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1 - 夢の話

2021年12月05日

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あの日、夢を見た。


最後の砦の苦しい夢を。




人の気配がしない昏い街に、見知らぬ誰かと自分一人。


その誰かは言う。


「ここから先は立ち入り禁止だ。」


先に見えるのは、明かり一つない、何も見えない空間。


そこに何があるのか、どんな場所なのか全く分からない。


ただ、危険だとは思わなかった。


「なぜ?」


「希望が見えるから。」


「この場所では希望が見えてはいけない。」


私の問いかけに、…彼は答える。


明かりがないのに、希望が見える。


そんな不思議な言葉に首を傾げた。


彼は続けて言う。


「当分の間、君の居場所はこの家だ。」


先程まではなかったはずの、白い家を指差した。


一際目立つ白色が、この街から浮いているように思えた。


鍵はついていなさそうだが、それ以外はなんの変哲も無い家。


「家から出たら…ちょうど今来てしまった。」


「早く家に入れ。」


押されるようにして家に入った。


ドアを閉めて、少しくすんだ窓から外を見る。


ズルズルと何かを引きずるような音。


耳が痛くなるような高い音。


言葉では言い表せない、ひどい不快感が押し寄せてくるような音。


いろいろな音が聞こえてきた。


「あいつだ。」


彼がそう言ったのと同時に、なにかの姿が見えた。


ゾッとした。


肉塊のような…いや、黒いモヤのような……何かの残骸を寄せ集めたような…………?


「あまり見るなよ。記憶が上書きされる。」


彼の言った意味は分からないが、あれを長く見ていたら、危険な気がした。


気分が悪くなってきて、視線を外した。


「…あ、あれは何なんだ。」


彼に質問したが、返事が返ってこない。


不安を覚えて彼の方を見ると、案の定彼はもういなかった。


これからどうしろというのか。


不快な音が響く中、ただ一刻も早くこの時間が過ぎ去って欲しいと願っていた。




あの日から、毎日毎日あの場所にいる夢を見る。


妙に現実味があって、不気味な夢だ。


あれから1度、あいつに捕まったことがあった。


幸いにもそこで目が覚めたが…その日は一日中気分が優れなかった。


最近はあの夢のせいでろくに寝られないし、色々なことに集中出来ない。


…そう、きっとあの夢のせい。


今日あの夢で、あいつを殺す。


もう二度と見ないように。




「来たのか」


いきなり声をかけられ、反射的に声のする方を見た。


そこには幾日ぶりかの彼がいた。


「ああ、久しぶりだね。」


「君が何をやろうとしているかは知っている。」


思ってもいない言葉をかけられた。


何故か辺りの街が消えたような気がした。


「忠告するぞ。あいつを殺したら見えるはずの希望も見えなくなる。」


彼の言っていることは本当に不思議でたまらない。


もう決意したことなのだ、と心の中で思うと、周りがぱっと白一色になった。


どこまでも続く白い空間だ。


「…もう決めたのか。」


「上手くいくといいな。」


彼は悲しい顔でそう言ったきり、私の前に現れなかった。


それからしばらくして、遠くからあいつが来た。


何故か弱っているようで、目の前で倒れ込んだ。


あとは、とどめを刺すだけだ。


あぁ、やっと…


手応えはなく、かすかに聞こえる軋む音だけが響いていた。




最初から希望はそこにあった。


ただ、見ないふりをしていただけで。


こんな運命、全部。


夢のせいだ。

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