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今は、朋也さんも一弥先輩も、2人とも私の中にいて消えない。
それが、すべて。
『昨日は…ちょっと出かけました。か、買い物…とか』
一弥先輩の質問には答えたけど、嘘をついてしまった。
言えないよ…
朋也さんと二人きりで水族館に行ったなんて…
『そっか…俺も恭香ちゃんと買い物に行きたかったな。洋服とか一緒に選んでもらったり…』
一弥先輩が、そう言って笑った。
ごめんなさい…
『また…誘ってもいいかな?』
『あ…一弥先輩…あの…』
それ以上、上手く言葉が続かなかった。
『前も言ったけど…僕、断られても恭香ちゃんのことまた誘うよ。何度でも』
そんなこと言わないで…
一弥先輩に何度も誘われたら、そのうち断れなくなってしまうかも知れないよ…
そんなことになったら、ますます自分が混乱してしまいそうで怖い。
一弥先輩、ちょっと悲しい顔になった?
『ごめんね。朝からいろいろ言って…また次も同じチームになれたらいいね。じゃあね』
何だか無理に笑顔作ってるみたいだった…
私の思い過ごしだといいんだけど…
それから、私達はまたそれぞれの仕事に向き合った。
夕方になって、突然夏希が私に話しかけてきた。
『恭香、ちょっと来て。話がある』
『どうしたの、夏希。怖い顔して』
『いいから来て』
夏希が私の腕を引っ張って、部屋の外に連れ出した。
誰もいないところを見つけて夏希が切り出した。
『恭香』
『だからどうしたのよ、夏希』
『…恭香は一弥先輩と付き合ってるの?』
え?何?
突然の質問にすごく驚いた。
『恭香が一弥先輩を誘惑したせいで…菜々子先輩がフラレて悲しんでるって…噂になっちゃってるよ』
そんな…
何でそんなこと…
私が一弥先輩を誘惑なんて、そんなことするはずないよ。
確かに二人が別れたことは聞いたけど…
その原因が私だなんて意味がわからない。
『私、そんなことしてないよ。一弥先輩を誘惑するだなんて…そんなこと…』
私は、首を横に何度も振って夏希に必死に反論した。
『だよね。うん、わかってる。恭香はそんなことしないよ。言いふらしてるのも誰だか検討はつくしね』
梨花ちゃん…?
ごめんね。
最初に疑ってしまった。
それが、今の私の梨花ちゃんに対する信頼度なんだろう…
『とにかく、恭香が変な噂立てられたままで黙ってられないよ。私、言ってあげようか?』
『ありがとう…大丈夫だよ。夏希が信じてくれたら、それが本当に力になる。私が自分で言うから』
『うん、わかった。本当、梨花ちゃんなんかに負けるな』
夏希、心の声が漏れてる…
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