「凛は、産まれたときから良い子であった」
これは、あの子の葬式で語られた言葉だ──
産声はとても元気よく泣いてくれた。
夜泣きは少なく、卒乳も喋るのも歩くのも早かった。
両親の手伝いは欠かさず行い、友達も多くて先生にも気に入られていた。
そう、前世の彼女は、居眠り運転のトラックから少女を助けて死んでしまうほど良い子であった。
『──将来の夢? この個性をふんだんに使って、世界征服することです』
「凛さん、廊下に立ってなさい」
生まれ変わった彼女は、良いことをし過ぎた反動か少しグレてしまった。
『ハーーハッハッハ! 歌え! 踊れ! 私こそが悪役、ラスボスなのだ!!』
それも、かなり拗らせて有言実行を成し遂げてしまった。
彼女の名は、凛。
前世で、将来の夢が「悪役」などとほざいていた元女子高生だ。
トラックに轢かれた凛が第二の人生の幕開けとして産声を上げてから、社会は大きく変わった。
彼女がきっかけなのか、それともただの偶然なのか、それは神のみぞ知ることだ。
“個性”の発現により突如崩れ去った“人間”という規格。失った法によって歩みを止めた文明は、まさに「荒廃」していた。
後に「超常黎明期」と呼ばれる時代に生を受けた凛は、幼いながらに夢を抱いた。
いや、夢を取り戻したのだ。
これは、自分が敵になるチャンスかもしれないと──
コメント
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作り方がすごい上手です!✨️