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意識が戻ったとき、視界に飛び込んできたのは、見覚えのある鉄格子だった。冷たい石の床、湿った空気……
最初に捕まった時と同じ牢屋だ。
『……起きたか?』
低い声に顔を上げると、健がすぐそばに座っていた。
両手首には縄の痕がくっきりと残り、服は泥と血で汚れている。
それでも、紗羅を見る瞳には安堵の色があった。
『無事で良かったわ……』
「健こそ、大丈夫?」
『俺は平気や。紗羅の方が心配やった。』
2人の会話は、鉄格子の外に立つ見張りの視線に遮られた。
《明日、日が沈む前に“処分”が下る。逃げられると思うな。》
そう吐き捨てると、見張りは重い足音を響かせて去っていく。
静寂が戻った牢屋で、健は膝を抱えた。
「……ここから出る方法、もう一度探そう。」
『でも、見張りが増えてるし……』
紗羅は一瞬だけ迷ったが、健の手を握る。
「それでも一緒に考えよう。諦めたくない」
月明かりが小さな窓から差し込み、2人の影を重ねた。
たとえ鉄格子に閉ざされても、この手だけは離さないと誓うように。