには、うっすらと血の跡が残っている
「……やっぱり、あの時の炎は楓の……」
ほのかは声を震わせていた。
「うん。あれは私の術。忍の技」
「じゃあーーむつるくんも……」
「彼は、光流っていう名で光術を使う忍者。……私のバディでもある」
沈黙。
ほのかは何かを押し殺すように、ぎゅっと制服の裾を握りしめる。
「ねぇ……どうして、私だけ普通なの?」
楓の目がわずかに見開かれる。
「私……何も知らなかった。あんなに一緒にいたのに。
忍者なんて本に出てくる話だと思っていたのに……
なのに、楓はむつるくんと一緒に、ずっと、戦ってたの……?」
楓は、言葉を選びながら、ゆっくりと返す。
「ほのかは、普通なんかじゃないよ。
あなたのおじいちゃん……白蓮先生は、私の師匠だった。
だから私、ほのかと出会えたの。
普通じゃない。私たちは……つながってた……」
ほのかは一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに小さく笑った。
「……ずるいな。そう言われたら、責められないじゃん」
【保健室の外・むつる】
保健室の前の廊下で、むつるは静かに壁にもたれて待っていた。
制服のシャツには、今も楓の血が乾ききらずに染み込んでいる。
蒼月先生がそっと声をかける。
「……クリーニング代、私が払ってあげようか?」
「いえ、慣れてますから」
「ふふ、そう言うと思った。でも、気をつけてあげて。
楓ちゃん、あの子、自分の体を壊してでも……」
「……わかってます」
むつるの目に、一瞬だけ迷いが浮かんだ。
楓、お前ーーいつまでこんな身体で戦うつもりなんだよ
【保健室・帰り際】
夕方のチャイムが鳴り、そろそろ下校時刻。
楓がベッドから降り、ふらつく足をむつるが支える。
「大丈夫?」
「うん……少し休んだら、マシになった」
ほのかがそばに立つ。
「……全部、話してくれてありがとう。
私は……誰にも言わない。
でも……嘘は、これ以上つかないでね」
楓は、力のない笑みを浮かべる
「約束するよ」
【その夜・廃工場跡】
一方その頃、闇の中でうごめく影があった。
「楓……白虎隊の新人ね。
あの子の火はーー本物だわ 」
声の主は、漆黒の装束をまとった女性忍者ーー敵組織《黒連》の幹部のひとり、千種。
「さぁ……そろそろ、仕掛けましょうか」
ーー次なる任務は、すでに動き出していた。