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「……はあ?」
「別に。言いたいことないなら帰ってくれていいけど?」
ソファの端、五条悟は腕を組みながらそっぽを向いていた。
いつものように軽く笑う余裕もなく、ちょっと不機嫌そうに足を組み替えている。
対する夏油傑は、そんな悟の態度をじっと見つめて、ため息をついた。
「……悟。君は、怒ってるのか?」
「は? 怒ってないけど。僕、ぜんっぜん怒ってないけど?」
「その割にはさっきからずっと目も合わせてくれない」
「それは……お前が悪いからだろ?」
「そうか。私が悪いんだな」
「うん。反省して」
言葉では強気に言いながら、悟は自分でも気づいている。
声の端が少し揺れていたことに。
(ほんとは、こんなことしたくないのに)
喧嘩のきっかけなんて、本当にどうでもいいことで。
でも、お互いに意地を張って、ここまでこじれてしまった。
本当は、もうとっくにぎゅーってされたい。
チューだってしたい。
許してるし、許されたいし、仲直りしたい。
けど──
「……素直に言ったら負けじゃん」
小さくつぶやいた声を、傑が聞き逃すはずもなかった。
「……何か言ったか?」
「別に! なんでもないし!」
むくれて視線をそらす悟。
だけど、その体は傑の方へじわじわと傾いていく。
「……あーもう、だるい。なんで来たの、お前」
「謝りたかったからだよ。悟に」
「ふーん。どうせ口だけじゃん」
「じゃあどうすれば信じてくれる?」
「……知らない。自分で考えて」
「悟」
傑の声が少し近くなる。
悟はびくっとして、ソファの端へ逃げるように身体をずらす。
「な、なに? 近いし。なんか用? 別に甘えたいとか思ってないし。ていうか触られたら怒るし」
「……甘えてないなら、なんでそんなにそわそわしてる?」
「してないってば!」
「……ぎゅーされたいなら、そう言えばいい」
「……ッ、言わない!」
目をそらして、ぷいと横を向いた悟の耳が赤く染まっていた。
その姿があまりに不器用で、可愛くて──
夏油は静かに笑った。
「じゃあ、私からする」
「は? なに──」
言い終える前に、腕が引き寄せられた。
大きな体に包まれるように抱きしめられて、悟は咄嗟に抵抗しようとするも……
「……やだ、離すな」
「離さない。……許してくれる?」
「……ん、許す」
ぼそぼそと答えて、悟はそっと傑の服を掴んだ。
「……チューもしたい」
「ん?」
「聞こえてんだろ、バカ……。……チュー、して」
ようやく漏れたその一言に、
傑は何も言わず、優しく唇を重ねた。
ツンツンしながらも、心では全力で求めてた。
素直になれない悟も、抱きしめてくれる傑も、
その全部がきっと「好き」のかたち。