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🌸第10話 ふとした瞬間
昼休み。
陽が購買のパンを持って戻ると、
ひよりがひとりで机に向かっていた。
「小鳥遊さん、今日のお昼それだけ?」
「……うん。お腹あんまり空いてなくて」
「じゃあ半分食べる?このメロンパン、二個買っちゃった」
「……え?」
ひよりは驚いたように目を丸くした。
「ほら。甘いの好きでしょ?」
「……なんで」
「なんとなく」
ひよりは少し迷ってから、
そっとメロンパンを受け取った。
「……ありがとう」
そして、
ひよりは気づかないまま、
昔と同じ笑い方をした。
陽の胸が一瞬だけ強く跳ねた。
(……あれ)
その笑顔は、
砂場でうさぎを作っていた“ひよりちゃん”と同じだった。
(なんで……こんなに懐かしいんだろ)
ひよりは陽の視線に気づき、
少しだけ頬を赤くした。
「……なに?」
「いや……なんでもないよ」
陽は笑ってごまかしたけれど、
胸の奥のざわつきは消えなかった。
(はるくん……なんでそんな顔するの)
ひよりは胸がくすぐったくなった。
(でも……嫌じゃない)
むしろ、
陽に見られると少し嬉しい。
(……私、変わってきてる?)
ひよりは自分でも気づかないうちに、
陽の前では昔の自分に戻りつつあった。