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「オルクス君、一体どこに送ったのでござるか?」
善悪の問いにオルクスが答える。
「トリマ、チカク、ノ、ヤマ、ダヨ…… ヒガシノ、ホウ」
ラマシュトゥとシヴァも驚いた口調で続いた。
「あの熊、魔力を使ってましたわ!」
「ああ、信じられん事だが、その通りだ」
その会話を聞いたモラクスが唸る様に答えた。
「では、モンスター、いや野生ならば魔獣だったと言う事であろう、大変珍しい事ではあるが……」
「馬鹿な!」 「ぬうぅ!」
アヴァドンが信じられないと言った感じで叫び、アジ・ダハーカが同時に唸った。
コユキが不思議そうに質問した。
「そういえば、悪魔とか魔王とか出てくるから当たり前だと思っていたけど、皆の反応見ると魔物って珍しいのかな?」
代表してモラクスが答えてくれた。
「いいえ、魔物は珍しくありません、魔界ならどこにでもいますから、珍しいのはさっきのヤツみたいな魔獣でございます」
コユキはハテナ顔で聞き返した。
「へ? それって違うの?」
「はい、魔物は主に家畜が変化した物でございます、対して魔獣は野生種となります、が、最近は見掛けない筈なのですが……」
「へぇ、昔はいたでござるか? 魔獣が?」
「はい、ジュラ紀や白亜紀は多かったですね、御存知でしょう、恐竜とか言われる物です」
ふむ、悪魔達の中では魔物と魔獣には大きな違いがある様であった。
話していて少し落ち着いたコユキたちは、再び溶岩窟の奥に向かって進み始めるのであった。
溶岩窟をズンズン進んで行くと、やがて通路全体に赤と黒のまだら模様のオーラ、瘴気だろうか? が張られた場所に出た。
手前で足を止めた善悪が、自身の懐(ふところ)に入ったオルクスに尋ねる。
「この向こうが本格的に魔界、と言う事でござるか?」
「ソソ」
オルクスが普段通りシンプルに答えた。
「ここは、地上への瘴気の流出を防ぐ為の簡易的な結界ですな、中に入ると普通の人間にはやや苦痛でしょうな」
流石に説明不足だと思ったのか、コユキの肩の上からパズスが補足してくれた。
「へ?」
話を聞きながら瘴気の壁をシラっと越えた……
えっ? 越えてしまっていたコユキが間の抜けた声を上げた。
驚いたのは善悪であった。
何しろ、善悪にとって幼馴染のコユキは、体型こそ浮世離れした化け物であったが、パズスのいう所の『普通』の範疇(はんちゅう)であったからだ。
「こ、こゆきちゃん! だ、大丈夫なの!」
善悪が心配しているそばから、案の定コユキの様子がおかしくなってしまった!
「んぐっ! た、助けえっ、ぜん、善、あ、く…… さ、よ、う、な、 ら……」
ガクリッ!
「こ、こゆきちゃ――――ん!!」
善悪の絶望の叫びが、溶岩窟中に虚(むな)しく響き渡るのであった……
善悪はコユキに寄り添うように、瘴気の壁を通り過ぎ、ピクピクしているコユキを抱え上げ、悲しそうな声を上げるのであった。
「こゆきちゃん! しっかりして! しっか、かはっ! ぐぬぬぬぅ! む、無念っ! があはぁぁ!」
ガクリッ!
なんと! 善悪までコユキに続いて倒れ込んでしまったでは無いか!
こんな! こんな中途半端で終わってしまって良いのだろうか?
「てへへ、良いノリだったわね、善悪! 体調どう?」
コユキが言った。
「なはは、であろ? 体調でござるか? ん、いつもより良い位でござるよ!」
「まじ? アタシもなのよん!」
馬鹿二人のいつもの悪ふざけであったようだ……
やれやれ、全く…… 人騒がせなデブ共め!!
心配してしまった私と違い、スプラタ・マンユの面々は慣れているのだろうか?
全く気を使っていなかったようで、少し笑ったりしている…… ちきしょう!
兎も角、魔界の瘴気も何故だか二人には一切の悪影響を及ぼす事は無く、その後もテクテク気楽に歩いて行くと、先の方に何やら真紅の光りが見えた。
真紅の光りが指し込む先には、溶岩窟の中とは違い、広大な広さを感じさせる空間の存在を感じ、二人の足運びを速めさせたのであった。