テラーノベル
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榎本兄弟のマフィア所属設定を今回は無しにします!
では、どうぞ!
あのいつも強気なコヨねえが僕の部屋の前に嗚咽を吐きながらたっていた。
「昨日ね、人を……、殺しちゃったんだッポロ」
驚いて勢いのまま扉を開けると、
そこには、ずぶ濡れで泣いているコヨねえがいた。
そんな言葉で、この話しは始まった。
コヨねえの話しを聞くに、殺したのは、コヨねえをいじめている、隣の席のやつ。
いじめているというか、コヨねえは仕事ができすぎて会社の社畜状態。
で、一番コヨねえ任せにしていたのはそいつだったという。
「休憩時間、その子といたら、仕事をまた押し付けられて、嫌になっちゃって、」
「……肩を突き飛ばしたの?」
「………うん、」
どうやってもコヨねえじゃなくて、そいつのせいじゃねぇか。
俺は怒りに肩を震わせたが、「あぁ、」と哀しみに満ちた声を出した。
元はコヨねえが被害者でも、人を殺したなら話しは変わる。
「なんでだよッ、コヨねえは、悪くねぇのに……ッ」
そんな声を上げていたら、コヨねえは、酷く無理をしたように笑った。
「あ、あはは、バカみたいだよッ」
「まだここに居たいけど、無理だね(笑)」
その後に吐かれた言葉は信じられなかった。
「遠くで死んでくるよ」
「……ッはっ?」
死なないでよ、そんな俺の言葉は、届かないのだろうか?
その言葉に反射的に僕は言葉を返していた。
「それじゃ、僕も連れてって?」
「えっ?」
ゴソゴソと部屋中を僕は漁る。
その頃には、怒りなんか消えていて、コヨねえと居ることだけを考えていた。
「ちょッ、なよまで行く必要はッ」
「僕が行きたいんだッ、ただ、それだけなんだ………」
はっとコヨねえは息を呑んだ。
多分、最初で最後の、僕の我儘。
財布、ナイフ、沢山の携帯ゲーム、それらを鞄に詰めた。
他は全部、要らないから壊す。
コヨねえと撮った写真、今までの日記、
………母さんと撮った写真も、今はもう、要らないかな。
この鞄を持って、人殺しのコヨねえと、ダメ人間な僕で、遠い地までの旅を始めよう。
それから駅の切符を買ったりして、
あの狭い狭い世界から逃げ出した。
あのクソな元家族やコヨねえを虐めたあいつらも、何もかも捨ててコヨねえと2人きりで。
そして、そのたどり着いた遠い遠い地で2人で死ぬんだ。
「もうこの世界に価値なんてないよ、」
「なよ、」
小さな呟きをコヨねえは拾った。
「だってさ、」
涙が流れる中、僕は言葉を吐いた。
「だって、人殺しなんてそこら中湧いてるじゃんか、」
今だから言った方が良かったと思う。
「コヨねえは何も悪くないよ」と。
ふと、駅に行くまでの道のりでコヨねえは言った。
「やっぱり、うちら誰にも愛されたことなかったんだね。」
「そうだろうね……」
今まで”愛されない”なんて共通点から義姉弟でも、簡単に仲良くやれてきたんだし。
そういえば、家でしたときにコヨねえが繋いでくれた手、あったかかったなぁ。手の震えも止まってたし。
そんなことを思い出しながら、誰にも縛られずに線路の上を手を握って歩いた。
駅の改札口を通ろうとしたとき、僕は気づいた。
「あっ、お金ない、」
そうしたら、コヨねえはニシシと笑っていった。
「じゃあ盗めばいいじゃんw」
財布を擦った。
「あ、ガキっ!お前ら何をしているだッ‼︎」
途中で見つかったが、コヨねえは楽しそうだった。
「やっばぁ、なゆ、逃げるよっ!」
「えっ、あっ、うん!」
コヨねえにひっぱられながら、へなへなな足で全力で逃げた。
あ、明日は絶対筋肉痛だっ。
でも、どこにも行ける気がした。
怒られたときも、不思議と怖くは感じられなかった。
額にたらりと流れる汗。
近くにメガネが落ちた。
でも、今となってはどうでもよかった。
あぶれ者になったんだ。
こんなに小さな逃避行の旅だけど、楽しまなくちゃね。
でも、あの狭すぎる世界にまだ、未練があった。
「いつかの日夢でみた優しくて、誰にも好かれる主人公なら、
汚くなった僕たちも見捨てずにちゃんと救ってくれるのかな。」
でも、コヨねえはそんな僕の希望をばっさりと切り捨てた。
「そんな夢なら捨てたよ。だって現実をみなよ。
シアワセの四文字なんてなかった。今までの人生で思い知ったじゃないか。」
そこで僕ははっとした。
どこか夢見ごちだったんだ。
世界を甘く見ていた。だから僕らは逃げたんじゃないか。
「自分は何も悪くないって、みんな思ってるんだよ、」
悲しそうに笑った。
「……、ほんと、自己中な世界だ、」
「……うん、自己中だ、」
静かに、コヨねえの言葉に同意した。
そろそろ目的地だ。
あてもなく、蝉の群れが彷徨っててるからうるさい。
体も水を欲していて、視界とともに揺れ出した。
「榎本 コヨミさん! 榎本 なゆたさん!待ちなさい!」
とうとうここまでついてきやがったのか。
後ろから、迫り来る鬼のような追っ手の怒号にうんざりとした。
でも、もうすぐ終わるっ!
それだけで2人ではしゃぎ会えたんだ。
あ、ふと君はナイフを取った。
最後の言葉のようにコヨねえは吐き捨てた。
「なゆが今まで傍にいたからここまで来れたんだよ。」
「こ、コヨ、ねえ?」
「だから、もういいよ、もういいんだ、」
やめて、やめてよ、
その言葉を聞きたくない。
「死ぬのはうち1人でいいよっ!」
そしてコヨねえは首を切った。
涙と血があたりにちった。
まるで、何かの映画のワンシーンのよう。
白昼夢を見ている気した。
信じられない光景。
気づいたら僕は捕まってて。
「コヨっ、ねえっ!ねぇっ、どこ、コヨねぇ‼︎」
コヨねえがどこにもいなくって、血ナマコになって名前を叫ぶように呼び続けた。
コヨねえだけがどこにもいなかった。
そして、時は過ぎて今になった。
ただただ暑い日が過ぎてっただけだった。
クラスのやつらもコヨねえの同僚もいるのに、
何故かたった1人の家族だけがいない。
思い出すのはあの夏の日だった。
僕は今でもずっと歌ってる。
コヨねえを探しているんだ。
コヨねえに言いたいことがあるんだ。
九月の終わりにくしゅんと小さくくしゃみをして、
六月の匂いがする。その繰り返しだった。
今までのコヨねえといた時間にまだ心がいた。
コヨねえの笑顔、無邪気さは、いつも、これから先も、頭の中を飽和している。
でも、これだけはいいたかった。
「誰も何も悪くないよ。コヨねえは何もわるくないから、
もういいよ、投げ出してしまおう?」
そう言って欲しかったんでしょ?ねぇ!
でも、
「今更、遅いか、」
乾いた笑いを浮かべて、僕はその後何をしたのか覚えていない。
コメント
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……毎度リアルで発狂して親に怒られる学ばないやつ、それが私だ☆(((((