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「万が一、今回手引きしたのが本当に静遠様だった場合、正面突破は最悪の手です。彼はああ見えて神官長なのですよ? 下手に刺激して証拠を隠滅されでもしたら、どうするつもりですか。……童殿、なんでも拳で解決できるわけではないのです」
燕花はそう言うと、窓の外に目を向け、小さく溜息をついた。その横顔には、いつもの穏やかさではない、冷徹な「守護者」としての影が落ちている。
「……実のところ、私も、彼が怪しいと前々から思っていたんですよ。あの御方の朱雀様に対する忠誠は、あまりに純粋で……それゆえに、歪んでいますから」
「歪んでる?」
「はい。信仰が行き過ぎれば狂信となり、狂信はいずれ神の姿を己の欲望に合うように歪める。……静遠様の中に巣食っているものは、朱雀様をお慕いする『清廉なる情熱』だけではないように思えてならないのです」
燕花の言葉は核心を突いているように思えた。
煌が感じていた違和感――静遠の「目」に宿る、計算高く他人を排除しようとする光。
それはまさに「歪み」と呼ぶべきものかもしれない。
「ただ、静遠様の件は事実関係がはっきりするまで、朱雀様には黙っていて欲しいのです。ただでさえ不安定になりやすいあの方の力が暴走してしまっては困ります故」
「……確かに、アイツ、余裕そうに見えて意外と繊細なところもあるからな。 ……たく、ほんっと手のかかる神様だぜ」
「結果が出るまで、どうか朱雀様の側にいて下さいね。あの御方を救えるのは朱雀の巫女である貴方様だけです」
「……っ、わかってるっつーの!」
本意ではないが、朱雀を浄化出来るのが煌だけであるのは事実。 こればかりは従うしかなかった。
「燕花こそ気をつけろよ。 アレでも腐っても静遠は神官長なんだからな。神官たちは皆あいつの命令を聞くんだろ? バレないように気をつけろよ」
「えぇ。 もちろんです。私は朱雀様の眷属。 ただでは負けませんから」
燕花はニコリと微笑むと部屋を後にした。