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夜、あのまま元貴に送られて帰った涼ちゃんは、久しぶりに少しだけ穏やかな気持ちで眠りについた。
しかし朝。
目が覚めた瞬間、身体の芯が燃えるように熱かった。
喉はひりつき、頭の奥がずきずきと脈打つ。
視界が滲む中で時計を見ると、まだ朝7時。
今日もリハーサルがある日だった。
「……行かなきゃ」
小さく呟いて、布団から起き上がろうとした瞬間、
めまいが襲う。膝が床につき、息が荒くなる。
その時、玄関のチャイムが鳴った。
モニター越しに映ったのは元貴の姿だった。
「……元貴?」
声を出すのも辛い。
扉を開けると、元貴はすぐに涼ちゃんの顔色を見て表情を変えた。
「おい、顔真っ赤じゃん……また熱出てるだろ」
「だいじょぶ…行ける」
「行けるわけないだろ。バカ」
元貴はため息をついて、涼ちゃんの額に手を当てた。
その温もりと同時に、彼の眉がぎゅっと寄る。
「やっぱり。めっちゃ熱い」
涼ちゃんは言葉を返そうとしたが、喉がうまく動かない。
そのまま力が抜けて、元貴の胸にもたれた。
「……ごめん、ちょっと、だるくて」
「謝るな。今日はもう寝てろ」
元貴はそのまま涼ちゃんを抱き上げ、ベッドまで運んだ。
涼ちゃんの額にはうっすら汗が浮かび、呼吸は浅い。
元貴は冷たいタオルを用意しながら、
小さく呟いた。
「……昨日、あんなに無理させなきゃよかった」
その声は誰にも届かず、静かな部屋の中で消えていった。