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side未緒
チチチチッ
窓から溢れてくる雀の声で目が覚める。 目を開けるとあまり見慣れない白い天井が目に映る。 ぼやけた頭のまま「はて?ここはどこだっけ」と考えてここ数日のことを思い出した。
、、、お腹が空いた。 ご飯を食べに行こう。
靴を履き、服を着替える。 可愛い木の枠に埋め込まれた鏡で一度自分の姿を映した。 髪がサラサラで、綺麗な服。 なんだか不思議な感じがしてその場で一回転してみる。 そのまま可愛らしくこてんと首を傾げた自分と目が合った。
、、、特に意味もない行動をやめ、部屋の外に出る。
お姉ちゃんも呼ぼうと隣の部屋に入るもそこには誰もなくて、お姉ちゃんはどこかに出かけているということだけがわかった。 仕方なく、1人で食堂に向かう。 もう随分と慣れたものだ。 食堂なら迷わずいける。
そうだ!今日は寄り道してみようかな。
そんなことを思い別れ道でいつもとは違う方の道を選ぶ。
、、、それが全ての始まりだった、
「、、、ここ、、、どこ、、、?」
数分後誰もいない廊下に私の声が反響する。 完全に迷子になってしまった。 曲がり角が何個かあって階段もあった、緩やかに降ってたり登ってたりする道もあった。 そうして方向感覚が狂ってきたところでやばいと感じ戻ろうとしたのに、その頃にはもうどこからきたのかもわからなくなってしまった。 インカムで助けを呼ぼうと考えて部屋の机の上に置いてきたことを思い出す。
詰んだ、、、?
人が誰も見当たらない。 窓すらない。
カタンッと後ろから音が聞こえて飛び跳ねる。 後ろを向いても何もない。 何かに追われるように早足に進んでいく。
私はどこに向かっているんだろう、、、
左に曲がった時目の前に壁が立ちはだかった。 行き止まりだ。 閉鎖された空間に1人取り残されたような気分になり、涙が込み上げてくる。 私、このままここで1人死んじゃうんじゃないだろうか。
怖いよ、、、誰か助けて、、、
しゃがみ込み顔を腕に埋める。
その時、聞き覚えのある7時を知らせる鐘の音が頭の上から聞こえた。 驚いて上を見上げると、壁になっていたところの4メートル上くらいにまた空間がある。 いくあてもないので浮遊を使いそこに上がる。 上に上がると外の葉っぱの匂いと雀の声がした。それに混じって鼻歌が聞こえてくる。 そのまま進んでいくと、一つの部屋につながっていた。
一つの丸い窓と背の高い本棚。机などの家具は一切なく代わりに壁いっぱいに紙が貼られている。 そして、鼻歌の犯人が部屋のど真ん中で床に寝っ転がりながら頬杖をついてしきりにクレヨンを走らせている。 静かにその部屋に入り周りを見渡す。
「_え、、、なんでここにいるの?」
驚いている声がして声がした方に視線をやると、そこにはやっぱり驚いた顔の華飛がいてこちらを見つめている。
「迷子になっちゃって、、、」
そこまでいうと「あぁ迷子ね」とゆっくりと立ってこっちに向かってきた。
「帰り道、教えてあげるよ。ついてきて。」
いかにも無関心といった様子で目を合わせず横を通り過ぎていく。 その時、華飛が動いた空気の揺らぎでパラッと壁に貼ってあった紙が一枚落ちてきて私の足元で止まった。 その紙には誰かの一人称視点で見られた絵がかいてあった。のん、田中、叶、風が真ん中のテーブルで楽しそうに談笑している横でそれを静かに、でも幸せそうに見守る狼冥さん。クッションを抱きしめながら丸くなって寝ているルイ。そして、早く来いよと言わんばかりに優しい笑顔でこの視点の人物の手を引く誠。 何気ない日常の風景を写真で残したようなつまらない、でも幸せそうな絵。
もう一度壁の方を見ると。 沢山の紙にはそれぞれいろいろな場面が描かれていた。
ルイが自分で作ったのかよくわからないダンスを踊り、それを見て爆笑する誠。
風の上アングルのキメ顔。
田中が解像度の低い狼冥さんのモノマネをし、みんなを笑わせているところで背後から鬼の形相で近寄る狼冥さん。
1人ファッションショーをしている叶。
そして、自慢げに今完成したのであろう書類を狼冥さんに見せて「ほめろ」とでも言いたげなのん。
など、みんなの盗撮とも呼べるような絵がずらりと並んでいる。 その絵たちはどれもリアルで、現実世界の一瞬をそのまま切り取ったような臨場感があった。
「見ないデー!!!!」
突然華飛の悲鳴に近い声が聞こえて視界が隠される。
「だめ!!見ちゃだめ!!みおは何も見てない!」
華飛は早口でそう言うと、私の視界を手で遮ったまま一緒に後退する。 しかし、私は負けじと前進する。
「やめてー」
「いやだー!!」
そのまま2人でもつれあったまま転けた。 起きあがろうとすると華飛が私の胴体に腕を回し引っ付いて立てないようにしてくる。
「ほんとに!!帰ってー!!」
そして、また前のめりに転けた。
はぁ、、、はぁ、、、
お互いに疲れてその場で俯きに倒れたまま少し休憩する。
「ねぇ、、、なんで隠すの?」
寝っ転がったまま聞いてみる
「え、、、だって、、、盗撮したやつだもん」
当然じゃんとでも言いたげな表情。確信犯じゃん!
「誰にも言わないで!おねがい!」
涙目で懇願される。 起き上がって寝っ転がったまま泣きそうな華飛の方を見る。
「いいよ。誰にも言わない!」
そう言うと華飛は安心したように笑って立ち上がった。 そして、さっき床に落ちたみんなが映ってる絵を壁に貼り直す。
「絵上手だね」
「まぁ映してるだけだからね」
そこまで言って華飛が振り返る。
「おれの個有能力”シャッター”はその時、その瞬間を画像とか映像とかで記録できるんだけど、かいの感覚共有がないと自分の中だけで完結しちゃうんだ。撮って保存するだけで相手に見せることができないから、こうやって書いてるの」
「ふーん」
「本当は誰にも見せないはずだったのに」とぼそっと言った華飛を尻目に窓に近づく。 丸い窓から外を見るとオレンジっぽい三角屋根の街並みが朝日を映して煌めいていた。
私の部屋や食堂からは外の景色は見えないから、気付かないうちに随分上の階に来てしまっていたようだ。 そして、私はここ1週間この城の敷地内で過ごしていて、外の街並みを見る機会は今までなかった。
城の中も楽しいけどそろそろ外に遊びに行きたい。 そうだ、ここからだとなんだかミニチュアみたいなあの街に手始めに冒険しに行こう。
そこまで考えるとグーとお腹が鳴った。そういえば私食堂に行こうとしてたんだっけ。
「みおー!おれご飯食べにいくけど来ないのー?」
後ろから声をかけられ振り向き、華飛が立っているドアの方まで駆け足で近づく。
「2人だけの秘密だからね」
華飛が顔の前に人差し指を持ってきて、いたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「当たり前じゃん!ハルヒ!」
私も同じくニヤッとする。
後日、その時の未緒のニヤけた表情が描かれた絵が部屋の壁のどこかに付け足されていたことは誰も知らない。
《個有能力》
浮遊・・・飛ぶという行為ができるのは魔法が使えるか羽などの飛ぶことのできるものを持っている場合のみである。魔法を使って飛ぶ場合、使用者の魔力量によって最高高度や最高速度が異なる。また、魔力、体力の消費量がとても多い。浮遊を使った場合その制限がない。(といっても魔法使いは元々の魔力量が多く、魔法を使った時の体力の消費量もとても少ないためあまり強い個有能力とはいえない)
次回__
昇華のイリス前日譚『彩色のアンコロール』公開!!