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それから暫くして、バラエティー番組の収録現場で一緒になった原さんに声を掛けられた。


「南田さん、少しいいかな?」

「……はい」


雪蛍くんは収録中なので、迷ったものの少しくらいはと席を外して原さんと話をする事にした。



「あの件では、本当に申し訳無かった。それと、こちら側の条件を飲んでくれて、感謝しています」

「いえ……。こちらとしても、あの件とお仕事は別だと思っていましたので。それに、事務所とも話し合った末に決めた事ですから」


原さんから桜乃さんの話を聞いたところによると、彼女は本当に雪蛍くんを好きだったようで、どうしても彼女である私の事が許せなかったらしい。


そんな彼女は映画の公開を終えたら暫く休業するという。


「結萌自身、あの件では後悔してるようです。ただ、プライドが高くてどうしても面と向かって謝る事が出来ないみたいで、本当に申し訳ない……」

「悪いと思っているなら、もうそれでいいですよ。気にしないでください」


あの一件では、私もすごくダメージを受けたし沢山悩んだけど、私は良かったと思っている。


だって、あの一件があったおかげで、雪蛍くんとの絆がより深くなった気がするから。


「あ、収録が終わったみたいですね、戻りましょう」


隅の方で話をしていた私は収録が終わり、出演者たちが動き出したのを確認したので話を切り上げ、それぞれの位置に戻って行った。



そしてその夜、久々に仕事が早く終わった事もあって、雪蛍くんのマンションでゆっくり過ごしていた私たち。


ソファーに座ってテレビを観ていた時、ふいに雪蛍くんが声を掛けてきた。


「おい」

「どうしたの?」

「今日、アイツと話してたよな?」

「アイツ?」

「原だよ」

「ああ、うん。あの時の事、改めて謝ってくれたよ。桜乃さん、映画の公開が終わったら暫く休業するんだって」

「あー、何かそんな事言ってたな。って、そうじゃねぇよ」

「え?」

「お前さぁ、危機感無さ過ぎだろ?」

「え? そ、そう?」

「そうだよ。指示されたとは言え、お前に薬盛った相手だぞ? あんな奴と二人きりになるなよ」

「で、でも……二人きりって言ってもスタジオの隅で話してただけだし個室じゃないよ?」

「当たり前だ! つーかさぁ、莉世に隙があり過ぎるのも問題なんだよ」

「そ、そんな事……」

「無いって言えるのか?」

「え? う、うーん……無いと思うけど――っんん!?」


私が話を終えるよりも早く、雪蛍くんの唇が私の口を塞いで話せなくなる。


「んん、……っん、ふ……あ」

「ほらな? 隙があるからこうなるんだよ」

「……はあ……こ、これは……ちがう……」

「何が違うんだよ? 隙を見せなきゃされてねぇだろ?」

「……そんな事、ないよ。雪蛍くんが相手だから、私は……いつだって、キス、したいし……触れたいって、思うもん……強引にされるのも、好き……だもん」

「なっ……」


確かに、さっきのは隙があったから急にキスされてしまったかもしれないけど、今は雪蛍くんしか居なくて安心し切ってるから隙だって生まれるの。


それに、キスされるのは嬉しいから、されるって分かってたら、隙だって見せてもいいやって思う。


それも全て、雪蛍くんだから。


「お前さ、どこでそんな可愛い台詞覚えてくる訳?」

「え? 覚えてなんて……ありのままを言っただけだよ」

「あーもう! そういうの、狡すぎ」


ガシガシと頭を掻きむしった雪蛍くんは頬をほんのり赤く染めながら私の背に腕を回すと、


「雪蛍く――」


再び唇を塞いで来て、私は言葉を続ける事が出来なくなってしまった。

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