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シンデレラボーイ

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シンデレラボーイ

2 - 第2話

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2025年08月12日

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りうら視点



夜になると、決まってないくんの部屋の灯りを思い出す。

小さなキッチン、ソファに無造作に置かれたブランケット、そして、いつも俺の帰りを待っていた、静かなまなざし。


「ただいま」なんて一度も言えなかったくせに。

ないくんの前にいると、なぜか言葉が詰まる。





最初は軽い気持ちだった。

心を開くなんて、面倒で無意味だと思ってた。

だから、ないくんの優しさも、真っ直ぐな目も、どこかで馬鹿にしてたのかもしれない。


でも、夜になると自然と足が向く。

ないくんの匂いがする部屋、体温、気配――全部、俺を許してくれた。


許されることで、安心してしまってた。

そんな俺の弱さを、ないくんだけが見抜いてたのかもしれない。





ある日、ないくんが言った。


「0時過ぎたら、お前は最低になる。」


何も言えなかった。

図星すぎて、笑うしかなかった。

そのあとすぐ、タバコに火をつけて、ごまかした。


……ないくん、あのとき泣きそうだったんだよな。

気づかないフリをしたのは、俺のほうだ。





好きだった。

たぶん、誰よりも。

でも、それを言ったら壊れそうで、言えなかった。


「好きって言わんでよ。愛してもないのに。」


ないくんの目が、俺の中の一番弱い部分を撃ち抜く。

本当は、言いたくてたまらなかった。


だけど、俺はただの”シンデレラボーイ”なんだよ。

0時を過ぎれば、魔法は解ける。

ガラスの靴を渡す勇気も、持ち合わせちゃいなかった。





別れは、予想してたよりずっと静かだった。

冷たい朝、濡れたままのバスタオルを残して、俺は出ていった。


「平気そうにしてるのが、一番ムカつく。」


そう思った。

でも、それは俺が、捨てられたくなかっただけだ。





数ヶ月後、カフェで偶然会った。


「久しぶり、ないくん。」


その一言で精一杯だった。

隣に誰かいなくて、少し安心した。

でも、もう俺に帰る場所はなかった。


ないくんが折ったタバコを見て、俺はやっと気づいた。


この恋は、俺が終わらせたんじゃない。

ないくんが、前に進んだんだ。





本当は、最後の夜、言いたかった。


「俺のこと、忘れないでよ。」


でも、そんなの都合がよすぎる。


だから、せめて――


ないくんの笑顔が、もう誰にも壊されないことを願ってる。











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