「えと、君は、選ばれたんだ。」
その言葉が響いた瞬間、空の月が赤く燃え上がった。森の空気が震え、葉がざわめく。
えとは一歩後ずさる。
「違う…私は…人間…!」
ローブの人物は手を伸ばす。
その指先が触れた瞬間、えとの胸元にペンダントが浮かび上がった。
それは、あの夜、森で拾ったもの。奇妙な光に導かれて、無意識に…。記憶が蘇る。
「力が欲しいか?孤独を終わらせたいか?」
その問いに、えとは…。声に出したはずはない。でも、心がそう叫んでいた。
月の光が強くなる。
えとの体は光に包まれ、何かが入り込んでくる。
牙。本能。獣の力。
その時、変わったのかも知れない。「獣に」
森が遠ざかる。目を開けると、天井が目に入った。シーツは汗で濡れていて、息は荒い。
えとは、胸に手を当てる。
そこに、「契約の印」があった。ペンダントが確かに、存在していた。
館の時計が、静かに夜を告げる。
十二人はそれぞれの部屋に戻ったが、眠れているものなどいるはずなかった。
えとはベットの上で膝を抱えていた。
胸元のペンダントが、じんわりと熱を帯びている。
(あの夢…。幻じゃない。私の「中」に……。何かが…?)
それは、確信をついていた。
窓の外は霧に包まれ、月の光もぼんやりとしか見えない。静寂の中、床板が軋む音がした。誰かが、動いている。
えとはそっと扉を開け、足音を忍ばせて廊下へ出る。
月明かりが差し込む窓の下、そこには
…。うりが立っていた。
彼は、えとに気づいたようだ…。
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