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朝の光がカーテンの隙間から差し込む。熱は少し下がったものの、涼ちゃんの顔色はまだ青白い。
額に触れた元貴の手が、ほんの少し安堵の息をつく。
「昨日よりは、マシそうだな」
「うん……ごめんね、迷惑かけて」
「またそれ言う。迷惑とかじゃねぇよ」
元貴は軽く笑ってみせたが、涼ちゃんの視線はどこか遠かった。
ぼんやりと天井を見上げながら、
彼の指が無意識に布団の端をぎゅっと掴む。
「……最近さ、何してても楽しく感じなくて」
唐突にこぼれた言葉に、元貴は動きを止めた。
「ステージ立っても、笑っても、
全部“やらなきゃ”で動いてる気がして……
気づいたら、何にも感じなくなってる」
その声は、掠れて弱々しいのに、
どこか諦めのような静けさがあった。
元貴はしばらく黙ったあと、
そっとベッドの縁に腰を下ろして、涼ちゃんの手を握った。
「涼ちゃん、それ、俺らに言ってくれてよかった」
「言っても、何も変わんないよ」
「変わるよ。俺らがいるだろ」
涼ちゃんの目がゆっくりと元貴に向く。
その瞳の奥には、泣き出しそうなほどの疲れが滲んでいた。
「……俺、もう少しだけ、休んでもいいかな」
「当たり前だろ」
元貴は優しく笑って、彼の髪を撫でた。
窓の外では、淡い光が少しずつ強くなっていく。
その日、涼ちゃんは久しぶりに何も考えず、
ただ静かに眠りについた。