サイド ルネ
ダイチはその日から俺を強引に家に誘われるようになった。といっても、ただダイキたちの面倒を見るだけなんだけど。
「今日こそは……!」
「おーい!ルネ、こっちこっち!」
いつもいつも先回りされるんだよね。本当に、どんな直感してるんだろうって毎日思ったよ。
「そろそろ諦めてくんないかな?」
「やだ!!それよりモn」
「こ・と・わ・る」
モンダイジ団に入れ。そうダイチが言い終わる前に、俺はばっさりと切り捨てる。
「毎日よく飽きないねぇ」
「あったりまえだ!!ルネが入ったらみんな喜ぶしな!!」
項垂れていたかと思えば、すぐに笑顔で力説する。本当に表情筋豊かな奴だ。普通なら、帽子を被ってるからその分表情がわかりにくくなるはずなんだけどなぁ。
そこで、ふと思ったことがあった。それをそのままダイチに聞く。
「……ダイチもアイツらも、いつも帽子被ってるけどあれってなんなの?」
「!気づいてたのか!帽子は俺が作ったモンダイジ団のトレードマークなんだ!!」
ふーん……って、え?
「作った?ダイチが?」
一瞬だけダイチは「しまった」って顔をした。すぐに取り繕った笑顔を浮かべて両手を振ったけどね。
「あ……お、俺、実は料理とか裁縫とかが得意なんだよな!いやー、本当はもうちょい……」
「……すごいね、ダイチは」
俺だって手先は器用な方だ。機械の改良や、工作なんかをよくしている。けど、料理とか裁縫とかの生きる為に必要なスキルはさっぱり駄目だった。
「……おかしいって、否定しないのか?」
「何で?逆に誇っていいことだと思うけど。そういうこと出来たほうが生きる為の選択肢も広がるからダイチのこと尊敬す、る……」
そこまで言って、俺はギョッとして動きを止めた。
ダイチが、泣いていたから。それなのに、真っ直ぐこっちを見たまま、動こうとしない。
今まで元気ではつらつとしたダイチしか見たことなかったから本気で焦ったよ。
「え?お、俺悪い事言った?」
「ち、違……っ」
ダイチは自分でも動揺していたみたいだった。ぽんぽんと背中を叩いて慰めようとすると、さらにたくさんの涙が出てくる。
「ああ、もう……」
俺はダイチが落ち着いてくれるよう祈りながら、人目を避けて屋上へと向かった。