テラーノベル
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「楽しくやったよ」
「物足りない顔だが?」
「あのね、羅依。これはお仕事なの。羅依も今朝言ったでしょ?クラブダンスなの。植木さんがオーケーって言って明日も同じでいいって言うくらいなんだから、こんなものなの。わかる?」
「才花は中途半端に動いて不完全燃焼」
「はぁ?まだ言うの?」
冷たい声と無表情で私を見透かす羅依に、ペットボトルをグリグリと押し付けて返すと
「上着を着ろ。行くぞ」
羅依が言う。
行く?帰るんじゃないの?
私は羅依に手を引かれ、手を振るタクと植木さんに見送られてクラブの裏から外に出ると
「どこに行くの?」
細い路地で羅依に聞く。
「3分待て」
「カップ麺?」
チュッ…このこめかみへのキスの意味は?
分からないな…
「ジムに行くの?」
通い慣れた緒方先生のジムの入るビルに向かっているようで…やっぱり、と思ったけれど羅依はジムのある2階でなく、1階へと進み……見知らぬドアを解錠すると、パチパチッ…シーリングライトを点けた。
「…スタジオ?」
今はブラインドが降りているけれど、道路に面した一面はガラス張り。
あとの3面は今のドア以外は鏡になっている。
「才花の部屋」
「私の部屋?」
「そうだ。俺の才花の部屋だ」
「…鏡が大きいね」
「俺の才花好み」
「フロアがダンス仕様だね」
「俺の才花好み」
「音響は?」
「俺の才花好みになってる」
「防音は?」
「当然」
「もう曲って入ってる?」
「ああ」
それだけ言うと、羅依は部屋の隅の壁の部分にもたれて足を投げ出し、ゆったりと座った。
私は音響セットの前で電源を入れると、とりあえず1曲目から流す。
「わぉ…」
部屋の隅から隅へと歩き回っていると
「何してる?」
羅依が不思議そうに聞く。
「うん…鏡が多い部屋って残響が大きかったりするから確かめてる」
「どういうことだ?」
「部屋の中で位置によって音が取りづらい場所が出てくるの」
「…才花に最初から作らせれば良かったか?一応、専門業者に発注したが…」
「大丈夫、ありがとう。問題ないよ」
と、上着を羅依の足にポンと脱ぎ捨て靴を履き替えると、床体操のようにロンダード、バク転、バク転と回り着地のフロア感覚を確かめてから、足を滑らすステップでさらに感触を確かめる。
「羅依、いい部屋だね。私好み」
数秒、音に身をゆだねたあと
「羅依っ!」
私は音に負けない声で羅依を呼びながら走ったまま彼に飛び込んだ。
「っ…ぶねっ…マジで加減のきかない子どもの勢い…ケガすんぞ」
横に力を逃しながらも私を抱き止め、フロアに転がった羅依にぎゅっと抱きつく。
「私の羅依だから大丈夫」
「才花のヤンチャはおさまんねぇな」
「羅依のヤンチャは、お兄ちゃんとか…みんな一緒に完了したのにね」
「才花はずっとこのままだな」
「ヤバい?」
「可愛すぎてヤバい」
「文句はお父さんに言ってくれる?」
「俺の才花が可愛すぎってか?才花の取り合いになるな」
チュッ…軽く唇を重ねて
「ここは才花の部屋だから自由に使え。今日みたいに不完全燃焼なら、ここで完結させればいい。ギャラリーが必要ならブラインドを上げればいい。クラブダンスの永遠にアップダウンなんてのが退屈なら、ここでレベルアップする生徒を取ればいい。才花の可能性は無限だ」
そう言って頬を撫でる…と、次々とかかっている曲がまた変わり
「俺、これが好き」
と羅依が甘く囁く。
「…そっか…」
私は彼の胸に手をついて起き上がると、イギリスで踊るはずだった曲に合わせて跳ねた。
羅依だけに見せてあげる。
コメント
3件
羅依サイコ~✨✨✨ 俺の才花好み に撃ち抜かれました💘
『俺の才花好み』キャ━━━━(゚∀゚)━━━━!! 連日の猛暑もこの羅依語録で乗り切れる❥❥❥ スタジオを用意してたなんて〜✨羅依だよ〜これが羅依っ✨それも全てカンペキに『俺の才花好み』に仕上げて〜✨✨✨ 羅依だけに見せてあげて🥹イギリスで踊るはずだったダンスを😭 そしてここのスタジオからまた新しいヤンチャな可愛い才花ちゃんの始まりだね*☆*゚♪゚*☆*゚♪*
羅依はどこまでも才花ファースト🩷🫶 ス・テ・キなご夫婦💑 才花ちゃんの今後の展開が楽しみ💃⤴️⤴️