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堕天の契り

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堕天の契り

8 - 《番外編:邂逅の》

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2025年07月23日

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「……暇だな」

ぽつりとつぶやいたのはテヒョンだった。

高級リゾートのようなファミリーの別荘に集められた7人の男たち。

悪魔は暇を嫌っている、そんな中数日の“平穏”は、男たちにとって苦痛だった。


「任務もねえし、女も飽きた。さすがに退屈だろ」


ユンギがため息混じりに呟くと、ホソクがソファの上で伸びながら笑う。


「退屈するくらいが平和ってことだよ。……ま、それもたまには悪くないんじゃない?」


「湖でも見に行かないですか?」


ジョングクがぽつりと呟いた。

その声に、全員の視線が集まる。


「……湖?」


「この別荘の裏の森、抜けた先にあるらしいです。地図で見ました。誰も行かない静かな場所……俺、行ってみたい」


「珍しいね、お前が一人でどこか行きたがるなんて」


ジンが微笑みながら立ち上がった。


「じゃあ皆で行こうか。せっかくだし」


森を抜けた先、静寂に包まれた湖に彼らはたどり着いた。


風が止み、空が映りこむ鏡のような水面。

人工の音ひとつないその場所は、時間すら止まっているようだった。


「……綺麗だな」


ジョングクが息を呑んで立ち尽くす。


その視線の先に──ひとりの少女がいた。


長い薄金の髪が風に揺れ、水面を滑るように舞う白いワンピース。

背中からは、柔らかな光を放つ大きな“翼”が伸びていた。


まるで神話から抜け出したようなその存在に、全員が声を失った。


「……天使……?」


ナムジュンが呆然と呟く。


「……いや、違う。そんなもの、いるわけ──」


「俺、見つけたのかな……」


ジョングクが一歩前へと進み出る。

その表情は、いつもの冷静さとはまるで違っていた。


「……彼女を、離したくない」


その言葉に、誰も異を唱えなかった。

ただ全員が、ミンジュの姿に心を奪われていた。


木陰に気づいたミンジュが、振り返った。


ジョングクと目が合う。


──その瞬間、世界が動いた。


彼女の表情に浮かんだ警戒と恐怖。

翼をたたみ、逃げようとする動き。


「……逃げないで」


ジョングクが呟いたその瞬間、彼は湖に走り出していた。


「待ってッ、──!」


ミンジュは飛び上がるようにして水面から離れようとした。


だが、ジョングクの手が先に彼女の手首を掴む。


「ごめん。でも、行かせない。……お願い、ここにいて」


その日から、全てが変わった。


退屈だった日々に終わりが告げられ、

7人の男たちにとっての“運命”が始まった。

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