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3話
💜視点
「なんっっも知らねぇ癖にっ、、!」
ガナリを吐き出すような声質が頭に響く
彼の焦り顔からは見た事ないほどの冷や汗が机に落ち顔も暗く暗く影が降りかかったような圧が俺を襲う
その顔が俺のせいだと思うほど苦しく舌を噛む
「っ、、、」
「あっ、ごめ…おか、め、は…ちが、くって、、その」
彼の顔は酷く引き攣り必死の弁解を探そうと言葉を漁り無理に吐き出してる様に俺の目には反射する。哀れにも自分はなんもできやしない
自身の舌から滲む鉄の味が五感がまだあるんだと知らせてくる
「んー、、?平気、、ごめんね。」
「ッ……」
「悪い。気分悪いよな、帰る…また明日」
「ぇ、、?」
無理やり笑った顔の奥に何かが見えそうで、でも全て隠される様に目を細める彼。
気付く頃には財布の金が机に置かれている。
今俺がそれに気付いたことも分からず淡々と準備を進め床へ足をつける般若。
「は、、ん、、、ぁ」
「……」
下手に声が出ず発音の仕方も知らず嗚咽が出そうになる
“行かないで”
なぜその一言か言えないのか。名前を出せないのか、2人分のお代が置かれた机に目をやって沈黙に包まれた中、目前にある机には氷の残ったビールジョッキだけが酷く主張されていた。
世界に独りだと言うには周りがうるさ過ぎる居酒屋。
「お待たせしました。」
「……ありがとうございます」
静かに置かれたビールを見つめ溺れてしまいそうなほど思考が止まる
手をつたる汗はこの時期にしては冷たくて、雨の様だ
「んッ、、ぐ」
ビールの苦味が舌全体に広がり声を抑える喉へ流し込む
「く、、はぁ」
一気に飲み干したビールの氷を目で見つめ机の金を握りしめレジへ向かう。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
夜の風がやけに心地良く、夏というには湿気も少なく頬に夏の匂いを乗せた風が触れる
「きっつ。」
フラッシュバックを押さえ込みながら駅に歩を進めると見覚えのある顔がそこにある。
「お?おかめじゃないっすか!」
「おーあぎょー、」
振り向く時ゆらりと風に乗せた髪が見えた後にみせたのは見慣れたルビー色に輝く目。面バーの1人阿形だ。
目に俺を入れた瞬間楽しそうに笑い駆け寄る様にどうも元気になれない
「何なんか元気なくない??」
一瞬にして見抜く鋭さはいつもの不思議キャラにはにつかぬ返しで心臓に突き刺されたような感覚がじわりと残る。顔を改めて見ると阿形の顔は口角を下げいて心配そうに覗き込む
「ん〜、まぁなんか、、喧嘩?」
「へぇ。兄さんが喧嘩なんて珍しい」
「そう?まぁ、そうか」
「そっすよ。」
駅へ向かう足取りについてくる阿形と会話を重ね分かれ道が近づいていく。
そんな時阿形がふと真剣な顔をして口を開いた
「無理し過ぎんのも良くないよ」
「ありがとねぇ、阿形はこれからなんかあるん?」
「いやぁ、、兄貴からなんか呼び出されてさ」
慰めるような声の後に出た聞き覚えのある呼び名に背筋が凍る。
理由簡単だ
こいつの言う”兄貴”は般若であるから。目を見開き息の詰まる感覚のまま足が止まる
「っ、?!」
「え、どしたの」
心配を増やしたように目を瞳孔を小さくして俺を見る目の上にある眉は明らか下がっている。
悟られまいと口を開き笑顔を戻す。
「あ、ごめんなんでも、、楽しんで」
「叱られなければ楽しむ」
「ふは、間違いないや」
当たり前に冗談を挟む顔に少し安堵して会話を続けると分かれ道が視界に映し出された
「はははっ、じゃあまたねー」
「はいよ〜」
冷や汗は引っ込みながらも心臓はバクバクとうるさく跳ね上がる。
今にも崩れ落ちそうな足を進め息を整えていると電車はすぐそこで止まり、アナウンスが流れる。
呆然と立ち尽くす訳にも行かず人が少ない電車へ乗り込み席に座るとフラッシュバックで頭が狂いそうになる。
「どぅ、、思われて、あぎょ、を」
誰にも聞こえないであろう声量で呟きながら頭を下に向け手を添える。
電車は揺れ始めガタンゴトン音を立てる
それと同時にひとつの疑問が通り、そこへ焦点を当てる。
なんでこんなに般若を考えているのか。
ただのセフレで、付き合うのも拒んでいるのにだ、好きなのかも分からない、5年以上共にした友であるはずなのに、こんな事で悩み続けている。
俺は、般若の
アイツの何になりたいのだろうか。