テラーノベル
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魔王それは…人間の国を混沌に貶め闇に染める存在。醜く恐ろしい生き物。人間達はそんな存在を恐れていた。人間達は魔王を倒すために勇者を用意し魔王討伐を目標にした。
魔法協会からは賢者の魔法使いを。女神教会からは救済の聖女を。騎士団からは国の盾である剣士を。そして、勇者の剣に選ばれた勇者を。この最強のメンバーで勇者一行は旅に出た。旅は強い魔物との瀕死の戦い…絶景の景色や宴による楽しい時間…そんな苦楽を共に過ごしてきた。世界の果てにある魔王や魔族が住み着いている魔王国。立ちはだかる魔族を倒し、人類の敵である魔王との熱く燃え盛る戦い。
ついに、勇者一行は5年の年月をかけ魔王を討ち滅ぼした。人間達は大いに喜び、それをきっかけに人間の達は魔族共を|根絶やし《・・・・》にしていった。魔王の首を捧げた勇者には功績を称え褒美が贈られた。褒美として爵位と豊かな領地を渡した。残った魔王城や魔王の領地は闇が強くそのままになった。誰もその土地を見向きはしなかった。気がつけば、黒い結界が施されていた。
勇者は長年寄り添った聖女と結婚をした。勇者と聖者の結婚はパレードの如く華やかだった。剣士は王族騎士団騎士団長へとなり、魔法使いは国の魔法技術向上へと導いた魔法協会のトップへとなった。人間達は喜び、人間の国中がお祭り騒ぎとなった。彼等は魔王のことなど忘れたに等しかった。
それから、勇者には子供が二人もできて仲睦まじい家族であった。そこから、子供達は結婚し孫が三人もできた。跡継ぎにも恵まれ未練などなくただただ幸せのまま勇者は長い眠りについたとさ…
めでたしめでたし…
平和の時代とも言われる今では勇者は肩書きの一つとなり…勇者の業績は忘れ去られていた今、俺の物語は終わりかけていた。
そう、END。勇者と魔王の戦いは終わった。もう、終わったんだ。俺の出る幕なんて無かった。平和のはずだったんだ…
「まじで…ここどこだよ」
目が覚めると目の前には黒い結界が張られた場所にいた。周りは荒れた土地…
手は縄で結ばれて服もボロボロ…靴も履いていない状態…
「えっ…嘘だろ…まじか…」
俺…追放された。
「なんで…こんなことに…」
なったんだろうね。
世界が平和になっても、今の俺には絶望的な瞬間だった。
勇者の三孫の一人長男ヴェリタ 現在12歳。
黒目の瞳に赤茶色ぽい髪色をしている。見た目はじみだが、次期当主兼次期勇者だ。
そしてそしてな!ん!と!俺は…なんと転生者だ。高校の帰り道最近ハマっているゲームのイベントがある為急いで帰っていた。やっぱりゲームは邪魔がいない場所でゆっくりとやった方が落ち着く。
(急げ!急げ!)
などと普段よりハイテンションでいた。…ら普通に階段で足を滑らせて転んで打ち所が悪かったらしく死んだ。何という悲しい死にかた…
ゲームの為に急いで帰っていたら転んで死にました!!
我ながらダサすぎる…
どうせなら、
『車に引かれそうになっている子供を助けたので死にました。』なんて漫画とかでよく見るヒーロー的な死ならまだしもよかった。転んで死んだってなんだよ!もう!
恥ずかしすぎて笑いものにしかならない。どうせ、葬式でも『アイツ最後まで馬鹿だな』なんて言われてるだろうな。自分の葬式がどんな風なのか気になるが見たくない。
そんなこんなで恥ずかしさのあまり発狂していた。、ら目が覚めれば…なんということでしょう勇者の子孫として名高い家系の長男として生まれていた。憧れの異世界生活だった、それも勇者の子孫こんな俺チートじゃね!と思った。ここからは漫画お決まりの最ッッッッッ高な生活が待っていると確信した。、が厳しい世の中だった…
魔王を倒したことにより勇者は爵位を貰い、辺境伯へとなった。さすがに、公爵とか高い地位は魔王討伐だけでは与えられなかった。俺は次期辺境伯当主となるべく、勇者の血を受け継ぐべく…などとめっちゃ幼い頃から多くの課題を出されほぼ領内で過ごしてきた。時には、堅苦しい勉強や領地管理。時には幼い子供なのに勇者の子孫だからといってダンジョンに一人で行かせるのなど苦労しかない生活を過ごしてきた。ようこそ、楽しい異世界へ…などでは無かった。お決まりのチートなんてものは存在しなかった。結局は、努力しろってことだよ。逆にそんな縛りがない弟と妹は自由気ままな生活をしてきた。両親も笑顔で領地の事や俺の事を丸投げしてばっかりだった。8歳の子に領地運営を任せるぐらいだ。イカれてやがる。俺が転生者じゃなかったら、精神的に死んでたぞ!
この国の王様には二人の子供がいる。そのうちの一人わがまま王子がいた。王子のお誕生日会へと招待された俺は平穏に過ごすはずが何か王子の機嫌を損ねてしまい一発目から俺の印象は災厄となった。まじで何に怒っているのか意味わからん。
まぁそれから…何度もバカ王子は因縁を付けては何かぐだぐだと文句を言い、周りからは『偽物勇者』呼ばわりだ。気がつけば買収された弟に嵌められこの年で罪に問われた。牢屋に入れられ、裁判まで起こされ追放の刑を言われた。王様も我が子に甘く…
『勇者の子孫だから…処刑ではなく国外追放にしてやる。まぁがんばれ』
と意味わからん判断を出された。
(勇者だからってなんだよ!)
王子からは
『バァカ二度と来んじゃねぇぞギャハハハ』
と嘲笑う。
(二度と会いたくねぇわ!)
判決を下されやっと家に帰らされたので家族にこの事を伝えた。
家族は…
『刑なら仕方がないわね』
と母は味方をしてくれず
(仕方がないって何!?)
『次期後継ぎは弟にしよう』
と父は後継ぎを変え
(助けようともしねぇのかよ…)
『勇者に旅は付きものだよ』
と嵌めた弟は言い
(おめぇは馬鹿だ。)
『おにぃ様がんばってください』
とまだ幼い妹は状況が分からずとりあえず応援はしてくれた。
(唯一の良心だったなぁ、)
それにしても、、、いや…家族なら止めろよ。おかしいと思えよ。そう思ったが縛られたままこの身一つですぐさま追放された。
眠っている間に変なとこに置いていかれた今現在の状況…
せめてさ…縄は解こうよ。食べ物ぐらいちょうだいよ…
そんな風に嘆いていたら…
グワッ…グワッ…
巨大なカエルがやってきた。人を丸のみするぐらいデカい…
「嘆く時間ぐらいちょうだい…」
足は縛られてなかったので俺は急いで走り逃げる。、がカエルの跳力が上回るのですぐに追いつかれる。やっぱり、逃げるだけじゃダメだ。
カエルは腹部の皮が薄く弱点。何か刺すもの…刺すもの…
ドン…
「あった…」
走っていたら奥に枯れ木があった。そこに走り木の真ん中へと行く。カエルの跳ねるタイミング降りるタイミングを確認する。少しずつこちらへと誘導して、ちょうどそこにカエルが降りてくるようにする。
「はやく来い!!」
ドン…
カエルが飛び跳ねるたびに枯れ木が揺れる。
あと少し、あと少し、だから折れないでくれ!
ドン…
(……今!)
カエルが降りてくるタイミングギリギリで木から離れる。
「死ね…クソガエル」
ドシャ…ブシャャャャャ…ゲぇゴ…
木に真っ直ぐに刺さったことでカエルは臓物を通貫して死んだ。
ドサッッッッ…
カエルの重さに耐えきれず枯れ木は倒れた。刺すまで間に合ってよかった。カエルが乗っかった瞬間に倒れてしまったらそのまま攻撃をくらい死んでいた。
グッ…グッ…
今のうちに、慎重に手首を動かして縄を緩くする。緩くなったすき間を見つけたらそこに噛みつき縄をちぎる。
イメージでは簡単に出来たが…
「ふっ…ふずい」
足で手を押さえつけながら噛みつき引っ張る。それをずっと繰り返していたら…やっと縄が切れた。
たぶん…一時間ぐらいたったと思う。ずっと、噛み続けていたので口の中が乾燥し、のどが渇く。
これからどうしよう…このままここに居ても魔物に殺されてしまう。というか国に戻っても…あいつらに殺されてしまう。
最悪の異世界転生、クソみたいな時間だったなぁ。
「行ってみるか…」
目の前にあるこの謎の黒い結界の中へと。中は暗くて何があるのかわからない。石を投げても普通に通過する。縄を入れても、入れた部分が溶けたとかはならなかった。
ここにいて死ぬくらいなら…冒険してみるか。せっかく異世界転生したんだし…
もう、誰にも縛られずに自由にいたい。夢見た異世界生活をしたい。楽したい。
「さようなら…クソみたいな時間」
俺は軽蔑するように別れを告げた。もうこの国には戻ってくることがないだろう。俺は結界の中に入った。
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