「なぁ」
「んー?」
「もし、もしもの話なんだけど……。俺が死んだら、俺のこと、忘れてくれる?」
「いきなりどうしたの。縁起でもない。……どうしてそんなこと言うのさ。」
「ふと思ったんだよ。もし、万が一、億が一。……いや兆が一、俺が死んだとして。死んだ人間のことなんか、すぐに忘れたいだろ?俺はお前の人生にとって邪魔な存在になりたくないなーって。」
「…僕は絶対に君を忘れたりしない。…君をもう一度死なせるような真似なんて僕はしないよ。」
「ははっ。そっか」
______幽以外、誰もいない部屋に風が吹き込んだ。
「…君のこと忘れたんなら、僕も死なないといけなくなるでしょ?……僕、長生きしたいんだ。」
いつも通り、午前中からのシフトが入っていたので店に向かうと店長はカウンターに突っ伏して寝ていた。
働けオイ。
起こそうと思い近寄ると、
「……うわ、泣いてる」
泣いてる姿も絵になるな、なんて思いながらこのまま寝かしておく。
なんて優しい心を俺は持ち合わせていないので、店長を叩き起こす。
「おはようございます。」
「んぁ?…おはよう。……今日は早いんだねぇ。」
「いつも通りです」
「そっかぁ」
まだ眠そうな店長に、朝から何泣いてるんすか、と伝えると「…うるさいな」と言われてしまった。
イケメンだからってなんでも許して貰えるなんて思うなよ。怒った俺は怖いからな。
なんて思いながら特に何も言わず店内の掃き掃除を始めた。
あいつに出逢ったのは、中学の三年、春だった。
多分あいつがいなかったら、僕は人形屋なんてしてなかったと思う。
一月くんが入れてくれた紅茶を飲みながら、少し昔のことを思い出すことにした。
「…あちっ……」
作者です。
第5話はキャラビジュになっておりますが、多忙すぎてまだ完成していないので、今週中には更新出来ればと思います。
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