「はぁ…」
ある日の昼
魔法動物たちに餌をやり終え、トランクから出てきたニュートは
カレンダーを見てため息をひとつこぼす。
そして窓を見ると、そこにはニュートのそんな気持ちなど知らずに、清々しいほど雲ひとつない青空が広がっている。
つい日中の太陽の光が目に入りフッと顔を背けると、またカレンダーを見つめては
今度は指でなぞりだす
この赤い丸は、兄さんが出張に行った日…
この日から1.2.3…
「今日で3週間か…」
と自分で納得してはまたため息をつく。
そしてこの日は自分たちがカップルになってから3ヶ月目でもある。
兄さんだって忙しいんだ、出張だって何度もあったじゃないか
だからもうそういうことを考えるのはやめなくちゃ。
そう思いカレンダーから目を逸らすと
今度は茶色の食器棚のガラスから、二つのカップが見えた。
そういえば、せっかく揃えたティーカップで紅茶を飲んだ回数も片手で数えられる程しかない。
もう今は、何を見ても自分の兄との思い出を連想して、気持ちが沈んでしまいそうだ。
「あーもうダメだ…一旦何も見ないようにしよう」
少し雑にベッドへ身を倒すと、目を閉じた。
外から微かに鳥が鳴いている。
そういえば…兄さんから手紙が来ないな。
また兄のことを考えてしまう。
兄がホグワーツに在籍していた時、そして兄が卒業し自分が入学して在籍していた時。
そしてこうして離れ離れの時、
いつも最初の手紙は兄さんからだった
内容はどれも似たようなものばかり
『ちゃんと好き嫌いせずにご飯を食べてるか』
『この前のクィディッチでレイブンクローに勝ったんだ』
『勉強は順調か』
『卒業したら闇払い局に来ないか』
『早くニュートに会いたい』
一言一句同じというわけではないが、大体このような内容が週に一回届いていた。
流石にお互い大人になってからは頻度は少し落ちたが…
似たような内容だとわかっていても、実際一通も捨てられずにいる。
それくらい兄から自分に与えられるものは、魔法動物と同じくらい大切なものである。
だが問題はここからだ
3週間前に出張してから、兄から来た手紙はその翌日
出張先に着いた、という旨の手紙一通きり
少し疑問を抱きながらもニュートは二通手紙を送った。
するとちゃんとその二通に返事が返ってきたのだ。
まだ今週は送っていないが、しっかりと返事が返ってくるあたり、兄が無事であることは確信できる。
でもなぜいつも自分から送っていた兄が、突然手紙を送ってこなくなったのか
唯一それだけが謎のままだ。
「あ…また僕は…兄さんのことを…」
どれだけ気を紛らそうとしても、結局意識は兄について引っ張られていってしまう
何故こうなってしまったのかは、もちろんわかっている。
「っ…」
その瞬間、自分の顔が熱くなっていくのを感じた。
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