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私は、夏希と別れ、すぐに梨花ちゃんを探した。
まずは、本当に梨花ちゃんが噂を流したのかを確かめたかった。
もし違ったら……その時はちゃんと謝らなければ。
「梨花ちゃん……どこにもいないな」
あれ?
一弥先輩が、小さな会議室に入って行くのが見えた。
続いて入って行ったのは梨花ちゃんだ。
どうして2人が――
「ちょっと待って!」
私は、思わず声をかけてしまった。
「恭香ちゃん!」
一弥先輩が驚いた顔で私を見た。
隣で梨花ちゃんは下を向いて黙っている。
「あの、すみません。お二人でお話しだったんですよね。私、ちょっと梨花ちゃんに聞きたいことがあって、つい声をかけてしまって」
「もしかして、僕も絡んでる話しかな?」
「はい……そうなんですけど……」
やっぱり同じ噂のことで?
一弥先輩も知っていたんだ。
「だったらちょうど良かった。恭香ちゃんも一緒に入って。3人で話そう」
「……はい。わかりました」
私は、戸惑いながらも部屋に入った。
「どうしたんですか? こんな誰もいない部屋に連れてきて、2人して私に話しなんて。まさか、後輩イジメですか? ちょっと怖いです」
梨花ちゃんは不満そうに言った。
私にならともかく、一弥先輩にまでイラついている様子だ。
「僕と菜々子、恭香ちゃんについて、いろいろ噂を流してるよね? 悪いけど、梨花ちゃんから聞いたって言う人がいるんだ」
「……」
すました顔で黙っている梨花ちゃん。
「答えて」
一弥先輩の少し強めな口調に驚いた。
いつも優しく話してくれるのに……
それくらい怒っているのだろう。
もちろん、私も、梨花ちゃんに対して募っていた不信感がさらに大きくなっていた。
少し間をあけて、梨花ちゃんが口を開いた。
「だから何なんですか?」
悪びれもせずに話す梨花ちゃんにも驚く。
「梨花ちゃん、どうして? 私が一弥先輩を誘惑して、一弥先輩と菜々子先輩を別れさせたって……それはどういうこと?」
「そのままですよ~。別に本当のことだからいいでしょ?」
「君は何をどう誤解してるの? 僕と菜々子が別れたのは、恭香ちゃんがどうとかって言うんじゃないよ」
一弥先輩は、イライラしながらも声を荒らげないように話している。
とても険悪なムードが流れる。
こんな雰囲気は嫌いだ。
なのに梨花ちゃんは、クルクルしたパーマを指で触りながら、
「一弥先輩が菜々子先輩と付き合ってるんだって、見ててすぐに気づいちゃいました。この2人なら美男美女で仕方ないなぁ~って思ってましたけど、一弥先輩と恭香先輩はいっつも仲良くしてて、何か見てて恭香先輩イタイなぁって」
甘えたように話す梨花ちゃんの真意がわからず怖くなる。
「私は、一弥先輩とは今まで通り普通に話してるだけだよ。特に仲良くなんてしてないから。梨花ちゃんだって、みんなと普通に仲良く話してるよね?」
「そんなことないですよ。でも恭香先輩って、なんていうか、私達女子と話してる時と、男の人と話す時、全然態度が違ってるんですよね~。私には結構冷たいのに、一弥先輩や本宮さんと話す時はニコニコしちゃって……。そういうの、明らかに男性にだけ媚び売ってるってことでしょ?」
「私、梨花ちゃんに冷たくした?」
「はい。いっつも厳しいじゃないですか。亮君に言ってもらうコピー、私が選ばれた時も、すっごく機嫌悪くて。自分が選ばれなかったことを根に持って、しばらくものすごく意地悪言われて。私、泣いちゃいそうだったんですよ。本当に酷いです」
一弥先輩がいるからなのか、そこまで嘘を言われて呆れてしまう。
「梨花ちゃん。恭香ちゃんはそんな人じゃないだろ? それはみんなわかってるよ。嘘を言っちゃいけない」
一弥先輩……
私のことをかばってくれている。
この最悪な状況で味方がいてくれることに心から感謝だ。
「知らないんですね、恭香先輩のこと。私、いつも2人になった時だけ冷たいこと言われてるのに。私、本当につらくて悲しくて……」
「それは……」
私ではなく梨花ちゃんのことだ。
「梨花ちゃん、もう止めなよ。それ以上恭香ちゃんの悪口言うのは」
「一弥先輩は騙されてます。本宮さんも亮君も。みんなこの人に振り回されて……。恭香先輩の本性をみんな知らないんですよ。イケメンを見ると見境なく色目を使って。こんな最低な人に彼氏を盗られて、菜々子先輩が可哀想です」
「待って、私も2人が付き合ってるのわかってたし、お似合いだって思ってたよ。邪魔しようなんて、そんなこと思うはずない」
私もつい夢中になって反論した。
「そうだ。恭香ちゃんは何も悪くない。菜々子と僕が別れたのは、単に2人だけの問題。他の誰も関係ないから。だから、本当に嘘を言うのは止めてほしい。いや、止めてくれ」