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「すごい、本当に景色がどこからでも見えるんですね!」

シースルーの観覧車、初めて乗った。

床を見ると、さっきまで並んでいた乗り場が小さく見えた。


「うわぁ。下を見るとダメです。足が……。怖いです」

座っているのに、足が竦むような感覚に陥る。


「そうだな。綺麗な景色。観覧者とか、子どもの頃に乗って……。本当に久し振りだ」


「蒼さんは、私と観覧車で良かったですか?四人で乗れなくてすみません」

対面で座っている蒼さん、最初は四人で乗る予定だったのに。


「いや、桜と二人の方が嬉しい」


「そうですか……。嬉しい……。ええっ!?」

気を遣って言ってくれたんだ。蒼さんは本当に優しいな。


「桜は?」


「へっ?」


「俺と二人じゃ嫌だった?」

真っすぐ見つめられる。

「嫌じゃないですっ、私も嬉しいです」

「ホント?」

首を傾げる蒼さん。

目線がなんか、椿さんと重なってとても色っぽい。


「ほほほ……ホントです!昨日も蒼さんといつか一緒に遊園地に行きたいなって一人で考えて……」


あっ……。またやっちゃった。もう自分が嫌だ。


「マジ?じゃあ、今度はこんな形じゃなくて、ちゃんと行こうか?《《二人で》》」


「えっ……!!」


蒼さんは優しいから、私のお願いを聞いてくれる。

お金も……。住むところも無くなってしまった私を、精神的にもずっと支えてくれている。居心地が良くて、安心して、一緒にいると楽しくて……。

もう一つの姿である椿さんは、私の憧れの女性だし……。


蒼さんも、椿さんの姿をしている蒼さんも大好きだ。


「あっ、もう少しで一番高いところじゃないか?」

観覧車はゆっくりと頂上へ向かっていた。


頑張れ、私!!

覚悟を決める。


「蒼さんっ!!」

「ん?」


勢いよく彼の名前を呼んでしまった。


「どうした?」


「わわわわわたしっ!!」


「うん?」


「蒼さんのことが……!!」



その時ーー。


<ガタン!!>

大きく観覧車が揺れた。


「きゃぁっ」

思わず、見ないようにしていた足元を見てしまった。


「わわわぁぁぁぁぁ。高いです――!」

半べそ状態の私。


<お客様にお知らせします。機械点検のため停車いたします。しばらくお待ちください>

アナウンスが聞こえた。


「えっ。ずっとこのままなんですか?」

手が震える。高いところでずっとは怖い。

足元を見てしまってからダメだ。


「大丈夫だよ。一時的なものだろ?落ち着いて」


どうしてそんなに冷静でいられるんだろ。蒼さん、すごいな。

「はい」

告白のチャンス……。

勇気が一気に引っ込んでしまった。

手は震えてるし。


そんな私の様子を見て、蒼さんは観覧車が大きく揺れないようにスッと動き、私の隣へ座ってくれた。


「蒼さん?」


「桜。手、震えてる」


私の両手を握ってくれた。

うわぁぁぁぁぁ!!

距離が一気に近くなった蒼さんに、今度は違う緊張が襲う。

でも握ってくれたおかげで安心する。


「ありがとうございます。蒼さんが隣にいてくれるとすごく安心します」


<お待たせして申し訳ございません。運転を再会いたします>


アナウンスが再び流れたかと思うと、ガタンと観覧車が揺れ、ゆっくりと動き出した。


あっ。もうすぐ頂上だ。

私の手を握ってくれている蒼さんの手を握り返す。

「まだ怖い?」

心配そうに見つめてくれる蒼さん。


「あの、蒼さんに伝えたいことがあって?」

「なに?」


ふぅと深呼吸をする。



「私……。私、蒼さんのことが好きです!」

怖くて、こんなにも近くにいるのに、蒼さんを見ることができない。


「大好きです!だから友達でいてください!」

あぁ、言っちゃった。なんだか泣きそう。


「嫌だ」

蒼さんがそう一言呟いた。


ズキンと心が痛む。

そうだよね……。

私なんかに告白されても困るよね。


「ごめっ……」

ごめんなさいと伝えようとし、顔を上げた瞬間――。




「んっ……」

蒼さんにキスをされた。

えっ……。嘘……。夢……?


唇が離れる。

「蒼さん?」


「俺も、桜のことが好きだ。だから、友達は嫌だ。彼氏にしてほしい」


蒼さんが私の彼氏……。

その時、ゴンドラが下降し始めた。

さっきが頂上だったんだ。


何度も瞬きをする。

「あの、夢じゃないですよね?」

こんなことある?

蒼さんと両想いなんて。そんな夢みたいなこと……。


「夢じゃないよ」

フッと彼は笑った。

そしてギュッと抱きしめられる。


あっ、良い匂い。私が好きな香水の匂いがする。


「感触あるだろ?」

「はい」

私も恐る恐る蒼さんの背中に手を回してみる。


夢じゃないんだ。

ギュッと抱きしめ返した。

「大好きです!」

ハハっと彼は笑った。

「俺も大好きだよ。これからは俺が桜を守るから?」

「私も蒼さんのこと守ります。番犬ですので」

フッともう一度彼は笑ってくれた。



二人で手を繋いで、観覧車から降りる。


「帰ろうか?」


「はい。あっ、でも遥さんと蘭子ママさんを探さなきゃ……」


二人ともどこに行っちゃったんだろう。遥さんにお礼も言いたいのに。


「さっき、連絡が来て。二人とも用事があって先に帰るって」

「えっ。あっ。そうだったんですね」

帰ったら連絡しなきゃ。


「ご飯食べて行こうか?桜と一緒に行きたいところがあるんだ」

「はい!」

手を繋いだまま、遊園地を後にした。


その時、一瞬、蒼さんが後ろを振り向いた。


「どうかしたんですか?」


「いや、なんでもない」

返事と共にギュッと手を握ってくれた。

大きい手。


ずっとこの手が離れないように――。


私は心の中でそう願った。




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綺麗なオネエ?さんは好きですか?

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