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うめぼっち

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臣桜
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#恋愛
水無月 京
1,300
少し待ってやってきたエレベーターには、数人の社員が乗っていた。
「面談、お疲れ様でした」
2人きりの雑談に持ち込めなかったことを少しだけ残念に思いながらも、会話の糸口を見つける。
「ああ、紹介ありがとね」
あの2人って、あっちのユニットで優秀って結構評価高い奴らだよな。
「そうなんですね」
私は彼らの評価を知らないけど、優秀なのは間違いないと思う。豆さんが2人を褒めてくれたことが嬉しくて、つい頬が緩んでしまう。
「同期を褒められてそんな笑顔になれるって、よっぽど仲がいいのな」
「馬鹿にしてます!?」
「なんでそうなるんだよ。してねぇよ」
呆れたように笑う豆さんの笑顔すら、最近は結構お気に入りだ。私はもう重症なのかもしれない。
地階にある、オフィスの労働者の際限ないリクエストに応え続けるオアシス、基コンビニに入る。ペットボトルのコーヒー持ちながら、ついでにお菓子も…とずいぶん秋らしくなってきたチョコレートコーナーを覗く。
今年こそは期間限定チョコに惑わされず、不要な体重を増やさないと誓っているんだけど、大丈夫かな…すでに心が折れそう。
ひとつ選び抜いて、充実したラインナップの棚をようやく離れると、近づいてきた豆さんと目があう。
「それ買うの」
「はい」
「じゃあ貸して」
鮮やかな手つきで私の手から飲み物とチョコを抜き取り、レジに自分のものと一緒にザザっと並べる豆さん。
奪い返すまもなく、「あーあとタバコのXX番」と店員さんと話し始めて入る隙がない。
「何してんの」
「自分の分を支払おうと待っています」
「出口で人の邪魔になるでしょ、外にいなさい」
まさかの追い出しをくらい、店先で騒ぎ立てることもできなくてすごすごと外に出る。数分とたたないうちに出てきた豆さんにハイ、と渡された袋が重い。
「ほんと、すみません…奢っていただくつもりじゃ…」
「いっそそれぐらいの図太さがあってもいいかもね?」
仕事だと強気なのに、それ以外だとほんと控えめだもんね。
言い返すこともできず、ありがとうございます、ともう一度頭を下げておく。
再度エレベータホールに戻り、静かにエレベーターを待つ。クラシック音楽だろうか、控えめなBGMとエレベーターのわずかなモーター音だけが響く。
「弓家さんさ、あの同期の男とどういう関係なの」
思い出したかのように豆さんが言葉を発する。
「あの男…紫水ですかね?」
「そ。さっき来てた子」
「うーん、同期…ですけど」
まめさんの不思議な質問に答えながら、やってきたエレベーターに乗る。今度は他に乗り合わせたお客はいない。
「なんかありました?」
「彼、俺に牽制してきたよ」
「…牽制?」
「弓家さんを使い捨てのコマにすんじゃねーぞ、って脅された」
はい?
紫水らしくない発言で、彼の像と結びつかない。
「弓家さんの過去を知ってるかと言われてね。面倒臭いタスクなら彼が引き受けるから余計な負荷はかけるなって怒られた」
その時の状況を思い出しているのか、ふふ、と笑う豆さん。
「…秘書とコンサルは業務全然違いますけどね」
「それをわかった上で弓家さんを庇った発言だったと思うけどさ」
ふ、と一瞬お互いの言葉が途切れ静寂が訪れる。
「彼、弓家さんの彼氏なの?」
「…へ?」
豆さんの方を見れば、思った以上に真面目な目をしている。これは、ただの冗談でもなさそうだと本能的に悟る。
「いえ…本当に同期以外の関係性はないんです」
「…へぇ?」
「私よりも、さっき同席していた榎本さんとの方が仲良いと思いますよ」
私は何を必死に言い訳しているのか。
「それに、あんな捻くれた男を彼氏にできるほどの器の広さは私にはないです」
隣でふはっと空気を吐き出す音がした。
「まあ、確かに彼ちょっと変わってそうだよな」
「ええ、それはもう」
ようやくエレベーターがフロアに到着する。
エレベーターホールに足を踏み出せば、なんとなく話が終息しそうな気配がした。
「そういう男じゃないならよかった」
「業務上支障が出るとか、そういうことで?」
「……ん、まあ」
煮え切らない態度の豆さんは、顔を背けていて表情がよくわからない。
「でもあれです」
豆さんの個室よりも手前に私の座席があるので、並んで歩くのもここまでだ。
「豆さんもまあまあ捻くれてますよ」
「…おいおい」
ようやくこちらを向いた豆さんは、ほんとズケズケ言うよね、と。泣き笑いのような不思議な表情を浮かべている。
「豆さんの捻くれ具合、嫌いじゃないですけどね」
彼の顔を見ずに言い切って、そのまま椅子を引いて座る。
「…ったく」
心なしか歩幅がいつもより大きくなり、そしてぞんざいに音を立てて個室に入っていく。豆さんは、一体何を思っているのだろうと気になるけれど、それを確かめる勇気は、今の私にはない。
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