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撮影帰り、楽屋で着替える初兎を、いふはじっと見つめていた。
「……なにさ。さっきから」
「その服、いつもより肌見えてね?」
「衣装さんが決めたんだよ。知らないよ」
袖の落ちたオーバーシャツ、ちらっと見える鎖骨。
ファン向けの撮影だってことはわかってる。それでも――
「正直、あんま見られたくねーんだけど」
「え?」
「他のやつらに、そういうお前、見られんの嫌」
言った本人もわかってる。理不尽なのは。でも止まらなかった。
「さっき、カメラマンに褒められてただろ。『今日の初兎くん色っぽいね』って」
「別に普通の会話じゃん……どうせお世辞だよ」
「そんなの分かんないだろ……俺だけが知ってりゃいい。そんな顔も、声も、表情も」
いふは歩み寄ると、ぐいっと初兎の腰を引き寄せた。
いつもより強めの抱き寄せに、初兎の体が少し跳ねる。
「やめて、誰か来る……!」
「来ねーよ。鍵閉めた」
「まろちゃ、なに……」
耳元に唇を寄せて、低く囁く。
「俺のものなんだから、俺以外にそんな顔見せんな」
「……まろちゃん、嫉妬しすぎ」
「うん。してる。めちゃくちゃ、してる」
少しの沈黙。
それから――初兎は、いふのシャツをくしゃっと掴んだ。
「……じゃあ、あとで独り占めさせてあげるから」
「……今すぐじゃダメ?」
「バカ、我慢して」
「無理。初兎、可愛すぎる」
独占欲にまかせて抱き寄せた腕の中で、
初兎は顔を赤くしながら、少しだけ微笑んだ。