テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
人のものをパクる。それは、世間一般では決してしてはいけないとされる不道徳な行為だ。
だが、人は知っている。
他人の技術や思想を「オマージュ」として昇華し、完璧に自分のものとした上で本家を超えてみせた時、周囲は批判を忘れ、ただその圧倒的な才能に平伏し、納得してしまうのだと。
そんな理不尽な能力を持つことができた、選ばれし人間。
それが僕だ。
幼い頃から、僕が勝負に負けるのはたった一度きりだった。
それがテストの点数だろうと、陸上競技のタイムだろうと、ルービックキューブの解法だろうと関係ない。一度目の敗北は、単なる「データのロード時間」に過ぎないのだ。
苦手分野?
そんなもの、一度その構造と本質を理解してしまえば、一瞬で誰よりも得意な分野へと姿を変える。
「……また満点かよ、」
採点済みの答案用紙を返却されながら、隣の席の奴が忌々しそうに呟く。
二週間前の実力テストでは、確かに彼が学年トップで、僕は二位だった。だが、彼がどういう思考ロジックで問題を解き、どういう時間配分で思考を展開しているのか、その手癖を一度観察してしまえば、あとは簡単だ。
彼の解法をベースに、無駄な試行錯誤を削ぎ落とし、より洗練された「完全上位互換の解答プロセス」を脳内で構築する。ただそれだけで、二度目の勝負で僕が彼に負ける理由はどこにもなくなる。
「たまたまだよ」
僕はフッと口元を緩め、謙虚なフリをして答案用紙を鞄に押し込んだ。
誰もが僕の成長速度に驚き、天才と称える。だが、僕がやっているのは天才的なひらめきなどではない。極限まで高められた「掠奪」と「最適化」だ。
放課後。静まり返った教室で、僕は自分のスマートフォンを眺めていた。
勉強も、スポーツも、あるいはちょっとしたゲームや雑学に至るまで、この街で出会う程度の「天才」たちはすでに全員食い尽くしてしまった。
「……退屈だな」
一度負けて、コピーして、超える。
そのプロセスがあまりにも容易になりすぎて、世界が酷く色褪せて見えていた。
その時だった。
誰もいないはずの教室のドアが、静かに開いたのは。
「――君が、一度見たものを何でも自分のものにできるっていう『コピーキャット』かい?」
現れたのは、見たこともない制服を着た一人の少女だった。
彼女は不敵な笑みを浮かべ、手に持った黒いファイルをとんとんと胸元で叩いている。
「面白い能力だね。でもね――『絶対に他人に真似できないもの』を持っている人間に遭遇した時、君のその完璧な器がどう壊れるか、試してみたくない?」
彼女が差し出してきたファイルの一ページ目を開いた瞬間、僕の脳裏に電撃のような衝撃が走った。
そこに書かれていたのは、僕のこれまでの人生の敗北記録と、僕が理解することすら拒絶したくなるような、狂気じみた「未知のゲーム」のルールだった。
僕の口角が、自然と上がっていくのが分かった。
――いいだろう。
どんな異常な才能だろうと、どんな不合理なルールだろうと関係ない。
一度見れば、全て僕のものだ。
コメント
1件
うわっ、これめっちゃ面白い…!「コピーキャット」って能力、最初はチートすぎて退屈そうな主人公の心境もわかるけど、最後に現れたあの少女の「絶対に真似できないもの」って台詞がもうドキドキする。未知のゲームってなんだろう…続きが気になりすぎる!
Im
12
星十空しゃるVtuber準備中
70
2,584
11