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#異世界転移
花月夜れん
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ユキ
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第七十話 夏の再会
「久しぶりに会うだけじゃない。今の自分を見てもらうために、ここに来た。」
七月。
梅雨が明け、夏らしい暑さがやってきた。
湊は朝からカメラの準備をしていた。
今日は、以前応募した交流イベントの日。
海外から来た学生たちと日本の学生が集まり、
それぞれの文化や日常を写真や映像で紹介する。
そして——
紬も運営側として参加する。
「……忘れ物ないよな。」
カメラ。
予備のバッテリー。
メモリーカード。
必要なものを確認して、湊は家を出た。
会場に到着すると、
すでにたくさんの人が集まっていた。
日本語だけではない。
いろいろな言葉が飛び交っている。
少し緊張しながら受付を済ませる。
すると——
「湊!」
聞き慣れた声がした。
振り返る。
そこに紬がいた。
「久しぶり。」
「うん。」
たった数ヶ月。
でも、高校時代とは
違う環境で過ごしてきたからか、
少しだけ久しぶりに感じた。
「ちゃんとカメラ持ってきたね。」
「そっちこそ。」
紬は首からスタッフ証を下げていた。
「なんか、似合ってる。」
「ほんと?」
「うん。」
「ありがとう。」
二人で笑う。
高校を卒業してから、それぞれの生活が始まった。
こうして同じ場所で会うと、
その変化を改めて感じる。
イベントが始まった。
最初は簡単な交流から。
それぞれ自己紹介をして、
好きなことや自分の国について話していく。
湊のグループには、海外から来た学生が二人いた。
「日本で好きな場所は?」
湊が聞くと、一人が答えた。
「小さな町。大きな都市より、普通の生活を見てみたい。」
その答えに、湊は少し驚いた。
観光地ではなく、誰かの日常。
それは自分が写真を撮るときに
大切にしているものと似ていた。
「じゃあ、今日は普通の景色を撮ってみよう。」
そう言ってカメラを構える。
駅前を歩く人。
コンビニの前で話す学生。
公園で遊ぶ子どもたち。
特別ではない一日。
でも、そこには確かに日本の生活がある。
——カシャッ。
昼休み。
湊は会場の外に出た。
自動販売機で飲み物を買っていると、
紬がやってきた。
「お疲れ。」
「紬も。」
二人でベンチに座る。
「どう?イベント。」
「楽しい。」
「写真、いっぱい撮ってるね。」
「うん。」
湊はカメラの画面を見せる。
紬は一枚ずつ見ていく。
「この写真好き。」
「どれ?」
「これ。」
そこには、海外から来た学生が
日本の学生と笑いながら話している姿が写っていた。
「なんか、言葉が違っても楽しそう。」
「そうだね。」
紬は写真を見ながら言った。
「私、こういう瞬間をもっと増やしたい。」
湊が紬を見る。
「だから、この分野を勉強したいって思ったの。」
「うん。」
「人と人が違っても、分かり合えるきっかけを作れるようになりたい。」
湊は静かに頷いた。
「紬らしい。」
「湊も。」
「俺?」
「写真で、人の気持ちを残したいって言ってたじゃん。」
「うん。」
「今日の写真、まさにそれじゃない?」
湊はカメラの画面を見る。
確かにそうだった。
自分の写真と、紬がやりたいこと。
別々のものだと思っていた。
でも——
写真は、人と人をつなぐこともできる。
そのことに気づいた。
午後。
最後のプログラムとして、
参加者全員で写真を撮ることになった。
湊はカメラを構える。
みんなが並ぶ。
「もう少し詰めて!」
誰かの声。
笑い声。
自然とみんなが笑顔になる。
湊はシャッターを押した。
——カシャッ。
その瞬間。
ファインダーの中に、
いろんな国の人たちが写った。
違う言葉。
違う文化。
違う場所から来た人たち。
それでも、同じ一枚の中にいる。
イベント終了後。
夕方の空が少しずつ赤くなっていた。
「終わったね。」
紬が言う。
「うん。」
「なんか、あっという間だった。」
「俺も。」
駅へ向かう道を二人で歩く。
「今日、楽しかった?」
「うん。」
「私も。」
しばらく無言で歩く。
でも、気まずくはなかった。
高校生だった頃から、何度も一緒に歩いた道。
今は制服を着ていない。
でも、隣にいることは変わらない。
「ねえ、湊。」
「ん?」
「またこういうイベントあったら、一緒に参加しようよ。」
「もちろん。」
「今度はもっといい写真撮ってね。」
「期待してて。」
二人で笑う。
駅で別れる前。
湊は今日撮った写真を確認した。
その中に、紬が写っている一枚があった。
スタッフとして参加者と話している姿。
楽しそうに笑っている。
湊はその写真を見て、
シャッターを押した瞬間を思い出した。
以前なら、ただ「紬を撮った写真」だった。
今は違う。
そこには、紬が歩き始めた未来が写っている。
自分も同じように、自分の道を歩いている。
だからこそ。
今日の再会は、少し特別だった。
「じゃあ、またね。」
「うん。また。」
それぞれ反対方向の電車に乗る。
離れていく二人。
でも、二人の道はもう一度、同じ場所で交わった。
湊は電車の窓から外を眺める。
夏の夕焼け。
カメラを取り出す。
——カシャッ。
今日という日の最後の一枚を残した。
📷 Photo.070「夏の再会」
撮影日:7月18日
久しぶりに会った二人は、
少しだけ変わっていた。
でも、
お互いの夢を話せることは変わらない。
別々の道を歩きながら、
また同じ場所で出会う。
そんな関係が、
これからも続いていく。
コメント
1件
「夏の再会」、いい話でした。湊と紬がそれぞれ新しい道を歩みながら、「写真で人と人をつなぐ」という同じ方向に気づいていく流れが印象的です。「普通の生活」を撮る感覚や、最後の一枚に写った紬の笑顔——高校時代とは違う眼差しで見えているのが伝わってきました。別々の道でも、また交われる二人の距離感が心地よかったです。