「おはよう。ワトソンくん!さぁ、これから謎を時に行かないか?…なんちゃって笑」
今日も朝から元気に日菜が声をかけてきた。
昨日、コナン・ドイルの小説を見て影響されたらしい。
「ねぇねぇ、ワトソンくん。」
何故か、それから僕のあだ名がワトソンになった。
「今日のお昼一緒に食べない?」
この間の放課後デートに続き、2回目のお誘いだった。
その日の午前中は全然授業に集中出来なくて、担任に指摘された。
そして念願の昼休み。
「ワトソンくん!屋上。いこ?」
「うん」
僕達は一緒に屋上に行った。
屋上は生徒皆に大人気の場所だが、今日は桜堂前の校庭が解放される日だから人っ子1人居なかった。
「今日、全然人居ないね」
「桜堂前に集まってるんだよ」
僕達は静かに昼食を始めた。
僕のは自分で作ったオムライス弁当。この時期は父さんも母さんも仕事がいそがしくなるから自分で作るしかないのだ。
日菜が僕の弁当を見て
「誰が作ったの?お母さん?」
と聞いてきたので自分で作ったことを伝えると
「えぇ!?」
「ワトソンくんが作ったの!?凄すぎぃ…」
驚かれてしまった。
日菜の言うには彼女は料理が壊滅的でとても不器用らしい。
だから何をするにも怪我、怪我、怪我で周りにもいじられるほどだそうだ。
「私、キッチンに立つだけで家族に止められるんだよね笑」
そんな事実があったのか。
そういえばこの間あった調理実習で日菜の班の人たちが日菜を何か慌てて止めていたような…
そういうことだったのか。
「ふふ」
彼女は不意に笑いだした。
「意外って顔してるね?ワトソンくん」
「前回一緒に食べた時、私自分で作ったって言ったけど、あれ嘘なんだ笑見栄はりたかったの///」
意外すぎて僕はちょっと声が出なくなった。
「いいんだよぉ。他の人にもよく言われるんだ」
「そうだったの?意外だねって」
彼女は楽しそうに話していた。
その姿がとても幼く見えて可愛くて。
僕は見惚れていた。
「私不器用だからさ、ワトソンくんみたいな人が旦那さんだったらいいのに」
「え?」
僕がびっくりして日菜の方を見ると彼女は頬を赤らめながらこっちを見ていた。
その後僕らは少しの気まずさを覚えながら昼食を終えた。
今日は月に2回目の心臓を食べる日。
今日は日菜の本当の父親を殺す。
日菜の今の親は再婚しているらしい。
今の母親が昔、すぐにイラつくタイプでそれが原因で離婚したらしい。
今は落ち着いていて、最近は怒ることも少なくなったようだ。
僕は日菜の元父親を呼び出した。
「君かい?私を呼び出したのは」
日菜の元父親はとても紳士感溢れていて、男女共にモテそうな性格だった。
「はい」
「そうか。ところで私に何か用が?」
「はい。あなたの心臓を頂きにまいりました」
元父親の性格と、喋り方でこっちもつられて丁寧な口調になってしまう。
元父親は「ふむ」と数秒顎に手を置いて考えてから
「君が近頃噂の連続心臓殺人魔だったか」
と言ってきた。
「はい」
僕は正直に答えた。
「まさか君のような青年が殺人魔だったなんて…まあ、とやかく言うつもりは無いがあまり好奇的にならないようにね」
日菜の元父親はそう優しく声をかけてくれた。
今まで僕が殺してきた殆どは僕に呪詛を吐いていた。ここまで優しくしてくれたのは初めてだった。
その途端、僕はとても申し訳ない気持ちになり、
「やっぱり、貴方を殺すのは辞めます」
と告げた。
すると日菜の元父親。緒川 司さんは予想外の事だったのか
「おや、なんでだい?」
と質問を投げかけてきた。
「僕は貴方の娘さん。小田谷 日菜さんの友達です。僕は貴方の娘さんに好意を抱いています。」
「私の娘に…?」
「はい」
「貴方のことを噂でよく聞きました。ろくでもない父親だと。だけど日菜はそれを凄く拒絶していました。」
「そんなのは噂でしかないと。ほんとはとてもかっこよくて、優しくて、いい人なんだと。」
僕は初めてこんなに人に気持ちをうちあけたことがあろうか。
日菜だってない。
司さんだから話したのだ。
「だけど僕はそれが信じられなくて、貴方を殺しに来ました。ほんとにろくでもなかったら日菜に危害を与えているのではないかと思ったからです。」
「…」
司さんは終始無言だった。
「でも貴方は予想以上に優しい人でした。」
「殺そうとしてすみませんでした。」
司さんがやっと口を開いた。
「そうか…そんな噂が。それは日菜に迷惑をかけるな…」
「青年。君にも迷惑を掛けた。すまなかった。」
不意に司さんからの謝罪が来て、僕は大いに戸惑った。
なぜなら怒られるのを覚悟で発言していたからだ。
「今でも偶に日菜に会っているよ。その時はいつも日菜は学校のことを話してくれる。最近仲良くなった男の子とは君のことだったんだね。」
「日菜のこと。よろしく頼むよ。あの子はとても優しい子だから他の人に取られないようにね笑」
司さんは冗談まじりにそのようなことを言い残して去っていった。
「もちろん、君の正体も世間にはばらさないよ」
それも約束してくれて。
次の日、また日菜が声をかけてくれた。
「昨日ね、休日だったからお父さんと会ったの!そしたらねお父さん、とてもいい子に会ったんだって。可愛らしい青年だったらしいよ。」
これは僕が日菜の心臓を食べるまでの物語
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