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#儚い
nanaha.
205
今もあくあクルーの風真隊🫧
40
#ミセスグリーンアップル
鮭(JAM.S)
60
その日。
最初に気づいたのは、悠真だった。
「……蒼」
まだ眠そうな声。
蒼は毛布に顔を埋めたまま返事する。
「んー……」
「なんか、明るい」
その一言で、蒼は目を開けた。
部屋の中が、ぼんやり白い。
いつもの街灯の色じゃない。
もっと柔らかくて、薄い光。
蒼はゆっくり起き上がる。
カーテンの隙間から、光が差していた。
二人とも、しばらく動けなかった。
「……嘘だろ」
悠真が立ち上がる。
カーテンを開ける。
その瞬間。
朝日が部屋いっぱいに流れ込んだ。
空が青かった。
ちゃんと。
雲があって。
太陽があって。
遠くのビルがオレンジ色に照らされている。
世界が、朝になっていた。
「……は」
悠真は言葉を失う。
蒼も窓の前で固まっていた。
何ヶ月ぶりなのか、もうわからない。
でも確かに。
朝だった。
鳥の声まで聞こえる。
風が揺れる音。
世界が、“動いている”。
悠真は思わず笑った。
「やば……」
声が少し震えている。
「朝だ」
蒼は窓を開ける。
冷たい空気が入ってくる。
でもその空気は、ずっと夜だった頃とは違った。
朝の匂いがした。
懐かしくて。
少し泣きそうになる匂い。
二人は急いで外へ飛び出した。
エレベーターなんて待てない。
階段を駆け下りる。
マンションの外。
雪が朝日に照らされて光っている。
眩しかった。
ずっと暗闇に慣れていた目には、少し痛いくらい。
悠真は空を見上げる。
「青……」
その言葉しか出なかった。
蒼も黙ったまま空を見る。
朝焼けが街を染めている。
誰もいない道路。
静かなビル。
でも景色は確かに、生き返ったみたいだった。
「撮るぞ!」
悠真が突然言う。
「絶対撮る!」
蒼は少し笑う。
「はいはい」
カメラを回す。
震える手で。
悠真がレンズへ向かって言う。
「……朝です」
声が、少し掠れていた。
「やっと、朝が来ました」
カメラが空を映す。
青空。
朝日。
光る雪。
その全部が、信じられないくらい綺麗だった。
蒼が後ろで小さく呟く。
「ほんとに来るんだな」
悠真は振り返る。
その顔は、少しだけ泣きそうだった。
「来たな」
動画を投稿すると、コメント欄はすぐ埋まった。
『うわあああ』
『朝来た!!!』
『鳥肌立った』
『なんか泣きそう』
『空綺麗すぎる』
『ずっと見てきたから感動やばい』
『よかった……』
画面の向こうの人たちも、一緒に喜んでいた。
そのことが、なんだか不思議だった。
遠い世界なのに。
触れられないのに。
ちゃんと繋がっている感じがした。
昼。
本当に昼だった。
太陽が高く昇る。
雪が少しずつ溶けていく。
二人は川沿いへ歩いた。
前に、蒼が一人で座っていた場所。
あの夜は真っ暗だった。
でも今は違う。
水面が光を反射して、きらきら揺れている。
「明るいだけで、全然違うな」
悠真が言う。
「うん」
「なんか……世界戻った感じする」
蒼は少し考える。
それから静かに答えた。
「でもまだ、俺らしかいない」
悠真は黙る。
風が吹く。
川の音が聞こえる。
確かに朝は戻った。
でも。
世界が元通りになったわけじゃない。
それでも。
希望みたいなものは、少しだけ戻ってきていた。
帰り道。
悠真は突然立ち止まった。
「なあ」
「ん?」
「次の動画タイトル決めた」
蒼は笑う。
「早いな」
悠真は青空を見上げた。
「“朝を忘れかけていた世界で”」
蒼は少し黙ってから、
「……いいじゃん」
と答えた。
空はどこまでも青かった。
二人はその光の中を、ゆっくり歩いていった。
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