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あの時、完全に封じ込めた私のエゴが、今再び脈を打ち、蘇ようとしていた。
そう、私はこの瞬間まで、居場所もすべて理解しているそれを求め、探し続けていたのだ。それまでの日々から何かが消えていて、それで己が何なのかすら見失っていた。
私は誉田美蘭。誰よりも愛に飢え、誰より愛を疑い、愛を信じてきた美蘭。この身を復讐へと駆り立てる、この思いを忘れたか。
「なぜあなたは協力してくれるの」
怯える事なく、信じた意志で距離を詰める。もう逃げるのはやめだ。私は晃一のさらに一歩先へ行く。
「先ほども言った通り。彼を手に入れるためです」
「……なるほどね、いいわ。乗った!」
玲奈は初めて本心から驚いたような表情を見せる。
私のほうも正直、このような結果になった事は意外でしょうがない。だが、彼女との静かなる攻防戦は楽しかった。
あの日、晃一にぶたれて、すべてを知った日。あの時の私であれば、きっと包丁手にして彼女をめった刺しにしていたことだろう。笑う事や楽しむことなんかは考えず、ただこの命を彼の人生を終わらせるためだけに使っていただろう。
当然今は違う。自分って何だという問いに青春ぶりに思いっきりぶつかり、生きる価値を覚えた。
結局のところ私たちは、くだらないほどに同志であったのだ。
「ただ私は、自分の人生捨てる勢いで晃一への復讐を過去形にするから。そこらへんは覚悟しなさいよ」
「ふふっ、むしろそうしてもらわないと困る」
その瞳に偽りはなかった。ようやく彼女は少し、心を開いてくれたのだろうか。
「じゃ、今日はありがとう。カチャトーラ美味しかった」
まるで親友のように、まるで盟友であるように手を振って背を向けた。長い戦いはこれからさらに激化する。ついに晃一の人生を殺すのだ。
だからもう、きっと会うことはない。
「あ、最後にいい?」
玄関のドアに手をかけた時、私の背へ彼女が語り掛けた。
「さっき『復讐を過去形にする』って言っていたけど。……多分もう、それは果たされている。あなたがそうやって、自分の人生をかけるほど本気になったんですから。
だから勝手ながら訂正させてもらうと――。『復讐は既に』」