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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第16話 〚協力という名の歪み〛(りあ視点)
正直に言えば。
私は、悪いことをしているつもりはなかった。
◇
放課後、鏡の前。
前髪を少し整えて、
リップを塗り直す。
「……よし」
これで完璧。
可愛くして、
好かれる努力をする。
それって、
間違ってないでしょ?
◇
恒一と話した日のことを思い出す。
落ち着いた声。
近すぎない距離。
無駄に踏み込んでこない態度。
(……ああいう人、モテるよね)
でも。
私が欲しいのは、
恒一じゃない。
◇
橘海翔。
優等生で、
運動もできて、
周りからの評価も高い。
――一軍。
そして。
澪の隣。
◇
(なんで、あの子なの)
静かで、
目立たなくて、
愛想も良くない。
喋らないだけで
“高嶺の花”扱いされて。
(ズルい)
それが、
りあの本音だった。
◇
恒一の言葉が、頭をよぎる。
「奪うんじゃない」
「正しい場所に戻すだけ」
……そう。
私が海翔と付き合う方が、
自然じゃない?
明るくて、
空気も読めて、
クラスにも溶け込める。
私の方が、
“隣に立つ資格”がある。
◇
スマホが震える。
恒一からのメッセージ。
《焦らなくていい》
《少しずつ距離を詰めればいい》
その文章に、
胸が高鳴る。
(分かってる)
急ぐと、失敗する。
だから――
◇
翌日。
りあは、
いつもより自然に笑った。
澪を見ても、
何も言わない。
視線も向けない。
その代わり。
海翔にだけ、
ほんの少しだけ話しかける。
「おはよー」
「そのノート、字きれいだね」
それだけ。
――“いい子”のまま。
◇
周りの視線が、
少しずつ変わっていくのを感じた。
「最近、りあ落ち着いてない?」
「大人しくなったよね」
(でしょ?)
悪口も言ってない。
邪魔もしてない。
ただ、
近づいてるだけ。
◇
「協力」
そう言われた時、
りあは何も疑わなかった。
だってこれは、
誰かを傷つける計画じゃない。
“正しい未来”に
戻すための、準備。
◇
教室の隅。
澪と海翔が話しているのを見て、
りあは一瞬だけ、胸がざわついた。
でも。
すぐに笑う。
(大丈夫)
奪うんじゃない。
“選ばれる”だけ。
◇
その笑顔の奥で。
りあ自身が、
少しずつ壊れていることに――
まだ、
気づいていなかった。