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家に帰り、ジュニーの上着を畳むと
私はすぐに母の部屋を訪ねた
自分が兄と喧嘩して辛かったのもあるが
…何より、母の事が心配だった
「あぁ、おかえり、ミロア。またお兄ちゃんと喧嘩したんだってね」
母の姿は
3年前とは随分と変わってしまった
1日中床に就き、病を患っている
どうやら、壁の外から貰ってきたウイルスらしい
この壁の中では治す方法が分からないと聞いた
父さんを弔った時に傷口から感染した、と…
最近は階段を降りることもままならなくなった
母の体は、確実に蝕まれ衰弱していっている
『…お母さん。だからあれはお兄ちゃんが頭ごなしに私を否定してるだけだって…』
「知ってるわよ。お兄ちゃんもイジワルよね。ジュニーも貴方も、大丈夫なの?」
何が大丈夫なの、だ
自分が一番辛いくせに…
『あたしのことは良いって…!今日もイェーガー先生に見てもらったんでしょ?自分のこと心配してよ』
「いや、今日は予定が合わなくってね…でもお薬は貰ったから平気よ。」
『ちゃんと飲んだの?寒くない?』
「ミロアだってお母さんのこと心配しすぎよ?大丈夫。きっと治してみせるからね」
『そう…』
正直言って
母はこのような所、信用出来ない
この前も同じ事を言って一人で嘔吐した
『ねぇ、お兄ちゃんいる?』
「今はお仕事でいないわよ。というより、明日もいないと思う…出張って聞いたもの」
『最近多いね…』
「ミロア。やっぱりね、ここまで言うってことはお兄ちゃんにはお兄ちゃんなりの考えがあると思うの。だからね、少しだけで良いから…兵士以外の道も…」
また、この話だ
最近は母ですらこんなことを言う
『…嫌だ。嫌だよ、知ってるでしょ』
母とはこんな話をしたくない
私が否定したら、悲しそうな顔をするし
何より
ずっと前から私を応援してくれていたのに
どうして最近になって兵士を折らせようとしてくるのか
これが分からないんだ
二年前
あの日、母は兵士になった時の為に
私に手帳をくれた
「そう…ミロア。心変わりがあったらすぐに言うのよ。お兄ちゃんにも、お母さんにもね」
『………』
お母さん
もう、私に渡した手帳を忘れたの?