テラーノベル
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「……わりぃ、燕花。ちょっと頭冷やしてくる」
「童殿は、嘘を吐くのが下手ですね」
何か心当たりがあるのでしょう? と、尋ねられ言葉に詰まる。
「……っ、そりゃあ、燕花みたいに完璧なポーカーフェイスなんて作れるわけねぇだろ!」
煌は逸らした視線のやり場に困り、窓の外の景色を睨みつけた。
燕花の澄んだ瞳に見透かされるのは、朱雀に揶揄われるのとはまた違う居心地の悪さがある。
「あら? 私だって顔に出る時はありますよ。でもまぁ……、伊達に百年以上生きてませんから」
そうだった。若く見えるが燕花は朱雀の眷属だった。 弱い16歳の煌が太刀打ちできるような相手ではなかった。
「それで? 何を知っているんですか?」
「……知ってるっつーか……。俺、昨夜……中庭の近くで静遠を見たんだ」
「静遠様……ですか。それは確かですか? 見間違えとかではなく……」
「あいつの歩き方は特徴的なんだよ。だから、間違いないって! 最初は夜這いでもしに行ってんのかな、なんて思ってたんだけど……」
煌はもごもごと言葉を濁した。自分の憶測が全て正しいかと言われれば、自信はない。暗闇に紛れるようにして歩くその姿が静遠本人だったという確証も。
だが、妙に引っかかるのだ。
「……童殿。静遠殿はこの国の法そのものです。あの御方を疑うということは、朱雀様が築き上げた統治を否定することにも繋がりかねない。……それはわかっていますよね?」
「お、おぅ」
煌がこの世界に来て数週間。まだ分からないことだらけだが、静遠がいかに重要な人物なのかくらいは分かっているつもりだ。 少なくとも朱雀への忠誠心は本物だと思う。
「あいつが重要なポジションにいるのはわかってる。朱雀からの信頼も厚いんだろう。でもさ、街で仙煙草の箱を見つけた時から、違和感が消えないんだ」
「違和感……ですか……」
「アイツは絶対何か知ってる。根拠はないし、勘だけど……でも、どうしても引っかかるんだよ」
「…………」
しばしの沈黙。 数秒間の沈黙がやたら長く感じられる。
「わかりました。童殿がそこまで言うのなら秘密裏に静遠殿と鳳来堂の関係も洗ってみます」
「いいのか? 燕花は北の商人の件で忙しいんじゃねぇの? 俺が静遠のところに直接乗り込んだっていいんだぞ?」
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