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カフェでの即興セッションを終えたあと。店内にいた数人のお客さんから、思いがけない拍手が送られた。
佳奈は恥ずかしさで頬を赤らめながらも、その温かい音に胸がじんわりと熱くなる。
『なぁ……』
隣でギターを抱えたままの良規が、小さく声をかけてきた。
彼の横顔は真剣で、夜の街灯りの中でも瞳が強く輝いて見えた。
『君の歌、ホンマに凄い。俺のギターと、こんなに合う声やったんやって……びっくりした』
佳奈は俯きながらも、少しだけ笑みをこぼした
「そんな……私なんて、ただ歌っただけだよ」
『ちゃうねん』
良規は首を振る。
『ただ歌っただけで、あんだけ響くんは才能や。俺、今までずっと一人でギター弾いてきたけど……君と一緒なら、もっと先に行ける気がする。』
彼の真っ直ぐな言葉に、心臓が跳ねた
『一緒に音楽やらへんか?』
静かな夜に、その言葉が真剣に響く。
佳奈は驚きながらも、胸の奥が熱くなり、迷いながら口を開いた。
「……私で、いいの?」
『君がええんや』
その一言が、決定的だった。
気づけば、佳奈の口から自然に答えがこぼれていた。
「……うん。一緒にやりたい」
良規はぱっと笑顔を見せ、ギターの弦を軽く鳴らした。
その音は、まるで二人の約束を確かめるように澄んで響いた。
こうして、ギターとボーカルの小さなユニットが生まれた。
夢も未来も、まだ何も形にはなっていない。
けれど、この夜交わした約束が、二人を大きなステージへと導いていくのだった。