「沙恵…最近、変だよ…。」
「……私はいつも通りだよ?」
目が……怖い…全てを飲み込む、黒い目…光が、感じられない…。
「どこがっ…!どこがいつも通りだよ!」
また…涙が…
「あの日から…ずっと、俺を遠ざけるようになって…!笑わなくなって!そして…今も、光が、感じられない…!」
ダメだ…また…涙が…
「どうしてだよ…沙恵!」
「……どう…して…?どうして…そんなに…」
「ほんとは、分かってるだろ。沙恵も。」
心配だからに、決まってるだろ。
「話してくれ…全部…最近のことを…」
「…泣いてる…?」
「気にするな。いつものことだ。」
「…話して…良いの…?」
「頼んでるのはこっちだ。」
「…分かった。」
一呼吸置いて、話し始めた。
「最近ね…また…酷くなったんだ……暴力…。ストレス解消のための…人形…。家に帰るのが…とても辛い…でも…遅くなると…もっと…酷くなっちゃう…だから…早く帰っていたんだ…」
……言葉が…出ない…こんなにも、追い詰められて…なのに…明るく振る舞わなければいけなくて…沙恵の苦しみは…きっと…誰にも…分からない…。
そして……救いたい。と、強く思った。この苦しみから、開放してあげたいと。
「…分かった…」
「それと、もう一つ。私…前に、トラウマがあるって言った。」
「ああ…覚えている…。」
「そのトラウマは…これ…」
彼女は袖を捲くった。そして…腕に…
「…嘘…だろ……。」
痣が、腕を埋め尽くしていた…
「普通じゃ…ないよね…背中は…もっと酷いんだよね…。」
これ以上に…酷い…想像がつかない…
「こんな私でも…嫌いに…ならないでね。」
「嫌いになれるはずがないよ…こんなにも…表でも、裏でも、傷を負っていて…一人にさせちゃっったら、もう…会えない気がするような…そんな感じがする…。」
「大げさだなぁ…」
「俺は…君を…救うよ。絶対に。それで俺が、不幸になろうとも。」
「ありがとう…気持ちだけでも…嬉しいよ。」
「いいや。俺は、覚悟を決めた。もう…これ以上傷つく君を…見てられない。」
「そう…でも…できないよ…きっと。」
「信じとけって。こう見えて俺、打たれ強いから。」
「無理しないでね…」
「今から行こう。これ以上、傷つかないようにさ。」
「……うん……分かった……」
ここから、俺の戦いが始まる。
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