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休日、 五人は、約束した遊園地の入口に集まっていた。
「……ここ、ほんまに来たことないん?」
舜太が仁人を見る。
「うん。今世では初めて」
「俺も」
太智が周りを見渡す。
「でも……なんか懐かしいな」
その言葉に、仁人も頷いた。
「俺も」
初めて来たはずなのに、 どこか知っている。 この道も、 この入口も、 遠くに見える観覧車も、 全部。 ずっと昔から知っていたような気がした。
「とりあえず入ろうよ」
勇斗が笑う。
「せっかく来たんだから」
「そうだね」
五人で入場する。 その瞬間、 仁人の視界が一瞬だけ揺れた。
――五人で走っている。
――笑い声。
――誰かが「待って!」と叫んでいる。
「……っ」
「仁ちゃん?」
柔太朗が振り返る。
「大丈夫?」
「うん……」
仁人は目を閉じる。 もう一度開く。 そこには今の四人がいた。
「ちょっと、立ちくらみしただけ」
「無理すんなよ」
勇斗が心配そうに言う。
「うん」
仁人は笑った。 けれど、 胸の奥では さっきの光景が消えなかった。
*
最初に向かったのは、メリーゴーラウンドだった。
「これ乗ろうや!」
太智が指差す。
「子どもかよ」
勇斗が笑う。
「ええやん!」
五人で乗る。 ゆっくりと回り始める。 音楽が流れる。 その瞬間、 また 記憶が蘇った。
――同じ場所。
――同じ音楽。
でも、 今よりずっと幼い五人。
『次、観覧車乗ろう!』
『えー、怖い』
『大丈夫だって!』
笑い声、 そして。
『ねえ、約束しようよ』
誰かが言う。
『何を?』
『ずっと五人でいよう』
仁人の胸が締め付けられた。
「……ずっと」
思わず声に出す。
「ん?」
隣の勇斗が振り返る。
「何?」
「……なんでもない」
仁人は笑った。 でも、 勇斗は何かを感じ取ったように、黙って仁人を見ていた。
*
昼過ぎ、 五人は観覧車の前にいた。
「最後にこれ乗ろうや」
舜太が言う。
「え、もう最後?」
「時間なくなるで」
仁人が少し嫌な顔をした。
「ちょっと待って俺高所恐怖症だって……」
「俺らがいるから大丈夫だって!な?」
「ええ……、じゃあ乗ろう」
渋々五人で乗り込む。 ゴンドラがゆっくり上がっていく。 地面が遠くなる。 街が小さくなっていく。 そして、 仁人は窓の外を見た。
「……ここだ」
「何が?」
柔太朗が聞く。
「俺たち……ここで約束した」
四人が黙る。
「前世で」
仁人の声が震える。
「五人で、また会おうって」
勇斗が息を呑む。
「……思い出したの?」
「少しだけ」
仁人は目を閉じる。 すると、 今度は四人の記憶まで重なった。
――五人で観覧車に乗っている。
――夕暮れ。
――笑っている。
そして、 誰かが小指を差し出した。
『約束ね』
『うん』
『来世でも絶対会おう』
『五人で』
『五人で』
五人の声が重なる。
「……っ」
勇斗が頭を押さえた。
「俺も……」
「俺もや」
舜太が呟く。
「なんか思い出した」
太智も目を伏せる。
「五人で約束した」
柔太朗が仁人を見る。
「『来世でも会おう』って」
仁人は頷いた。
「うん」
でも、 それだけじゃなかった。 最後に 別の記憶があった。 約束をしたあと、 五人は笑っていた。 けれど 次の瞬間。 仁人だけが、 誰かの手を離していた。
「……」
仁人は目を開ける。 冷たい汗が背中を伝う。
「仁人?」
勇斗が心配そうに声をかける。
「……なんでもない」
「嘘」
「……」
「何か見えたんだろ?」
仁人は答えられなかった。 四人には言えない。
言ってしまったら、 この幸せが終わる気がした。
*
遊園地を出る頃には、夕日が沈みかけていた。
「今日は楽しかったな」
勇斗が言う。
「うん」
柔太朗が笑う。
「また来ようよ」
「また?」
仁人が聞き返す。
「うん」
柔太朗は当たり前のように答えた。
「今度は五人で、もっとゆっくり回ろう」
「……」
仁人の胸が痛んだ。 また その言葉。 前世でも何度も言った。 そして、 その「また」は 一度も来なかった。
「……そうだね」
仁人は笑う。 四人に悟られないように。 でも 歩き出したとき、 仁人のポケットに何かが入っていることに気づいた。
「……何これ」
取り出す。 古い紙切れだった。 遊園地のチケット。 日付は 今から何十年も前。 そして裏側には 見覚えのある字で、 こう書かれていた。
――『もし次に会えたら、今度こそ最後まで。』
仁人の手が震える。
「……これ」
その文字を見た瞬間、 胸の奥で 何かがはっきりと繋がった。 あの日、五 人は ただ「また会おう」と約束したんじゃない。 そのあとに 何かが起きた。
そして その出来事こそが、 五人が何度生まれ変わっても、最後まで一緒にいられない理由だった。
コメント
1件
**リオン** わあ……遊園地で前世の記憶が蘇る流れ、すごく切なくて綺麗でした。特に観覧車のゴンドラで五人が同じ約束を思い出すシーン、美味しいと♡♡♡ぎて「そこかよ!」って膝を打ちましたね。でも仁人だけが「誰かの手を離していた」記憶を見るところで空気が変わって、最後のチケットの裏書きで“何度生まれ変わっても一緒にいられない理由”が見えてくる構成がめちゃくちゃ効いてる…設定の伏線回収、じわじわ来ます。続きが気になる!