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わあ、第1話からもうワクワクが止まらないです! 宇宙刑事ギャバンの後継者を育てる学園、しかも選ばれるのはたった3人っていう設定が熱いですね。宗太郎の純粋な真っ直ぐさ、ひかりの元気いっぱいな明るさ、真司のクールな距離感――この3人の化学反応が今から楽しみで仕方ないです。蒸着シーンのナレーションが入る演出、特撮ファンとしてはニヤリとしちゃいました。続き、気になります!
青く澄み渡った空。
地球から遠く離れた宇宙空間を、一隻の宇宙船が静かに進んでいた。
その先に見えてきたのは、巨大な宇宙ステーション。
中央にそびえ立つのは、銀色に輝く巨大な学園施設。
その名は――。
宙刑学園。
かつて宇宙を守った宇宙刑事たち。
その中でも、特別なコンバットスーツを身にまとい、数々の宇宙犯罪組織と戦い抜いてきた伝説の宇宙刑事――ギャバン。
宙刑学園は、そんなギャバンの精神と戦闘技術を受け継ぎ、未来の宇宙刑事を育てるために作られた場所だった。
しかし、この学園には一つだけ、他の学校とは大きく違うものがあった。
それは――。
ギャバンになれる者は、誰でもなれるわけではない。
毎年、入学式の日。
学園長によって名前を呼ばれた者。
その者だけが、ギャバンになる資格を与えられる。
そして今日――。
新たな一年生たちが、宙刑学園の大講堂に集まっていた。
何百人もの生徒たちが並ぶ中、その中に一人の少年がいた。
崎山宗太郎。
高校一年生。
この日、初めて宙刑学園に足を踏み入れた普通の少年だった。
宗太郎は周囲を見回しながら、少し緊張した様子で立っている。
宗太郎「すごいな……。これが宙刑学園か……」
目の前に広がる巨大な講堂。
壁には、歴代の宇宙刑事たちの記録が刻まれている。
その中でも、ひときわ大きく描かれているのは――。
銀色のコンバットスーツ。
宇宙刑事ギャバン。
宗太郎はその姿を見つめる。
宗太郎「……ギャバン」
その名前を口にした瞬間。
講堂の照明が一斉に消えた。
ザワザワしていた生徒たちも、一瞬で静かになる。
そして壇上に、一人の人物が現れた。
宙刑学園の学園長だった。
学園長はゆっくりと生徒たちを見渡す。
学園長「新入生諸君。今日、君たちはこの宙刑学園の門をくぐった」
講堂に響き渡る、重々しい声。
学園長「ここは普通の高校ではない」
学園長「この学園は、宇宙の平和を守るための宇宙刑事を育成する場所だ」
生徒たちの表情が引き締まる。
学園長「宇宙には、今もなお多くの犯罪者が存在している。人々の平和を脅かし、罪のない者たちを苦しめる者たちがいる」
学園長「その脅威から人々を守るため、我々は宇宙刑事を育てている」
宗太郎は真剣な表情で話を聞いていた。
しかし――。
学園長が次の言葉を発した瞬間。
講堂の空気が変わった。
学園長「そして、この学園に入学した者全員が、宇宙刑事ギャバンになれるわけではない」
生徒たちの間にざわめきが起こる。
「えっ……?」
「じゃあ、誰がなれるんだ?」
「試験とかあるのか?」
学園長は静かに手を上げる。
ざわめきが止まる。
学園長「ギャバンになれる者は、入学式において選ばれる」
宗太郎の目が大きく開く。
学園長「これより、今年度のギャバン候補生を発表する」
その言葉に、講堂にいた全員が息をのんだ。
誰もが、自分の名前が呼ばれることを期待している。
しかし同時に――。
自分が選ばれなかったらどうなるのか。
そんな不安もあった。
学園長が手元の資料を見る。
そして――。
一人目の名前を読み上げた。
学園長「崎山宗太郎」
宗太郎。
宗太郎「……え?」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
周囲の生徒たちが一斉に宗太郎を見る。
宗太郎「俺……?」
学園長がもう一度、はっきりと告げる。
学園長「崎山宗太郎。前へ」
宗太郎「は、はい!」
慌てて立ち上がる宗太郎。
緊張しながら壇上へ向かって歩いていく。
心臓が激しく鼓動していた。
宗太郎(俺が……ギャバンに……?)
壇上に立った宗太郎は、学園長の前に立つ。
学園長は宗太郎を見つめる。
学園長「崎山宗太郎。お前に、ギャバンの名を受け継ぐ資格を与える」
宗太郎は驚いた。
宗太郎「……俺に、本当に……?」
学園長「ああ」
宗太郎「でも、俺は……まだ何も知らないです。戦い方だって、宇宙刑事のことだって……」
学園長は静かに答える。
学園長「だからこそ、学ぶのだ。ここは、そのための学園なのだから」
宗太郎はしばらく黙っていた。
そして、ゆっくりとうなずく。
宗太郎「……分かりました」
宗太郎が壇上から下がる。
すると、学園長は次の名前を読み上げた。
学園長「川玉真司」
宗太郎とは少し離れた場所に、一人の少年が立っていた。
クールな表情。
周囲の視線を気にすることもなく、静かに前へ歩いていく。
真司「……」
宗太郎はその姿を見つめる。
宗太郎(あの人も……ギャバンに選ばれたのか)
真司は壇上に立つと、学園長を見る。
学園長「川玉真司。お前にも、ギャバンの名を受け継ぐ資格を与える」
真司は淡々と答えた。
真司「……分かりました」
宗太郎とは違い、驚いた様子もない。
まるで最初から自分が選ばれることを知っていたかのようだった。
そして――。
最後の名前が呼ばれる。
学園長「天野ひかり」
ひかり「……え?」
宗太郎と真司が振り返る。
そこには、一人の少女がいた。
明るい雰囲気の少女。
自分が呼ばれたことが信じられないように、何度も周囲を見回している。
ひかり「えっと……私?」
学園長がうなずく。
学園長「そうだ。天野ひかり。前へ」
ひかり「は、はい!」
ひかりが慌てて壇上へ向かう。
途中で少し足をもつれさせながらも、なんとか壇上にたどり着いた。
宗太郎は思わず苦笑する。
宗太郎「大丈夫かな……」
ひかりは学園長の前に立つ。
ひかり「えっと……私、本当にギャバンになれるんですか?」
学園長「ああ」
ひかり「わあ……!」
ひかりの顔が一気に明るくなる。
ひかり「すごい! 私、ギャバンになれるんだ!」
その姿を見て、宗太郎は少し笑った。
一方、真司は無表情のままひかりを見る。
真司「……」
こうして――。
今年度、ギャバンに選ばれた者は三人。
崎山宗太郎。
川玉真司。
天野ひかり。
しかし、この時。
三人はまだ互いの名前すら知らなかった。
もちろん、友達でもない。
仲間でもない。
ただ同じ入学式で、偶然ギャバンに選ばれた――。
「初対面の三人」
それだけだった。
学園長が三人を見つめる。
学園長「崎山宗太郎」
宗太郎「はい」
学園長「川玉真司」
真司「はい」
学園長「天野ひかり」
ひかり「はい!」
学園長「今日、この瞬間からお前たちはギャバン候補生となる」
学園長「そして、これより始まる学園生活の中で、ギャバンとしての使命を学んでもらう」
三人はそれぞれ学園長を見る。
学園長「だが、覚えておけ」
学園長の声が低くなる。
学園長「ギャバンとは、ただ強い者がなるものではない」
宗太郎の表情が変わる。
学園長「ギャバンとは、ただ戦える者がなるものでもない」
真司も静かに話を聞く。
学園長「宇宙刑事とは、人々の平和を守る者だ」
ひかりの笑顔が少し真剣になる。
学園長「誰かを守るために、自分自身が傷つくこともあるだろう」
学園長「それでもなお、誰かを守るために立ち上がれる者だけが――」
学園長は三人を見つめた。
学園長「真のギャバンとなることができる」
宗太郎は胸に手を当てる。
そして、心の中で静かに思った。
宗太郎(俺が……ギャバンになる)
まだ戦い方も分からない。
まだ宇宙刑事として何をすればいいのかも分からない。
それでも。
宗太郎(もし俺に、誰かを守れる力があるなら……)
宗太郎(俺は、その力を使いたい)
その隣で、真司は静かに前を見つめていた。
しかし、その瞳の奥には――。
誰にも知られていない、深い過去があった。
そしてひかりは――。
ひかり「ねえ!」
突然、宗太郎と真司に声をかける。
宗太郎と真司が振り返る。
ひかり「私たち、ギャバンに選ばれたんだよね?」
宗太郎「あ、うん。そうだね」
ひかり「じゃあさ!」
ひかりが笑顔になる。
ひかり「これからよろしくね!」
宗太郎は少し驚いた。
宗太郎「え?」
ひかり「だって、同じギャバンなんでしょ? だったら仲良くしたほうがいいじゃん!」
宗太郎「……そうだね」
宗太郎も笑う。
宗太郎「俺は崎山宗太郎。よろしく、えっと……」
ひかり「天野ひかり!」
宗太郎「天野さんだね」
ひかり「ひかりでいいよ!」
宗太郎「じゃあ……ひかりさん」
ひかり「うん!」
そして二人は、真司を見る。
宗太郎「君は?」
真司「……川玉真司」
宗太郎「川玉くんか。よろしく」
ひかり「よろしくね、真司くん!」
真司は二人を見る。
ほんの一瞬だけ。
その表情がわずかに揺れた。
しかし――。
真司「……ああ」
それだけだった。
三人はまだ知らない。
この出会いが、やがて宙刑学園そのものを揺るがす大事件へと繋がっていくことを。
そして――。
三人のギャバンが、同じ場所に立つことになる未来も。
さらに。
この日、ギャバンに選ばれなかった者たちの中に――。
その選択を恨み。
ギャバンという存在そのものを憎む者たちが現れることも。
そして、過去からやって来た謎の少年――。
崎山凶太郎。
彼が率いるリップオフギャバンが、三人の前に立ちはだかることも。
この時の三人には、まだ何も分からなかった。
ただ一つ確かなこと。
この日――。
宙刑学園に、三人の新たなギャバン候補生が誕生した。
そしてここから――。
−新世代のギャバン−
物語が始まる。
入学式から一夜明けた、翌日の朝。
宙刑学園の校舎には、新入生たちの声が響いていた。
昨日、入学式でギャバンに選ばれた三人。
崎山宗太郎。
川玉真司。
天野ひかり。
しかし――。
三人は昨日まで、互いに名前すら知らなかった。
当然、クラスが同じになったことも知らない。
そして今。
宗太郎は1年A組の教室で、自分の席に座っていた。
窓から差し込む朝の日差し。
周囲ではクラスメイトたちが、昨日の入学式について話している。
男子生徒A「なあ、昨日ギャバンに選ばれた三人って誰だったんだ?」
男子生徒B「確か、崎山ってやつと川玉ってやつと……女子が一人いたよな?」
女子生徒A「天野さんだよ。昨日、壇上に呼ばれてた子」
宗太郎はその会話を聞きながら、机に頬杖をついていた。
そして、窓の外を眺める。
宗太郎(ギャバンになれたのはいいけど……)
昨日のことを思い出す。
学園長から告げられた言葉。
『お前たちはギャバン候補生となる』
そして、自分に与えられることになったギャバンの力。
宗太郎は、まだその実感がなかった。
宗太郎(でも……俺、何をすればいいんだろ……)
宗太郎(昨日は入学式だったから、ギャバンのことを説明されただけだし……)
宗太郎(今日から普通に授業を受けるのかな?)
宗太郎(それとも、いきなり訓練とか……?)
宗太郎は不安そうに教室を見回す。
すると――。
ぎゅっ!!
突然。
後ろから誰かが宗太郎に抱きついた。
宗太郎「うわああああっ!?」
突然のことに、宗太郎の身体が思い切り跳ね上がる。
宗太郎「な、なに!?」
後ろから抱きついていた少女が、驚いたように声を上げる。
ひかり「わ! びっくりした!」
宗太郎「いやいやいや!! こっちがびっくりするって!!」
宗太郎は慌てて振り返る。
そこにいたのは――。
昨日、入学式でギャバンに選ばれた少女。
天野ひかりだった。
ひかりは宗太郎の顔を見て、きょとんとしている。
ひかり「え?」
宗太郎「え?じゃないよ! いきなり後ろから抱きついてきたら、誰だってびっくりするだろ!」
ひかり「そうかな?」
宗太郎「そうだよ!」
ひかり「でも、昨日会ったじゃん!」
宗太郎「昨日は入学式で会っただけだよ! それに、ちゃんと話したのも少しだけだし!」
ひかり「でも名前は知ってるよ!」
ひかりはニコニコしながら宗太郎を見る。
ひかり「崎山宗太郎くん!」
宗太郎「……」
ひかり「ね?」
宗太郎「いや、まあ……そうだけど……」
ひかり「私は天野ひかり!」
宗太郎「昨日聞いたよ!」
ひかり「じゃあ、今日から友達ね!」
宗太郎「えっ!?」
宗太郎の目が点になる。
ひかり「よろしく、宗太郎くん!」
宗太郎「ちょっと待って! 話が早すぎない!?」
ひかり「そう?」
宗太郎「そうだよ! 昨日初めて会って、今日いきなり友達って……」
ひかり「じゃあ、友達じゃなくて……」
ひかりが少し考える。
ひかり「ギャバン仲間!」
宗太郎「ギャバン仲間……?」
ひかり「うん! 私たち、ギャバンに選ばれた三人なんでしょ?」
宗太郎は少し考える。
確かに。
昨日の入学式で名前を呼ばれたのは、宗太郎、ひかり、そしてもう一人。
川玉真司。
宗太郎は教室を見回す。
宗太郎「あれ? そういえば……」
ひかり「どうしたの?」
宗太郎「もう一人のギャバン候補生って、まだ来てないのかな?」
ひかりも教室を見回す。
ひかり「えっと……真司くんだよね?」
宗太郎「うん」
その瞬間。
教室の後ろのドアが開いた。
ガラッ――。
二人が振り返る。
そこには、一人の少年が立っていた。
川玉真司。
真司は教室の中を一度見回す。
そして、宗太郎とひかりを見る。
真司「……」
ひかりがすぐに手を振る。
ひかり「おはよう! 真司くん!」
真司は少しだけ眉を動かした。
真司「……おはよう」
宗太郎も立ち上がる。
宗太郎「おはよう、川玉くん」
真司「ああ」
真司は自分の席へ向かおうとする。
しかし――。
ひかりがすぐに呼び止める。
ひかり「ねえねえ、真司くん!」
真司「……何だ?」
ひかり「私たち、同じクラスだったんだね!」
真司「そうだな」
ひかり「すごくない?」
真司「……別に」
ひかり「えーっ! 冷たい!」
真司「同じクラスになっただけだろ」
ひかり「でも、昨日ギャバンに選ばれた三人が同じクラスなんだよ?」
真司「だから何だ」
ひかり「だから……」
ひかりが宗太郎を見る。
宗太郎もひかりを見る。
そして――。
ひかり「私たち、三人でギャバンチームじゃん!」
宗太郎「ギャバンチーム……」
真司「……」
真司の表情が少し険しくなる。
真司「俺は、そんなものに入った覚えはない」
ひかり「え?」
真司「俺は俺だ。君たちと馴れ合うつもりはない」
教室の空気が少しだけ変わった。
宗太郎が真司を見る。
宗太郎「川玉くん……」
真司「昨日も言っただろう。ギャバンになるのは俺たち三人だ」
ひかり「うん!」
真司「だが、だからといって三人で行動する必要はない」
ひかり「なんで?」
真司はひかりを見る。
真司「ギャバンは一人でいい」
宗太郎の表情が少し変わる。
ひかりはきょとんとしている。
ひかり「……一人?」
真司「ああ」
宗太郎「でも、俺たち三人ともギャバンになるんだろ?」
真司「それがどうした」
宗太郎「いや……だったら、一緒に頑張ったほうがいいんじゃないかな」
真司「必要ない」
宗太郎「必要ないって……」
真司は自分の席に座る。
真司「俺は一人で十分だ」
その言葉を聞いて、宗太郎は黙ってしまう。
ひかりだけが真司の顔を見ている。
そして――。
ひかり「……真司くん」
真司「何だ」
ひかり「もしかして……寂しいの?」
真司「……は?」
ひかり「だって、一人でいいって言う人って、実は一人が寂しいって聞いたことあるよ!」
真司「誰に聞いた」
ひかり「昨日テレビで!」
真司「……くだらない」
ひかり「じゃあ、友達になろうよ!」
真司「断る」
ひかり「即答!?」
宗太郎は思わず笑ってしまう。
宗太郎「ははは……」
真司が宗太郎を見る。
真司「何がおかしい」
宗太郎「いや……ごめん。でも、ひかりって面白いなと思って」
ひかり「でしょ?」
真司「自分で言うな」
ひかり「じゃあ、宗太郎くん!」
宗太郎「ん?」
ひかり「今日、一緒に学園探検しようよ!」
宗太郎「学園探検?」
ひかり「そう! だって私たち、昨日入学したばっかりだよ? まだ校舎の中も全然知らないじゃん!」
宗太郎は少し考える。
確かに、ギャバンに選ばれたとはいえ、まだ学園について知らないことばかりだ。
宗太郎「それもいいかもね」
ひかり「やった!」
宗太郎「じゃあ、放課後に――」
その瞬間。
教室のスピーカーから、校内放送が流れた。
『ギャバン候補生、崎山宗太郎、川玉真司、天野ひかりの三名は、至急、特別訓練室まで来るように』
宗太郎とひかりが顔を見合わせる。
宗太郎「……」
ひかり「……」
そして二人は、ゆっくりと真司を見る。
真司は立ち上がる。
真司「……どうやら、ギャバン候補生としての最初の仕事らしいな」
宗太郎「いきなり?」
ひかり「学園探検は?」
真司「そんなものは後回しだ」
ひかり「えー……」
宗太郎は苦笑する。
宗太郎「まあ、仕方ないよ。行こう」
三人は教室を出る。
宗太郎が先頭。
その後ろにひかり。
そして少し離れて真司。
まだ三人の距離は遠い。
この時点では、三人はまだ本当の仲間ではない。
ただ――。
この日の放課後。
三人は初めて、同じ場所でギャバンとしての訓練を受けることになる。
三人が案内されたのは、校舎の地下深くにある巨大な訓練施設だった。
扉が開く。
ウィィィィン――。
中に入った宗太郎、ひかり、真司の三人は、思わず足を止める。
そこには、普段の教室とはまったく違う光景が広がっていた。
巨大なスクリーン。
壁一面に並んだコンピューター。
そして、中央には広大な戦闘訓練フィールド。
床には特殊な素材が使われており、壁にはいくつもの標的が設置されている。
宗太郎「す、すごい……!」
ひかり「わあああ!! 何ここ!?」
ひかりは目を輝かせながら、訓練室の中を見回している。
ひかり「これ、本当に学校の中!?」
宗太郎「俺も信じられない……」
一方、真司は冷静に施設を見回していた。
真司「……なるほど」
宗太郎「川玉くん、こういうの詳しいの?」
真司「ある程度はな」
ひかり「すごーい! じゃあ、これ何?」
ひかりが近くにあった機械を指差す。
真司「知らない」
ひかり「えっ」
真司「俺が知っているのは、ギャバンに関する基本的な知識だけだ」
ひかり「じゃあ、さっきの『なるほど』は何だったの?」
真司「……雰囲気だ」
ひかり「雰囲気!?」
宗太郎が思わず吹き出す。
宗太郎「はははっ!」
真司「崎山」
宗太郎「ご、ごめん!」
すると――。
パンッ!!
手を叩く音が響いた。
三人が振り返る。
そこには、一人の男性教師が立っていた。
宙刑学園でギャバン候補生たちを指導する教官。
厳しそうな顔をしているが、どこか楽しそうな雰囲気もある。
先生「よし! 三人とも揃ったな!」
宗太郎「先生!」
先生「今日からお前たち三人には、ギャバン候補生としての特別訓練を受けてもらう!」
ひかりが手を上げる。
ひかり「先生!」
先生「何だ、天野」
ひかり「私たち、今日から何をするんですか?」
先生はニヤリと笑う。
先生「決まっているだろう」
先生が三人の前に歩いてくる。
そして――。
先生「それじゃ……蒸着の練習だ!」
宗太郎とひかりが同時に反応する。
宗太郎・ひかり「蒸着?」
二人が顔を見合わせる。
宗太郎「蒸着って……何?」
ひかり「私も知らない!」
先生が頭を抱える。
先生「お前たち……昨日ギャバンに選ばれたばかりとはいえ、蒸着も知らないのか?」
宗太郎「すみません……」
ひかり「私、昨日まで普通の高校生だったので!」
先生「開き直るな!」
ひかり「はい!」
真司が静かに口を開く。
真司「……蒸着とは」
宗太郎とひかりが真司を見る。
真司「ギャバンが戦闘時に使用するコンバットスーツを、特殊な転送システムによって瞬時に装着することだ」
宗太郎「えっ?」
真司「コンバットスーツは通常、別の場所に保管されている」
ひかり「じゃあ、着替えに行くの?」
真司「違う」
ひかり「じゃあ、どうするの?」
真司が自分の腕を見る。
真司「蒸着する」
ひかり「だから、それが分からないんだって!」
真司「……」
宗太郎が困った顔をする。
宗太郎「川玉くん、もう少し分かりやすく説明してくれない?」
真司「……つまりだ」
真司が三人の前に立つ。
真司「俺たちが今着ているのは、普通の制服だ」
宗太郎「うん」
真司「だが、戦闘時にはこの制服では戦えない」
ひかり「そりゃそうだよね」
真司「そこで、ギャバンのコンバットスーツを転送する」
宗太郎「転送?」
真司「ああ」
真司「宇宙空間に設置された専用のシステムから、俺たちのいる場所へコンバットスーツを転送する」
ひかり「宇宙から!?」
真司「ああ」
ひかり「すごっ!」
宗太郎「じゃあ、俺たちが『蒸着』って言ったら……」
真司「コンバットスーツが転送される」
宗太郎「それで、俺たちの体に装着される?」
真司「その通りだ」
ひかりが目を輝かせる。
ひかり「じゃあ、変身みたいなもの?」
真司「……まあ、似たようなものだ」
ひかり「じゃあ私、やってみたい!」
先生がニヤリとする。
先生「そう言うと思ったぜ」
先生が訓練室中央のスクリーンを操作する。
すると巨大スクリーンに、一人の宇宙刑事の姿が映し出された。
銀色のコンバットスーツ。
その姿は――。
ギャバン。
宗太郎はスクリーンを見つめる。
宗太郎「……これが」
先生「ああ」
先生「宇宙刑事ギャバンのコンバットスーツだ」
ひかりが興奮する。
ひかり「かっこいい……!」
真司も静かに見つめる。
しかし、その表情にはどこか複雑なものがあった。
先生は三人を見る。
先生「ギャバンのコンバットスーツは、ただの防具じゃない」
先生「お前たちの身体能力を大幅に強化し、宇宙犯罪者と戦うための力を与える」
先生「だがな――」
先生の表情が真剣になる。
先生「スーツを着たからといって、すぐに強くなれるわけじゃない」
宗太郎が真剣に聞く。
先生「コンバットスーツは、お前たちの動きをサポートする」
先生「だが、戦うのはあくまでお前たち自身だ」
先生「蒸着した瞬間から、戦いが始まる」
宗太郎は自分の拳を見る。
宗太郎(俺が……このスーツを着て戦う)
ひかりは自分の両手を見つめる。
ひかり「私、本当にギャバンになるんだ……」
真司は黙っている。
先生が三人の前に立つ。
先生「さあ、説明は終わりだ」
宗太郎「え?」
先生「まずは一人ずつ蒸着してもらう」
ひかり「一人ずつ!?」
先生「ああ」
先生「蒸着はギャバンにとって基本中の基本だ」
先生が宗太郎を見る。
先生「崎山。お前からだ」
宗太郎「俺!?」
先生「そうだ」
宗太郎「ちょ、ちょっと待ってください! 蒸着って、どうやるんですか!?」
先生が宗太郎に一つの装置を渡す。
先生「簡単だ」
宗太郎「簡単……?」
先生「ギャバンブレスを構え、叫べ」
先生が宗太郎を見る。
先生「――蒸着!!と」
宗太郎は装置を見る。
そして――。
宗太郎「……本当にこれだけ?」
先生「ああ」
宗太郎「なんか、失敗しそうなんだけど……」
ひかり「大丈夫だよ! 宗太郎くんならできるって!」
宗太郎「ひかりさん……」
ひかり「頑張って!」
宗太郎「うん!」
宗太郎はゆっくりとギャバンブレスを構える。
その姿を見て、真司も静かに見つめる。
先生が腕時計を見る。
先生「よし……」
先生「崎山宗太郎。蒸着開始!」
宗太郎が息を吸う。
そして――。
宗太郎「……蒸着!!」
その瞬間。
訓練室の空気が震えた。
巨大なエネルギーが宗太郎の周囲に発生する。
ひかり「わあっ!!」
宗太郎「うわっ!?」
銀色の光が宗太郎を包み込む。
そして――。
コンバットスーツが、まるで光の中から現れるように宗太郎の身体へ転送されていく。
腕。
胸。
脚。
そして最後に――。
頭部。
ガシャン!!
全身にコンバットスーツが装着された。
訓練室に立っていたのは――。
レッドギャバン。
宗太郎自身も驚いている。
宗太郎「……これが……ギャバン……」
先生が腕時計を見る。
そして――。
先生「蒸着タイム……」
一瞬の沈黙。
先生「0.05秒!!」
宗太郎「えっ!?」
その時。
訓練室のスピーカーから、どこからともなくナレーションが流れ始める。
ナレーター「レッドギャバンがコンバットスーツを蒸着するタイムは、わずか0.05秒にすぎない」
宗太郎が振り返る。
宗太郎「えっ!? 今の誰!?」
ひかりも驚いている。
ひかり「誰か喋った!?」
真司は冷静に答える。
真司「……ナレーションだ」
宗太郎「ナレーション!?」
先生がニヤリと笑う。
先生「では――」
訓練室のスクリーンに、蒸着の様子が映し出される。
先生「蒸着プロセスを、もう一度見てみよう」
宗太郎「もう一回やるんですか!?」
先生「違う! 映像で見るんだ!」
宗太郎「あ、そういうことか……」
ひかりがレッドギャバンとなった宗太郎を見つめる。
ひかり「……宗太郎くん」
宗太郎「ん?」
ひかり「すごく……」
ひかりの目が輝く。
ひかり「かっこいい!!」
宗太郎「えっ……」
宗太郎が少し照れる。
その隣で、真司が静かに見つめている。
先生が真司を見る。
先生「次は川玉、お前だ」
真司は立ち上がる。
そして――。
自分のギャバンブレスを構える。
真司「……」
宗太郎は思わず声をかける。
宗太郎「川玉くん!」
真司が振り返る。
宗太郎「頑張って!」
真司は一瞬だけ宗太郎を見る。
そして――。
真司「……ああ」
真司が前を向く。
真司「蒸着」
その瞬間――。
青い光が訓練室を包み込んだ。
ナレーター「ブルーギャバンがコンバットスーツを蒸着するタイムは、わずか0.05秒にすぎない」
宗太郎が驚く。
宗太郎「すごい……!」
ひかりが目を輝かせる。
ひかり「真司くんもギャバンになった!」
光が消える。
そこに立っていたのは――。
ブルーギャバン。
真司は自分の拳を握る。
真司「……これが、ギャバン」
そして最後に――。
先生がひかりを見る。
先生「天野。次はお前だ」
ひかりが元気よく手を上げる。
ひかり「はいっ!!」
ひかりがギャバンブレスを構える。
ひかり「よーし……!」
宗太郎が声をかける。
宗太郎「ひかりさん、頑張って!」
ひかりが振り返る。
ひかり「うん!」
そして――。
ひかり「蒸着!!」
黄色い光が訓練室を包み込む。
ナレーター「イエローギャバンがコンバットスーツを蒸着するタイムは――」
ひかり「わあああ!!」
ナレーター「わずか0.05秒にすぎない。では――」
ひかり「きゃあああ!!」
ナレーター「蒸着プロセスを――」
ひかり「すごーい!!」
ナレーター「もう一度見てみよう」
光が消える。
そこに立っていたのは――。
イエローギャバン。
宗太郎、真司、ひかり。
三人のギャバンが、初めて同じ訓練室に揃った。
先生が三人を見つめる。
先生「……これが、お前たちの第一歩だ」
三人は互いの姿を見る。
宗太郎が拳を握る。
宗太郎「俺たち……本当にギャバンになったんだな」
ひかりが笑顔になる。
ひかり「うん!」
真司は二人を見つめる。
真司「……」
まだ、この時の真司は知らない。
この二人と共に戦うことになる未来も。
そして――。
一度はこの二人を敵に回し、**「ギャバンは一人でいい」**と信じ込むことになる未来も。
今はまだ――。
三人はただ、同じ訓練室に立つ。
三人のギャバン候補生だった。