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メイド服姿の彼女。女性社員、ナオミちゃんに付き合う谷崎潤一郎くん、然して興味の目を向ける宮沢賢治くん。回ってみて、と云われ、可也のスピードで回っておおー、と少しの歓声が起こる。其の頃、扉の開く音で目を開ける。「かわいいー!」と女性の声。其処に入り、何やってるんですか、と谷崎くんに問い掛ける敦くん。だって彼女、何着てもすっごく似合うんだもん、と云う谷崎くんに、「否、そこでは無くて……」と云う敦くん。然して国木田独歩くんに助けを求めるが、助け舟は出されなかった様だった。
バン!と扉の開く音と同時に、ただいまあ!と大きな声が聞こえる。買ってきたよおー、と三十五人殺し___泉鏡花に話し掛けて居る。如何やら彼は私には目もくれず其方に向かうらしい。泉鏡花への嫉妬でむくれていると、でも食べるのはぼおく!とぱくり、とでも効果音が出そうな食べ方で食べていて、其の可愛らしさに打ち拉がれる。
徐々此処の社長が来る頃だな、と察し、窓から飛び降りる。勿論着地は完璧だ。
「……此処から徒歩かあ、面倒くさあい、…」
ゆっくりと歩き始め、周りの景色、良い感じの木や川を探し乍ら街中を眺める。そんな帰路も、案外、悪くは無かった。
「……あ、又あの川で入水しようかなあ」
「太宰くん!?何時にも増して疲れていますけど…」
「ぜえんぜん大丈夫だよ、安吾、何時もの入水をしただけだから」
本当懲りませんね、と呆れた様に云い乍ら、執務室に戻って行く。あーあ、着替えあったかな。
着替え乍ら、ちょくちょく書類に目を通して行く。
「…却説、早い所手を付けて颯さと終わらせて仕舞おうかな」
着替えが終わり、席に着き書類を片付けて行く。
小一時間程だろうか。其れ程経った頃には、どっさりと積まれて居た書類は、八割程無くなって居た。一度キーボードから手を離し、くぁあ、と欠伸をすると、一度立ち上がり、其処ら辺を歩き回る。
「……息抜きに自殺でもしようかなあ」
そう、ボソッと呟き、目を閉じれば、呆れる安吾の姿がくっきりと浮かぶ。自分が云う事でも無いが、矢張り、上司を困らせてしまうのは良くない。
執務室を用意する、と云われた時に所望したソファに、ごろん、と寝転がる。何時も使って居るヘッドホンを付け、何時もの様に鼻歌を歌う。此の緩やかな日常を、詰まらないと、安吾の前では云いつつも、実の所、気に入っているのやもしれない。
先程見た書類__『ポートマフィアに捕らわれた件の報告書』をふと思う。ポートマフィアで手に入れた情報の一つに、敦くんに懸賞金を懸けた黒幕のデータがある。出資者は、『組合』(ギルド)と呼ばれる北米異能集団の団長。名は「フランシス・スコット・キー・フィッツジェラルド」。
____そうだ。政府への報告の前に、武装探偵社に伝えるとしよう。敦くんも屹度、喜ぶだろうしね。乱歩さんにも、国木田くんにも……嗚呼、新しい居場所が出来たみたいだ。
「組合が出資者だと!?」
「組合は都市伝説の類だぞ?構成員は政財界や軍閥の要職を担う一方で、裏では膨大な資金力と異能力で幾多の謀を底巧む秘密結社、そんな連中が何故敦を____」
国木田くんの言葉を遮る様なヘリコプターのローター音。
「た、ッ大変です!」
急ぎでヘリの場所に駆け付けると、ヘリは着陸せず、空中で留まって居た。
「……先手を取られたね。」
ポケットからスマホを取り、安吾に連絡を入れる。必要最低限の事を話し、電話を切る。
ヘリの中には恐らく組織のボスと思われる長身の金髪男性___フランシス・スコット・キー・フィッツジェラルドが居た。右隣には赤髪で後ろに大きな三つ編みをして居る女の子。左隣は茶髪で、全体的に緑と白の服装をして居る男性。恐らく護衛か。
「太宰くん、話を詳しく」
「敦くんに懸賞金を懸けた組合の長、フランシス・スコット・キー・フィッツジェラルドと其の護衛二人が護衛付きでヘリから来てねえ。後は武装探偵社の社長、福沢諭吉と商談と洒落こんで居るよ」
「はあ……兎に角、大抵は分かりましたから早く次の事が起こる前にポートマフィアに捕らわれた件の報告書を上げてください。」
「はあい」
安吾が部屋から出ると、早速書類に手を付ける。
___正直、元部下に殴られて元相棒と戦って取引しただけなんだけれど。どう書くかな。
私の予想が正しければ、朝刊とニュースに……在った。
_____七階建ての建物が一夜にして消し去られる____
ニュースの内容は、そう云った物だった。
一部の情報筋からは、其処にポートマフィアのフロント企業が入っており、構成員の事務所として使われていたとの情報もある。
逆らう探偵社、用済みのマフィア、全て消す、か。