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元々リビングだったこの部屋には大きなソファが置いてあり、打ち合わせの部屋としても使用していた。壁沿いにはハンガーラックと十着程のドレスと全身鏡、その前には着替えやすいよう大きめのラグマットを敷いた。
ハンガーラックのそばへと案内すると、翔は興味津々という顔でドレスを眺める。
「手にとって見ていただいて大丈夫ですよ。元々向こうにいる時もリメイクの仕事の方が多くて、だからこのお店もどちらかといえばリメイクとセミオーダーを中心にやっていくつもりだったんです。でも日本ってレンタルの需要が高いじゃないですか。それなら今まで作った物を貸し出したらどうかなって」
萌音の話を聞きながら、翔はドレスを手に取る。
「クラシックなデザインですね。派手すぎず、それでいて存在感がある。こちらはお色直し用ですか?」
萌音は頷いた。ハンガーラックの左側にウエディングドレス、右側には昔話に出て来るような、レトロなヴィンテージ風のデザインのドレスが掛けてある。
「需要があるかわからなかったけど、ありがたいことにこういうドレスが好きって言ってくださる方もいるんです」
「……すごく素敵ですよ。萌音さんらしい、歴史や文化、それに現代のテイストをミックスしたデザインがいいですね。まるでどこかの舞台衣裳のような感じもしますよ」
翔の言葉に、萌音は嬉しそうに瞳を輝かせた。
「あ、ありがとうございます……! っていうか、舞台衣裳の話を覚えていてくれたなんて感激」
頬を赤く染めて照れたように笑う萌音の頭に、翔はそっと手を載せる。
「萌音さん、今日の午後は忙しいですか?」
「えっと……いえ、この作業の続きをやる予定でしたが……」
「ではもし良かったら式場にいらっしゃいませんか? 仕事部屋を見せていただいたお礼に、是非萌音さんをご案内したいんです」
「……いいんですか? いや、あの……やっぱりこういう仕事をしていると、式場にすごく興味はあるんです。でも個人の小さなお店だから、なかなかそういう機会がなくて……」
「それなら良かった! ただこれから仕事が一件入ってまして……十五時くらいはどうでしょう?」
「今は新しい依頼も入っていないので大丈夫です! 嬉しいなぁ……是非伺わせてください」
萌音が満面の笑みで返事をすると、翔も嬉しそうに微笑む。その顔を見た瞬間、萌音の心臓が早鐘のように打ち始める。
どうしていつもこんなに素敵なんだろう……。思い返せば、翔さん以外の人にこんなにドキドキしたことってないかもしれない……。
「では十五時にお迎えにあがります」
翔の声でハッと我に返る。
「そ、そんな! 自分で行きますのでお気になさらず……。この間のレストランの奥ですよね? 道はわかりますし、明るい場所できちんと見てみたいんです。外観とかいろいろ」
「……わかりました。ではお待ちしていますね」
それから翔を門まで見送ると、萌音は急速にやってきた興奮やドキドキを抑えられずにその場に倒れ込んだ。
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