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特別訓練室での蒸着訓練を終えた三人は、校舎へと続く廊下を歩いていた。
ついさっきまで、三人はギャバンのコンバットスーツを蒸着する訓練をしていた。
宗太郎はまだ、自分が本当にギャバンになったという実感が湧いていない。
ひかりはというと――。
ひかり「ねえねえ、宗太郎くん!」
宗太郎「ん?」
ひかり「さっきの蒸着、すごかったね!」
宗太郎「うん。俺もびっくりしたよ」
ひかり「私も! あんなに一瞬でスーツが装着されるなんて思わなかった!」
宗太郎「しかも、あのナレーション……」
ひかり「うん!」
ひかりが笑顔になる。
ひかり「『では蒸着プロセスをもう一度見てみよう』って!」
宗太郎「なんで俺たちの蒸着をもう一回見る必要があるんだろう……」
ひかり「でも、かっこよかったよ!」
宗太郎「そうかな?」
ひかり「うん! 宗太郎くんのレッドギャバン!」
宗太郎は少し照れながら頭をかく。
宗太郎「……ありがとう」
その二人の少し後ろを、真司が歩いていた。
真司「……」
ひかりが振り返る。
ひかり「ねえ、真司くんはどうだった?」
真司「何がだ」
ひかり「蒸着だよ!」
真司「別に」
ひかり「えー!」
宗太郎「川玉くんらしいな……」
真司「お前たちは騒ぎすぎだ」
ひかり「だって、私たち今日初めてギャバンになったんだよ!?」
宗太郎「確かに……」
宗太郎が自分の手を見る。
宗太郎「俺たち、これからどうなるんだろうな」
ひかり「どうなるって?」
宗太郎「だって、ギャバンになるためにこの学園に来たけど、実際にギャバンになったら何をするのか、まだよく分からないし」
ひかり「ああ……」
ひかりも少し考える。
ひかり「宇宙犯罪者と戦うんじゃない?」
宗太郎「それはそうなんだろうけど……」
ひかり「じゃあ、宇宙に行くのかな?」
宗太郎「いきなり!?」
ひかり「宇宙刑事なんだから、宇宙に行くんじゃない?」
宗太郎「……まあ、確かに」
真司が二人の会話に口を挟む。
真司「ギャバンの役目は、宇宙犯罪を取り締まることだ」
宗太郎「川玉くん、やっぱり詳しいんだね」
真司「これくらい常識だ」
ひかり「じゃあ、今すぐ宇宙犯罪者と戦うこともあるのかな?」
真司「可能性はある」
宗太郎「……俺、ちゃんと戦えるかな」
宗太郎は少し不安そうな顔をする。
宗太郎「さっきの訓練でも、蒸着しただけで何もしてないし……」
ひかり「大丈夫だよ!」
ひかりが宗太郎の背中をポンと叩く。
ひかり「これから練習すればいいんだから!」
宗太郎「ひかり……」
ひかり「私たち、今日からギャバンなんだから!」
宗太郎「……そうだね」
宗太郎が笑う。
その時だった。
廊下の向こう側から――。
「おい!! 聞いたか!?」
「何が!?」
「学園の中に、茶色いギャバン軍団が現れたらしいぞ!!」
「茶色いギャバン!?」
「そうだ! 何人もいるらしい!」
その言葉を聞いた三人が同時に振り返る。
宗太郎「……え?」
ひかり「茶色いギャバン?」
真司「……何だ、それは」
廊下を走っていた生徒たちが、三人の横を通り過ぎていく。
宗太郎「ちょっと待って!」
宗太郎が一人の生徒を呼び止める。
生徒「な、何だ?」
宗太郎「今、茶色いギャバンって言ってたけど……何があったの?」
生徒は慌てた様子で答える。
生徒「中庭だ! 中庭に突然、変な連中が現れたんだ!」
ひかり「変な連中?」
生徒「ああ! 全員、ギャバンみたいなコンバットスーツを着てるんだ!」
宗太郎とひかりが顔を見合わせる。
宗太郎「ギャバンみたいな……?」
生徒「でも、色が茶色なんだよ! しかも、何人もいる!」
ひかり「それって……」
真司が静かに口を開く。
真司「……行くぞ」
宗太郎「川玉くん?」
真司「俺たちがギャバンに選ばれた直後だ。もし本当にギャバンの偽物が現れたのなら、放っておくわけにはいかない」
宗太郎がうなずく。
宗太郎「分かった」
ひかりも手を上げる。
ひかり「私も行く!」
三人は急いで中庭へ向かった。
――宙刑学園・中庭――
中庭に到着した三人。
そこには、すでに大勢の生徒たちが集まっていた。
しかし――。
誰も中庭の中心には近づこうとしない。
宗太郎たちが人混みをかき分けて進んでいく。
宗太郎「すみません! 通してください!」
ひかり「ごめんなさい、ちょっと通してー!」
真司「……」
そして――。
三人が人混みの先に出た瞬間。
その目に飛び込んできた光景に、宗太郎は言葉を失った。
宗太郎「……何だ、あれ」
中庭の中央。
そこに立っていたのは――。
大量のギャバンによく似た姿をした者たち。
しかし、そのコンバットスーツは――。
茶色。
銀色のギャバンとは明らかに違う。
その数は一人や二人ではない。
何十人もの「茶色いギャバン」が、ずらりと並んでいる。
ひかりが目を丸くする。
ひかり「本当に茶色い……」
宗太郎「何なんだよ、あいつら……」
真司はその姿をじっと見つめていた。
真司「……偽物か」
その瞬間。
茶色いギャバン軍団の一人が前へ出た。
???「聞こえなかったか?」
声が中庭に響き渡る。
???「この学園は、今日から我々のものだ」
生徒たちがざわめく。
「何言ってるんだ!?」
「ここは宙刑学園だぞ!」
「ふざけるな!」
すると、茶色いギャバンの集団が一斉に振り返った。
その瞬間。
生徒たちが怯える。
???「我々は、ギャバンではない」
宗太郎が眉をひそめる。
宗太郎「じゃあ……何なんだ?」
茶色いギャバンの男が、ゆっくりと宗太郎たちを見る。
???「我々の名は――」
その男が腕を広げる。
???「リップオフギャバン!!」
中庭に、その名が響き渡った。
リップオフギャバン。
それは、宙刑学園でギャバンに選ばれなかった者たちが結成した、学園犯罪組織。
ギャバンになれなかった。
その事実を恨み。
選ばれた者たちを憎み。
そして――。
自分たちこそが、本物のギャバンになるのだと信じる者たち。
宗太郎は目の前の軍団を見る。
宗太郎「リップオフギャバン……」
ひかり「ギャバンの……偽物?」
真司「……」
リップオフギャバンの男が笑う。
???「昨日、選ばれたばかりの三人のギャバン候補生……」
宗太郎たちの表情が変わる。
宗太郎「……俺たちを知ってるのか?」
???「もちろんだ」
男が三人を指差す。
???「崎山宗太郎」
宗太郎「!」
???「川玉真司」
真司の目が鋭くなる。
???「天野ひかり」
ひかり「私たちの名前まで……」
男は不気味に笑う。
???「昨日の入学式で、ギャバンに選ばれた三人」
???「お前たちがギャバンに選ばれた瞬間、我々は全てを失った」
宗太郎が一歩前に出る。
宗太郎「……違う」
???「何?」
宗太郎「俺たちは、お前たちから何も奪ってない!」
???「黙れ!!」
男が怒鳴る。
???「お前たちは選ばれた!!」
???「我々は選ばれなかった!!」
???「同じ入学式に立っていたのに!!」
???「なぜお前たちなんだ!!」
宗太郎は言葉を失う。
ひかりも、複雑な表情を浮かべる。
しかし――。
真司だけは、冷静にリップオフギャバンを見つめていた。
真司「……くだらない」
宗太郎とひかりが振り返る。
宗太郎「川玉くん?」
真司「ギャバンになれなかったからといって、犯罪組織を作る理由にはならない」
???「何だと?」
真司「ギャバンになりたいのなら、努力すればいい」
???「……」
真司「選ばれなかったことを他人のせいにするな」
男の拳が震える。
???「貴様……!!」
ひかりが慌てて真司を見る。
ひかり「真司くん! 挑発しちゃダメだよ!」
真司「事実を言っただけだ」
宗太郎「川玉くん……」
しかし。
その時。
リップオフギャバンの軍団が一斉に動いた。
ザッ!!
数十人の茶色いギャバンが、三人を取り囲む。
ひかり「えっ……」
宗太郎「囲まれた!?」
???「だったら――」
男が腕を上げる。
???「本物のギャバンが、どれほどの力を持っているのか!!」
???「我々が確かめてやる!!」
宗太郎がギャバンブレスを構える。
宗太郎「……ひかり!」
ひかり「うん!」
真司も静かに前へ出る。
宗太郎「川玉くん!」
真司は一瞬、宗太郎を見る。
そして――。
真司「……蒸着」
青い光が走る。
ナレーター「ブルーギャバンがコンバットスーツを蒸着するタイムは、わずか0.05秒にすぎない」
ひかり「私も!」
ひかり「蒸着!!」
黄色い光が輝く。
ナレーター「イエローギャバンがコンバットスーツを蒸着するタイムは――」
宗太郎「蒸着!!」
赤い光が中庭を包む。
ナレーター「レッドギャバンがコンバットスーツを蒸着するタイムは、わずか0.05秒にすぎない」
三人が並び立つ。
レッドギャバン
ブルーギャバン
イエローギャバン
それを見たリップオフギャバンたちが、一斉に構える。
宗太郎「俺たちは……」
ひかり「3人のギャバン!」
真司が前を向く。
真司「……来い」
そして――。
宙刑学園で初めて。
3人の新たなギャバンと、リップオフギャバンの戦いが始まった。
三人のギャバンと、数十人のリップオフギャバン。
両者が向かい合う。
中庭には、張り詰めた空気が流れていた。
レッドギャバンとなった宗太郎は、拳を握りしめる。
宗太郎「……来るなら来い!」
イエローギャバンのひかりも、慣れないながらも構えを取る。
ひかり「私たちだって、ギャバンなんだから!」
ブルーギャバンの真司は、無言でリップオフギャバンたちを見据えていた。
真司「……」
リップオフギャバンの一人が叫ぶ。
リップオフギャバンA「行くぞ!!」
リップオフギャバンB「ギャバンに選ばれたお前たちを倒せ!!」
リップオフギャバンC「俺たちこそが、真のギャバンだ!!」
一斉に走り出す。
宗太郎「来た!!」
宗太郎が身構える。
ひかりも拳を握る。
真司も一歩前へ出た。
その瞬間――。
ズドォォォォォン!!
突然。
凄まじい衝撃波が中庭を駆け抜けた。
宗太郎「うわっ!?」
ひかり「きゃあっ!!」
真司「……何!?」
三人が一斉に振り返る。
すると――。
ドサッ!!
ドサッ!!
ドサッ!!
先ほどまで三人に向かって走っていたリップオフギャバンたちが、次々と地面に倒れていく。
宗太郎「……え?」
宗太郎が呆然とする。
ひかり「え、ええっ!?」
ひかりも慌てて周囲を見る。
ひかり「何!? 何が起こったの!?」
真司は倒れたリップオフギャバンたちを見つめる。
真司「……攻撃された?」
しかし――。
三人の誰も、何が起こったのか分からない。
リップオフギャバンたちは、まるで一瞬で何者かに吹き飛ばされたかのように、中庭のあちこちに倒れている。
宗太郎「俺たち……まだ何もしてないよな?」
ひかり「うん……」
宗太郎「じゃあ、誰が……」
その時。
中庭に――。
コツ……。
一つの足音が響いた。
コツ……。
また一つ。
三人が振り返る。
倒れたリップオフギャバンたちの向こう。
中庭の入り口に――。
一人の少年が立っていた。
高校生くらいの少年。
黒い髪。
冷たい目。
その表情には、感情らしい感情がほとんど見えない。
宗太郎がその少年を見る。
宗太郎「……誰だ?」
ひかりも首を傾げる。
ひかり「この学園の生徒……?」
真司は警戒するように構える。
真司「……違う」
宗太郎「え?」
真司「あいつは普通の生徒じゃない」
少年がゆっくりと歩いてくる。
倒れているリップオフギャバンたちには目もくれない。
ただ――。
三人のギャバンだけを見ている。
???「……」
宗太郎は一歩前に出る。
宗太郎「お前……何者なんだ?」
少年は答えない。
ただ、宗太郎をじっと見つめている。
その視線に、宗太郎は思わず身構える。
宗太郎「……何なんだよ」
すると――。
少年の口元が、ほんの少しだけ動いた。
???「……崎山宗太郎」
宗太郎が驚く。
宗太郎「……!」
ひかり「宗太郎くんの名前……知ってる?」
宗太郎「なんで俺の名前を……?」
少年は宗太郎から視線を外さない。
???「ようやく……見つけた」
宗太郎「何を言ってるんだ?」
少年が一歩前に出る。
???「お前を探していた」
真司が前に出る。
真司「何者だ」
少年が真司を見る。
その目に――。
わずかな苛立ちが浮かんだ。
???「……川玉真司」
真司の目が鋭くなる。
真司「……!」
ひかり「真司くんの名前まで……」
少年は最後にひかりを見る。
???「天野ひかり」
ひかりが驚く。
ひかり「私の名前も……」
宗太郎が叫ぶ。
宗太郎「お前、俺たちのことを知ってるのか!?」
少年はしばらく黙っていた。
そして――。
ゆっくりと口を開く。
???「知っているさ」
???「お前たち三人が、昨日ギャバンに選ばれたことも」
???「今日、蒸着の訓練を受けたことも」
???「そして――」
少年の視線が宗太郎に向けられる。
???「お前が、レッドギャバンになったことも」
宗太郎が一歩後ずさる。
宗太郎「……何者なんだ、お前」
少年は答える。
???「俺の名前は――」
その瞬間。
倒れていたリップオフギャバンの一人が、苦しそうに起き上がる。
リップオフギャバン「お、お前……!!」
少年が振り返る。
???「……」
リップオフギャバンが少年を指差す。
リップオフギャバン「なぜだ……!!」
リップオフギャバン「なぜ俺たちを攻撃した!?」
少年は冷たい目で見下ろす。
???「お前たちは邪魔だ」
リップオフギャバン「な……何だと!?」
???「俺の目的は、お前たちではない」
少年が宗太郎を見る。
???「俺の目的は――崎山宗太郎だ」
宗太郎が驚く。
宗太郎「俺……?」
ひかり「宗太郎くんを?」
真司が警戒する。
真司「……宗太郎から離れろ」
少年が真司を見る。
???「……お前も邪魔だ」
真司「何?」
その瞬間。
少年の身体から、凄まじいエネルギーが放たれた。
バシュゥゥゥン!!
真司が吹き飛ばされる。
真司「ぐっ……!!」
宗太郎「川玉くん!!」
宗太郎が駆け寄ろうとする。
しかし――。
少年が宗太郎の前に立つ。
???「……来い」
宗太郎「……!」
少年の周囲に、黒いエネルギーが集まっていく。
ひかりが叫ぶ。
ひかり「宗太郎くん!! 逃げて!!」
宗太郎「でも……!」
少年が腕を掲げる。
すると――。
黒い光が少年の身体を包み込んだ。
???「俺は――」
光が消える。
そこに立っていたのは――。
銀色のギャバンとは違う。
黒と赤を基調とした、禍々しいコンバットスーツ。
その姿を見た宗太郎は、息をのむ。
宗太郎「……ギャバン……?」
ひかり「違う……」
真司が立ち上がり、少年を睨みつける。
真司「……あれはギャバンではない」
少年はゆっくりと右腕を構える。
???「俺は――」
そして。
その名を告げる。
???「ハンターギャバンキラー」
宗太郎が驚く。
宗太郎「ハンター……ギャバンキラー……?」
ハンターギャバンキラーが、宗太郎を見つめる。
ハンターギャバンキラー「そうだ」
ハンターギャバンキラー「俺はギャバンを狩る者」
宗太郎が拳を握る。
宗太郎「だったら……俺たちはお前を止める!!」
ひかりも構える。
ひかり「宗太郎くん!」
真司も立ち上がる。
三人のギャバンが並び立つ。
しかし――。
ハンターギャバンキラーは、三人を見て笑った。
ハンターギャバンキラー「……三人か」
ハンターギャバンキラー「ならば――」
ハンターギャバンキラーが宗太郎を指差す。
ハンターギャバンキラー「まずは、お前から消してやる」
宗太郎「……!」
そして、その時。
ハンターギャバンキラーの素顔を見た宗太郎は――。
なぜか、自分とよく似ているような気がした。
宗太郎「……お前……」
宗太郎「俺と……似てないか?」
その言葉に。
ハンターギャバンキラーが――。
初めて表情を変えた。
ハンターギャバンキラー「……」
ほんの一瞬。
その目に――。
怒りとも悲しみともつかない感情が浮かぶ。
そして、少年は静かに呟いた。
???「……当然だ」
宗太郎「え?」
少年が――。
自らの名前を告げる。
???「俺の名前は……崎山凶太郎」
宗太郎の目が見開かれる。
宗太郎「……崎山?」
凶太郎は冷たく笑う。
凶太郎「そうだ」
凶太郎「お前と同じ――」
一拍。
凶太郎「崎山という名を持つ者だ」
中庭に、静寂が訪れる。
宗太郎はまだ知らない。
この少年が――。
「過去から来た謎の高校生」
そして。
自分自身を狙う、最大の敵となることを。
凶太郎「……崎山宗太郎」
凶太郎「お前は俺が――消す」
その瞬間。
宙刑学園を巡る、新たな戦いの幕が上がった。
ハンターギャバンキラー――崎山凶太郎。
その正体を名乗った少年を前に、三人のギャバンは動けずにいた。
いや。
正確には――。
戦うことすらできない。
凶太郎の周囲には、黒いエネルギーが渦巻いている。
その圧倒的な威圧感に、宗太郎は思わず拳を握りしめた。
宗太郎「……お前が、崎山凶太郎……」
凶太郎「そうだ」
宗太郎「俺と同じ『崎山』……」
凶太郎「その名前に意味があるのか?」
宗太郎「……いや」
宗太郎は首を振る。
宗太郎「でも……お前が俺を狙ってる理由が分からない!」
凶太郎は冷たい目で宗太郎を見る。
凶太郎「理由なら、いずれ分かる」
宗太郎「今教えろよ!」
凶太郎「……」
凶太郎は答えない。
そして――。
ゆっくりと手を上げる。
真司「……来るぞ」
真司が警告した瞬間。
ドォォォォォン!!
凶太郎から凄まじいエネルギーが放たれた。
宗太郎「うわあああっ!!」
三人が一斉に吹き飛ばされる。
ひかり「きゃあああっ!!」
真司「ぐっ……!」
三人は地面を転がる。
宗太郎が立ち上がろうとするが――。
宗太郎「くっ……!」
足に力が入らない。
凶太郎がゆっくりと歩いてくる。
凶太郎「……弱いな」
宗太郎「何だと……?」
凶太郎「これがギャバンか」
凶太郎は三人を見下ろす。
凶太郎「こんな程度の力しか持たない者が、ギャバンを名乗るのか」
真司が立ち上がる。
真司「……お前に、ギャバンを語る資格はない」
凶太郎「何?」
真司「俺たちはまだギャバンとしての訓練を始めたばかりだ」
真司「それでも……」
真司が拳を握る。
真司「お前に負けるつもりはない」
凶太郎が真司を見る。
凶太郎「……面白い」
その瞬間。
凶太郎が一気に距離を詰めた。
真司「!」
ドンッ!!
凶太郎の拳が真司を吹き飛ばす。
真司「ぐあっ!!」
宗太郎「川玉くん!!」
真司が地面を転がる。
ひかりが駆け寄る。
ひかり「真司くん、大丈夫!?」
真司「……俺はいい」
真司が立ち上がろうとする。
しかし――。
凶太郎が二人の前に立ちはだかった。
凶太郎「逃がすと思うか?」
宗太郎「……!」
ひかりが宗太郎を見る。
ひかり「宗太郎くん……」
三人は気づいていた。
このままでは、三人とも逃げられない。
周囲には倒されたリップオフギャバンたち。
中庭の出口には凶太郎。
そして――。
凶太郎の狙いは、最初から宗太郎だけ。
宗太郎は拳を握る。
宗太郎「……二人とも」
ひかり「え?」
宗太郎「先に逃げて」
ひかりの目が大きくなる。
ひかり「えっ?」
真司「何を言っている」
宗太郎「凶太郎の目的は俺だ」
真司「だから何だ」
宗太郎「二人がここにいたら、凶太郎は二人まで狙う」
ひかり「でも……!」
宗太郎はひかりを見る。
宗太郎「ひかり」
ひかり「……」
宗太郎「俺は大丈夫だから」
ひかり「嘘」
宗太郎が黙る。
ひかり「宗太郎くん、怖いんでしょ?」
宗太郎「……」
ひかり「さっきからずっと震えてるよ」
宗太郎は自分の手を見る。
確かに。
自分の拳は、わずかに震えていた。
宗太郎「……怖いよ」
宗太郎は正直に答える。
宗太郎「俺だって怖い」
宗太郎「今日、初めて蒸着したばっかりなんだ」
宗太郎「戦い方だって何も分からない」
宗太郎「なのに、いきなりこんな強いやつと戦えって言われても……怖いに決まってる」
ひかりが黙って宗太郎を見る。
宗太郎はそれでも、凶太郎の方を向く。
宗太郎「でも……」
宗太郎「俺が逃げたら、二人まで巻き込まれる」
ひかり「……宗太郎くん」
宗太郎はひかりを見る。
宗太郎「だから、お願い」
宗太郎「川玉くんと一緒に逃げて」
真司が宗太郎を見る。
真司「……断る」
宗太郎「川玉くん!」
真司「お前一人を残して逃げるなど――」
宗太郎「お願いだ!!」
宗太郎が叫んだ。
真司が黙る。
宗太郎は必死だった。
宗太郎「俺は……二人に傷ついてほしくないんだ」
宗太郎「今日初めて会ったばっかりだけど……」
宗太郎「それでも、俺たちは同じギャバンだろ?」
ひかりが目を見開く。
宗太郎は笑う。
宗太郎「だったら……仲間を守るくらいはしたい」
真司は宗太郎を見つめる。
その言葉を聞いて――。
ほんの一瞬。
真司の表情が変わった。
しかし、すぐに元の冷静な顔に戻る。
真司「……馬鹿な奴だ」
宗太郎「え?」
真司「まだ出会って二日目だぞ」
宗太郎「……そうだけど」
真司「それなのに、俺たちを仲間だと言うのか」
宗太郎「……うん」
真司は黙る。
そして――。
ひかりを見る。
真司「天野」
ひかり「え?」
真司「行くぞ」
ひかり「で、でも!」
真司「崎山の言う通りだ」
ひかり「真司くん……」
真司は宗太郎を見る。
真司「死ぬなよ」
宗太郎が驚く。
宗太郎「……川玉くん」
真司「俺はお前を仲間だとは認めていない」
宗太郎「……」
真司「だが――」
真司が凶太郎を見る。
真司「お前が負ければ、次は俺たちが狙われる」
宗太郎「それ、俺を心配してるんじゃ……」
真司「違う」
宗太郎「そ、そうですか……」
ひかりが宗太郎の前に立つ。
ひかり「宗太郎くん」
宗太郎「ひかり」
ひかりは少し不安そうな顔をしている。
ひかり「絶対、戻ってきてね」
宗太郎「……うん」
ひかり「約束だよ」
宗太郎「約束する」
ひかりは宗太郎に背を向ける。
真司とひかりが走り出す。
宗太郎「……二人とも!」
二人が振り返る。
宗太郎は拳を握る。
宗太郎「また明日、教室で会おうな!」
ひかりが笑顔になる。
ひかり「うん!!」
真司は何も言わない。
ただ――。
一度だけ、宗太郎を見る。
そして二人は中庭から走り去っていった。
残されたのは――。
宗太郎と凶太郎。
二人だけ。
凶太郎が宗太郎を見る。
凶太郎「……仲間を逃がしたか」
宗太郎がゆっくりと振り返る。
宗太郎「お前の目的は俺なんだろ?」
凶太郎「ああ」
宗太郎「だったら、俺が相手になる」
凶太郎が笑う。
凶太郎「いいだろう」
宗太郎はギャバンブレスを構える。
凶太郎も腕を上げる。
宗太郎「……蒸着!!」
凶太郎「蒸着!!」
その瞬間――。
二人の周囲に同時に光が走った。
ナレーター「レッドギャバンがコンバットスーツを蒸着するタイムは――」
ナレーター「わずか0.05秒にすぎない」
宗太郎の身体に、赤いコンバットスーツが装着されていく。
ナレーター「そして――」
凶太郎の身体にも、黒と赤の禍々しいコンバットスーツが装着される。
ナレーター「ハンターギャバンキラーもまた――」
二人が同時に蒸着を完了する。
ナレーター「わずか0.05秒で、戦闘態勢へ移行する」
レッドギャバンとハンターギャバンキラー。
二人が向かい合う。
宗太郎が構える。
しかし――。
その構えは、どこかぎこちない。
宗太郎「……」
凶太郎がそれを見て笑う。
凶太郎「構え方が素人だな」
宗太郎「うるさい!」
凶太郎「蒸着しただけで、ギャバンになったつもりか?」
宗太郎「俺は……!」
宗太郎が一歩踏み込む。
宗太郎「俺は、俺のやり方で戦う!!」
凶太郎「ならば――」
凶太郎が拳を握る。
凶太郎「その『やり方』ごと、消してやる」
宗太郎も拳を握りしめる。
宗太郎「来い!!」
一瞬の静寂。
そして――。
ドォン!!
二人が同時に地面を蹴った。
レッドギャバンVSハンターギャバンキラー。
この日。
宙刑学園で初めて――。
「新たなギャバン」と「ギャバンを狩る者」の一騎打ちが始まった。
レッドギャバンとハンターギャバンキラー。
二人は互いに向かい合っていた。
宗太郎は拳を構えているものの、まだ戦い方が分からない。
対する凶太郎は――。
明らかに違った。
その動きは速い。
そして何より、凶太郎の攻撃には迷いがない。
レッドギャバン「くっ……!」
宗太郎が凶太郎の拳を受け止める。
ガキィン!!
凄まじい衝撃。
宗太郎の身体が後ろへ下がる。
レッドギャバン「うわっ!」
ハンターギャバンキラー「……」
凶太郎は無言で宗太郎を見つめていた。
そして――。
突然、凶太郎が叫ぶ。
ハンターギャバンキラー「お前はいいなぁ!!」
レッドギャバン「……は?」
宗太郎が思わず構えを解く。
レッドギャバン「何がだよ!」
凶太郎は拳を握りしめる。
ハンターギャバンキラー「ギャバンに選ばれてさぁ!!」
レッドギャバン「……!」
凶太郎の声には、強い怒りが込められていた。
ハンターギャバンキラー「入学式で名前を呼ばれて!」
ハンターギャバンキラー「コンバットスーツを与えられて!!」
ハンターギャバンキラー「みんなから『選ばれた者』として見られて!!」
凶太郎が宗太郎に近づく。
ハンターギャバンキラー「それでお前は――」
凶太郎が宗太郎を指差す。
ハンターギャバンキラー「ギャバンになれるなんて、思ってなかったんだろぉ!?」
宗太郎が驚く。
レッドギャバン「……俺だってなるとは思ってなかった!」
凶太郎の動きが止まる。
レッドギャバン「俺は普通の高校生だったんだ!」
レッドギャバン「ギャバンになりたいって、ずっと夢見てたわけじゃない!」
レッドギャバン「入学式で突然名前を呼ばれて……!」
宗太郎は自分の胸に手を当てる。
レッドギャバン「俺だって……何が何だか分からないんだよ!」
凶太郎は黙っている。
宗太郎はさらに叫ぶ。
レッドギャバン「だからって、俺が悪いのかよ!?」
ハンターギャバンキラー「……」
レッドギャバン「俺がギャバンに選ばれたのは、俺が決めたことじゃない!」
凶太郎の拳が震える。
ハンターギャバンキラー「……その――」
レッドギャバン「?」
凶太郎が顔を上げる。
その目には――。
怒り。
憎しみ。
そして、深い嫉妬があった。
ハンターギャバンキラー「『思ってなかった』がムカつくんだよぉぉぉ!!」
レッドギャバン「!?」
ハンターギャバンキラー「俺はなぁ!!」
凶太郎が拳を振り上げる。
ハンターギャバンキラー「俺はギャバンになりたかったんだよ!!」
ドォン!!
凶太郎の拳が宗太郎の腕に直撃する。
レッドギャバン「ぐあっ!!」
宗太郎が吹き飛ばされる。
ハンターギャバンキラー「ずっと!!」
凶太郎が叫ぶ。
ハンターギャバンキラー「ずっとギャバンになるために努力してきた!!」
ハンターギャバンキラー「訓練だって受けた!!」
ハンターギャバンキラー「勉強だってした!!」
ハンターギャバンキラー「戦い方だって覚えた!!」
凶太郎が宗太郎を睨みつける。
ハンターギャバンキラー「なのに!!」
ハンターギャバンキラー「俺は選ばれなかった!!」
宗太郎は地面に手をつきながら、凶太郎を見る。
レッドギャバン「……」
ハンターギャバンキラー「それなのに、お前はどうだ!?」
凶太郎が宗太郎を指差す。
ハンターギャバンキラー「『なるとは思ってなかった』だと!?」
ハンターギャバンキラー「ふざけるな!!」
宗太郎が立ち上がる。
レッドギャバン「……じゃあ、どうしろっていうんだよ」
ハンターギャバンキラー「何?」
レッドギャバン「俺がギャバンになったことを謝ればいいのか?」
凶太郎が黙る。
レッドギャバン「俺が選ばれたことを、お前に謝ればいいのかよ!」
ハンターギャバンキラー「……」
レッドギャバン「俺は……」
宗太郎が拳を握る。
レッドギャバン「俺はまだ、ギャバンになったばかりなんだ」
レッドギャバン「今日、初めて蒸着したばかりなんだよ」
レッドギャバン「戦い方だって分からない」
レッドギャバン「どうやってこの力を使えばいいのかも分からない」
そして――。
宗太郎は凶太郎をまっすぐ見つめる。
レッドギャバン「でもな……」
レッドギャバン「俺は、この力をもらったからには――」
拳を構える。
レッドギャバン「誰かを守るために使う!!」
凶太郎が目を見開く。
レッドギャバン「お前がギャバンになりたかったっていうなら……!」
レッドギャバン「俺がギャバンになったことを、恨むのは勝手だ!」
レッドギャバン「でも!!」
宗太郎が叫ぶ。
レッドギャバン「俺の仲間を傷つけるなら――」
凶太郎が構える。
レッドギャバン「俺はお前を止める!!」
凶太郎はしばらく黙っていた。
そして――。
ハンターギャバンキラー「……仲間、か」
凶太郎が小さく呟く。
ハンターギャバンキラー「お前には……仲間までいるのか」
宗太郎が答える。
レッドギャバン「……え?」
凶太郎の拳が強く握り締められる。
ハンターギャバンキラー「俺には……いなかった」
その言葉を聞いた瞬間。
宗太郎の表情が変わる。
凶太郎はすぐに顔を上げる。
ハンターギャバンキラー「だから――」
凶太郎の身体から、凄まじいエネルギーが噴き出す。
ハンターギャバンキラー「お前が……!!」
レッドギャバン「……!」
ハンターギャバンキラー「お前がギャバンである限り!!」
凶太郎が突進する。
ハンターギャバンキラー「俺はお前を許さない!!」
宗太郎も走り出す。
レッドギャバン「だったら――!!」
二人の拳が――。
真正面からぶつかる。
ドォォォォォン!!
レッドギャバン「俺は……負けない!!」
ハンターギャバンキラー「俺は……お前を超える!!」
その瞬間――。
二人の戦いは、単なる「ギャバンと敵」の戦いではなくなった。
「選ばれた者」と「選ばれなかった者」。
そして――。
「ギャバンになりたかった者」と「ギャバンになるとは思っていなかった者」。
決して交わるはずのなかった二人の少年の運命が――。
ここで初めて、真正面からぶつかり合った。
コメント
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おっと、第2話にしてこの急展開か…!! リップオフギャバンの「選ばれなかった側の怨念」がすげぇ生々しくて、読んでてグッと来たわ。宗太郎が「思い出したくない」顔で「怖い」って認めたシーン、あれで一気にキャラに愛着湧いた。凶太郎の「お前は狙ってないのに選ばれてズルい」って台詞、選ばれなかった人間の絶望が詰まってて胸に刺さる…。そして最後の「お前を超える!」はもはや熱いバトル漫画の様相。続き、めっちゃ気になる🔥